日常の予定を立てようとするたびに、スケジュール帳を開いてにらめっこ。
「先月は15日だったから…でもテスト期間で寝不足だったから今月は少し遅れるかも…」
女子校に通い、比較的あけすけに生理事情を話せた中高時代。生理とカラダについて詳しく知らなくても、困ることといえばプールに行くときや温泉へ行くときに被ってしまうことくらいだった。
男子が圧倒的多数の大学に進み、生理トークがタブーの社会に出て初めて、生理による体調の悪さや安定しない情緒などが「甘え」カテゴリーに分別されることを知る。大学生男子のホモソーシャルな世界では、「生理中=妊娠しないラッキー期」という認識が少なからずあることも。
だから「甘え」を極力減らすために自分の周期を把握してカラダに負担をかけないように細心の注意を払い、できるだけPMS期を避けて大事な予定を組む必要が出てくる。
生理現象に、なぜお金を払わなければいけないのか
日本で人気の高い無料版の生理管理アプリをダウンロードした。コテコテのピンクの仕様に違和感を覚えつつも、生理サイクルを入れれば周期を分析して各ステージの日程を教えてくれたため、こと足りた。でも次第に、アプリ内で常時表示される美容や脱毛、豊胸や男性の喜ばせ方などといった広告記事の内容に辟易していった。
私が私のカラダを知ることは、一体誰のためなのか。社会に迷惑をかけないためでもないし、彼氏を喜ばせるためでもないし、避妊のサポートが欲しいからでもない。生きやすくなるための情報を得ることは、美容と同じ類の「贅沢品」ではないはずだ。
もしかすると、課金して有料版にアップグレードすれば広告にイラつくこともないかも知れないし、デザインだって自分好みにカスタムできるのかも知れない。
でも、選んで生まれたわけではない性別に付属してくる生理現象に、なぜお金を払わなければいけないのか。世界では生理用品に対する「ピンク税導入」が議論になっているけれど、全ての女性が生きる中で、動物の本能だけでは把握不能な自分の身体に関する情報を得るプロセスと社会的なサポートは見過ごされていると感じた。ぶつける先のないモヤモヤ。
口に出せば「甘え」になると思っていた生理のモヤモヤが解消
そんな中、ドイツ生まれの生理アプリ「Clue」との出会いは衝撃的だった。
白と赤のスタイリッシュなデザインに惹かれてダウンロードした。また、世界中の言語に対応していてダウンロード数も一際多く、データの蓄積量がしっかりしているのではと思ったのだ。
無料版アプリでは、生理サイクルだけでなく、その日の気分や睡眠時間、身体の元気さ、肌の調子から欲している食べ物などの情報までを入力することができる。可愛いアイコンを毎日ぽちぽち選ぶことで自分の長期的な体調の波が可視化されていくと、なんだか楽しい。
また、このアプリは自分の情報をパートナーと共有できる点が嬉しい。自分の生理サイクルを共有している相手の元には、各ステージごとに身体の情報や起こりうる体調の変化などが知らされる。例えば卵胞期には「子宮頸部の粘液がどう変化するか」、などあくまで生物学的観点からカラダに起こっている現象を説明したメッセージ。
「今まで”生理中/生理中以外”でしか考えてなかった自分がいかに無知だったか、どれだけ毎月体調や感情に変化があるのか知られて嬉しい。シェアしてくれて本当にありがとう」と彼氏に言われた時は、これまで自分一人で抱えるべき問題で、口に出せば「甘え」になると思っていた生理のモヤモヤが解消した気がした。
有料版へのアップグレードも視野に
このアプリも、より多くの機能やサポートが受けられる有料版へのアップグレードが存在する。アプリ内では有料版を使用することによって得たお金がどのように使われるのか、また女性チームの開発サポートや、ユーザーデータ保護に使われること、広告収入削減、など目的を明記してある。今はまだ無料版ユーザーだが、近い将来アップグレードも考えている。
日常生活を支障なく送ることへのサポートを無料で惜しみなく提供してくれているアプリだからこそ、より詳細な生物学的分析、女性と社会の豆知識や人工知能による予測なども提供されているという有料版の内容が気になってくる。生理現象と戦うためではなく、私が自分自身をもっとよく知り楽しく生きるために払うお金だ。
今では、生理中に予定を詰めすぎたり無理をして活動しようとすると心配し、また生理中で身体がつらいときは「ダークチョコを食べるといいって書いてあったけど試してみる?」「今日はお風呂で良くあったまった方がいいかも」と控えめにアドバイスをくれるようになった彼と、このアプリの寛容なサービスには感謝しかない。
大切なパートナーを思いやる「きっかけ」に出会ってほしい
身体を想いやることがタブー視される風潮は、文化的な暴力だと思う。
生理を経験しない男性でも、パートナーや家族を思い浮かべたとき、大切な人の健康と幸福を願うのは当たり前だ。でもその中で、その過程には生理現象への理解が必要だと気づいている人はどのくらいいるのだろう。
きっと、このアプリ以外にも少しのきっかけをくれる素晴らしいテクノロジーは存在するし、大切な人を支えたいと心から想う人もたくさんいるはずだ。よりたくさんの人がそのきっかけと出会って、個人間レベルからその優しさを広げていき、誰に対しても寛容で優しい世の中の実現が私は待ち遠しい。
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ランドリーボックスでは、特集「これからのパートナーシップ〜どう伝える?どう寄り添う?〜」をはじめました。
生理、PMS、不妊治療…。
女性のからだや心にまとわりついてくる体調不良の数々。
パートナーが理解して寄り添ってくれれば…と、ついつい思ってしまいます。
こんなとき、みなさんはどうパートナーに伝えているのでしょうか。
また、パートナーはどんな気持ちで寄り添っているのでしょうか。
ランドリーボックスは、様々な人たちの声を聞きました。
お互いに理解し、寄り添う二人の選択肢のひとつになれば幸いです。
「clue」アプリダウンロード
App Store: https://apps.apple.com/jp/app/clue-生理管理アプリ-排卵日予測-妊娠カレンダー/id657189652
Google Play: https://play.google.com/store/apps/details?id=com.clue.android&hl=ja&gl=US