大手総合商社の丸紅が、生理痛やPMSに悩む社員を対象に、産婦人科向けオンライン診療システム「ルナルナ オンライン診療」を活用した福利厚生制度を4月から試験導入した。
同システムは、生理日管理アプリ「ルナルナ」を展開するエムティーアイと同社のグループ会社であるカラダメディカが提供している。
丸紅が導入した福利厚生制度とは?
婦人科受診と低用量ピル服薬の支援プログラム
丸紅が導入した制度は、「ルナルナ オンライン診療」を活用したプログラム。社員の婦人科受診と低用量ピルの服薬を支援するほか、診療にかかる費用および低用量ピルが必要になった場合の費用も会社が負担する。
なお、エムティーアイでは、丸紅に先駆けて同制度を2020年10月から実施。
同年2月の実証の際には、参加した社員から、生理によって日常生活へ影響が出ていた日数が減少したことや、生理中の業務パフォーマンスが向上したといった、ポジティブな変化を確認できたという。
エムティーアイとカラダメディカは、丸紅で「ルナルナ オンライン診療」を活用したプログラムを実施することによって、女性の健康をサポートし、社員が生き生きと働くことができる環境づくりを支援していくとしている。
丸紅におけるこれまでの女性への支援制度
丸紅ではこれまで、従業員向けに女性特有のがんに特化した制度を整えてきた。
例えば、「乳がん・子宮頸がん検診の費用補助」や「定期健康診断における腫瘍マーカー(対卵巣がん)の実施」といった取り組みを行ってきたという。
丸紅の課題意識と新たな福利厚生制度の導入理由
丸紅は、フェムテック領域でのビジネスの創出を目指し、フェムテックの理解促進のためのセミナーを社内で開催してきた。
しかし、未だ総合職の男女比率は男性社員が高いことや、女性特有の健康課題に対する理解の促進と女性が悩みを気軽に相談できる環境には課題があるという。
丸紅の社内で実施したアンケートでは、「生理痛やPMSなどの症状が、仕事に影響があると感じるか」という質問をした際、約9割以上の女性が「影響がある」と感じながらも、「職場で相談できる」と回答したのは約半数という結果に。
また、産婦人科の予約が取りにくく、平日に半休を取得し病院に行くという社員も多いという。
丸紅はこうした社員が置かれている状況を受けて、少しでも社員が快適に働き、パフォーマンスを発揮できる環境を作ることを目的に、オンライン診療でピルの処方が受けられる制度の導入を決定した。
女性の身体と健康を理解するためのセミナーも実施
丸紅では、今回の福利厚生制度の導入に合わせ、エムティーアイとカラダメディカ主催の産婦人科医による「女性のカラダの知識講座」を3月10日(水)に実施した。
オンラインで開催された講座には、丸紅の社員の男女約120人が参加。
東京大学医学部附属病院・産婦人科の甲賀かをり准教授を講師に招き、生理のしくみやPMS、婦人科系疾患、更年期障害などが説明された。
甲賀かをり准教授は、丸紅の福利厚生制度の導入に対し「今回の取り組みによって、社員の人が正しい情報に簡単にアクセスでき、自分の生理周期や症状を少しでも管理・コントロールできるようになることを期待している」と述べ、セミナーは締めくくられた。
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他社の調査では、働く女性の約8割近くが「職場での『からだ・健康の悩み』に対するサポートが足りていないと感じる」という結果も報告されている。
丸紅のような社員の健康に特化した制度を取り入れる企業が今後増えるのか、注目したい。