ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との協働で、ロヒンギャ難民の女性を対象に、自立支援プロジェクトを開始することを発表した。

UNHCRによると、現在94万人以上のロヒンギャ難民が、バングラデシュの難民キャンプで避難生活を送っている。そのうちの75%が女性と子どもであることから、ファーストリテイリングは生理用品に着目した。

生理用品を充足させるだけでなく、報酬を得られる

日常的に必要とされ、持続的な供給が必要であるにも関わらず不足しているという生理用品。これを充足させるため、繰り返し使用できる「布ナプキン」の縫製技術を難民キャンプで暮らす女性に伝え、トレーニングする。

パイロット版として制作している布ナプキン。これから改良を重ねていくという。

女性たちは有償ボランティアとしてトレーニングを受け、継続して布ナプキンの製作に関わることで、不足している生理用品を充足させるほか、難民キャンプ内で報酬を得ることができる。

11月9日に都内で行われた発表会で、ファーストリテイリング サステナビリティ部の伊藤貴子さんは「難民キャンプでは生理用品が足りないというだけではなく、制限のある生活を余儀なくされています。キャンプの外に出る移動の自由も就労の自由もない。人道支援機関に頼り、配給に頼って生きている」と現状を説明。

ファーストリテイリング サステナビリティ部の伊藤貴子さん

本プロジェクトにおいては「参加する女性たちを中心に生理用品を制作するコミュニティが整備されることで、女性特有の悩みを互いに共有する場をつくることもできるのではないか。難民キャンプには、ジェンダー格差のある中、心のトラウマを抱えた女性たちが多くいて、彼女たちが安全に語り合える場、シスターフッドを感じられる場になれば」と副次的な期待についても語った。

UNHCRのバングラデシュダッカ事務所 開発担当官の長谷川のどかさんは現状を次のように話す。

「イスラム教の保守的な社会において、男性が女性より優位で、女性に教育は必要ないという考え方もある。難民キャンプでは、紛争などで夫を失った人が多くいて3割がひとり親世帯です。いざ女性が一人で子どもを養っていくことになれば、社会の常識を覆してでも、就労する必要があると考えています

UNHCRバングラデシュダッカ事務所 開発担当官の長谷川のどかさん

長谷川さんによれば、現在はパイロット版として、現地でナプキンを製作しているが、生理用品は不足しており布切れなどで代用するなど、不衛生な状況が続いているとのこと。

同プロジェクトでは、2025年までに1000人の女性たちが有償ボランティアとして参加し、バングラデシュ・コックスバザールでの難民キャンプで“ナプキン充足率100%”を目指すとしている。

「これは我々の問題である」柳井社長

ファーストリテイリングは、サステナビリティ活動の一環として2006年から世界の難民・国内難民への衣料支援をおこなってきた。店舗で回収した衣料の寄贈をはじめ、難民の自立支援プログラム、ユニクロ店舗での難民雇用、啓発活動などだ。

株式会社ファーストリテイリング柳井正社長(左)と、UNHCR国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディさん

発表会に登壇した柳井正社長は、「一般的な日本人にとって難民問題は遠い存在ではないでしょうか。この度のロシアによるウクライナ侵攻で、初めて知ったという人もいるかもしれない。日本の人口と同じくらいの難民が世界中にいる。これは我々の問題である。世界中の人々が難民を助けようとしています。日本が難民にとっていい国であることを目指し、異なる文化を受け入れて日本人が国際化することが大事」と、難民受け入れについても前向きな考えを語った。

今回のプロジェクトで同社は、UNHCRとのパートナーシップ合意に基づき約1億1500万円を拠出するとしている。

UNHCRのフィリッポ・グランディさんは「難民の数は年々拡大し、難民は確実に助けを必要としている」とし、ファーストリテイリングとのパートナーシップについて「ファーストリテイリングは民間企業として支援活動に取り組む先駆者であり、世界各地で柳井社長のリーダーシップのもと10年以上取り組みをおこなってきました。UNHCRでは新たなパートナーを必要としています。政府のみならず民間企業からの支援も必要としている。日本企業の皆様にもぜひ参加いただきたい」と述べた。

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