自分の膣の位置って把握していますか?
実は、膣の位置には個人差があり、膣がついている位置によって「上付き」「下付き」という言葉があるそうです。
膣の位置なんて知る必要があるんだろうか…そう思う人も少なくないはず。
しかし、1924年には、精神分析学者のマリー・ボナパルトがパリとウイーンに住む200人の女性のクリトリスの先端から尿動口までの距離を調査し、医学雑誌「ブリュッセル・メディカル」で発表しました。
その調査結果では、クリトリスの先端から尿動口までの距離をカテゴライズし、距離が2.5cm未満であれば傍陰核(ぼういんかく)、ちょうど2.5cmであれば中陰核(ちゅういんかく)、2.5cmより長ければ遠陰核(えんいんかく)だとした上で、マスターベーションではオーガズムを感じても性交でオーガズムを感じない女性は全て遠陰核の人たちであったと発表しました。
膣の位置によって、セックスの感度も変わるのだろうか?
今回は、咲江レディスクリニックの丹羽咲江先生に、年齢によって変わる膣の位置、そして膣の位置別のおすすめ体位について聞きました。
ーー 膣の位置に違いがあることを初めて知りました。
あまり知らない人が多いですよね。女性器は膣口の位置によって、大きく「上付き」「下付き」に二分されます。
上付きか下付きかは、クリトリスと尿道口の距離で計ります。
膣口が尿道口、つまりお腹側に近ければ「上付き」、膣口が尿道口から遠く、肛門に近ければ「下付き」です。
ーー 膣の位置は生まれつき決まっているのでしょうか?それとも、年齢も影響するのでしょうか?
一般的には30代までの女性の75%が上付きで、40代以降では下付きに変化します。そして、閉経後は、女性ホルモンの低下で膣が狭くなり、加齢とともにお尻の筋肉が衰えると、膣壁が押し上げられ、上付きに戻ります。
ーー そんなに変化するんですね。膣の位置によって、セックスにも影響はあるのでしょうか?
膣入口の位置によって挿入しやすい体位や感じやすい体位が異なります。
たとえば、上付きの女性は、正常位で挿入するとペニスの位置がちょうどよく膣にフィットするため、スムーズにペニスを出し入れすることができます。
逆に、下付きの女性は、膣が後ろ側にあるので、対面よりも背面がフィットします。ペニスを挿入するときは後ろから挿入した方がスムーズです。
ーー 上付き、下付きそれぞれのおすすめの体位を教えてください。
上付きの女性には、対面座位や騎乗位がおすすめです。
下付きの女性にはバックや背面座位などがおすすめです。
ーー 膣の位置(上付き、下付き)は、性交痛にも影響するのでしょうか?
セックスの痛みに関しては、上付き、下付きは、あまり関係ないかもしれません。
ただ、上付きの場合は、筋肉がすごく発達していて、どちらかというと膣が狭い人が多いので、自ずと挿入時に擦れてしまい、痛みが出やすくなる可能性はあります。
下付きの場合は、どちらかというと、膣口が開いてしまっている状態なので、膣口が下に移動しているというよりは、開いて下のほうに存在しているように見える状態です。
なので、どちらかというと、下付きの方が、締まりが緩い状態になるので、痛みは出にくいかもしれません。
ただし、下付きの場合だと、開いてしまっている分、筋肉も弱くなっているため、感度が足りないと感じる人もいます。
ーー 膣口の上下によって、膣道も上下しているということでしょうか?
そうです。入口が上がるか下がるかで、膣の角度は変わります。
ペニスの挿入時の刺激にも影響してきます。例えば、女性の場合、どちらかというと、膣の前側、クリトリス側をペニスでこすられたほうが、感度が上がる傾向があります。
その場合、上付きの場合は正常位のほうがペニスが前側に当たりやすく、下付きの場合は後ろ側からの挿入の方が、前側の膣に当たりやすくなります。
ーーー 自分で上付きか下付きかを判断することはできるのでしょうか?
正直、難しいと思います。なぜなら、他人の性器と自分の性器を比べることがないので、自分の性器だけを見て、上付き、下付きをすぐには区別できないですよね。
ただ、あえて言うのであれば、正常位と後背位で挿入したときに、どちらが気持ちいいのかで判断するのがいいかなと思います。
年齢によっても膣口の位置は変わっていきますが、このような身体の変化は女性だけではありません。男性も年齢によって勃起の角度は変わってきます。
お互いの身体の変化を理解した上で、心地いい体位を試していくことが大切かと思います。
ーーー 丹羽先生ありがとうございました!
自分の膣の位置を細かく理解する必要はないけれど、自分の体の構造や傾向を知るだけでも手助けになることもあるはず。
今まで気持ちよく感じていたセックスが少し気持ちよくないと感じたら、膣の位置が変わっている可能性もあるため、体位を変えてみるのもいいかもしれません。
お互いが心地いいセックスができるように、参考にしてみてくださいね。
お話を聞いた方
産婦人科医
丹羽咲江
1991年、国立名古屋病院(現国立病院機構名古屋医療センター)勤務。主に婦人科悪性腫瘍に携わる。1996年、名古屋市立城北病院(現名古屋市立大学医学部附属西部医療センター)勤務。名古屋市内から搬送されるハイリスク妊娠、分娩などに携わる。2002年、患者さんの話をじっくり聞きながら悩みを解消したいと考え、丹羽咲江レディスクリニックを開院。性交痛の治療にも力を入れている。2010年より、クリニックに思春期外来も開設。その他、中学校・高校・大学や少年院で性教育、一般女性を対象にした「女性の健康」の講演活動に取り組んでいる。