画像=Laundry Box

こんにちは。uni’que若宮です。

『「ちがい」を活かすチームマネジメント術』連載も、はや第3回目。

今回のテーマは「聴く」。家族でもチームでも、「聴く」ってとっても大事ですよね。

「ちがい」を遮断せず、最後まで「聴く」

コミュニケーションでは「聴く」ことが大事とか、「聴く」と「聞く」はちがう、とよく耳にします。しかし、相手の意見や気持ちにちゃんと心を傾けて「聴く」というのは簡単ではありません。

コミュニケーションのスタイルがちがう場合「聴く」はとくに難しいものです。

「男女のコミュニケーションはちがう」とよく言われます。

その理由として、狩猟採集時代において必要最低限の会話で獲物を追っていた男性は「目的脳」がよく発達をしていたからとか、一方の女性はいつ獲物に襲われるか分からないので、会話をすることで互いの存在を確認し合う「共感脳」が発達した…なんて説明を耳にすることも。

しかし僕自身は、実はこうした傾向のちがいは環境要因による部分が多いのではないかと思っています。

「男性」の方が(あくまで現状では)理系に近い場所にいたり、職場においては「目的」や「ゴール」を課せられる事が多い。逆に子育ての現場では線形に物事が進むことはほとんどなく、赤ちゃんという圧倒的に理屈の通じない、しかしとてもか弱い人と過ごしているので「共感」が必要とされたりします。そういう環境下に日常的におかれると、思考に「癖」がついてしまうのではないでしょうか(もちろん、これは一般論で、目標達成に取り組む女性や、子育てに積極的な男性もいます)。

いずれにしても、コミュニケーションのスタイルやお互いにとって大事な価値がちがう、ということは意識しておいた方がよいでしょう。

僕の場合、コミュニケーションがつい「目的」や「効率」志向になりがちです。雑談が苦手なこともあり、「つまりこういうこと?」とか「それって2択だと思うけど、どっち?」とすぐ結論を求めがちになります。

その結果、ちゃんと「聴く」ことができなくなります

相手が感情も含めてゆっくり伝えようとしているのが「脱線」や「蛇足」に思えてしまい、待ちきれずに途中で遮り、「で、結局どうしたいの?」みたいなことを言ってしまって失敗します。

相手と自分がコミュニケーションにどういう価値を求め、重きを置いているかで「いいコミュニケーション」は一意ではないのですが、それを忘れるとつい自分のコミュニケーションスタイルを押し付けてしまうのですね。

無意識の癖になったスタイルを変えるのはとても難しいですが、少なくともそれを抑えて相手のことばを「遮断」せず、「最後まで聴く」ことはできます。

キャッチボール理論

もう一つ、さらに「聴く」を難しくするものに距離の問題があります。

前回の記事では「距離」が近いと相手のことが見えなくなる、という話をしましたが、

これは「聴く」ということにおいても起こります。

これを僕は「キャッチボール理論」と勝手に名付けました。

会話は「ことばのキャッチボール」ですが、キャッチボールはあまりに遠いとボールが届きません。会話とのアナロジーでいうと、まったく関係がない人になにか言われても心に届きづらいですが、友人や上司など信頼できる人に言われると心に届く、ということがあります。

しかしそれだけでなく、反対に近すぎるとまた届きづらくなるからムズい

さきほど遠いと届かず近いと届く、と言ったのと矛盾するように思えますが、キャッチボールだって近すぎるところから投げられるとかえってキャッチできません。あまり近いところからボールを投げられると、キャッチせずに反射的に避けてしまったり、叩き落としてしまったり、打ち返してしまったりします。

画像=本人提供

しかも、そうすると相手はボールが届かなかったと思い、焦って次の球をどんどん投げてきて、余計に受け止めづらくなります。もはやキャッチボールというよりぶつける感じになってしまう。

つまり、キャッチボールには「適切な距離」と「投げる間隔」が重要なのですね。

いずれにしても「すごく近い」場合には、会話のボールをキャッチする=「聴く」ことがより難しくなるので、そのことを理解し、意識して適切な距離を取る必要があります。

[今月のやってみよう]

では、ちゃんと「聴く」ためにどうしたらよいでしょうか?

みなさん、ついパートナーの話や同僚や後輩の意見を途中で遮ったりしていませんか?僕自身も心がけている(心がけたい)今月のTipsは以下の3つです。

[STEP1] とにかく黙って最後まで聴く

今回述べたように、コミュニケーションのスタイルや重視する価値観にはちがいがあります。こうしたちがいを遮断し、相手に自分の意見を押し付けないよう、異論があってもまずとにかく最後まで聴くことを心がけてみましょう。

[STEP2] わからないならインタビュー

会話のスタイルがちがうと、相手がなぜそんな話をしてるかよくわからないこともありますし、こちらからは「脱線」に見えてしまうこともあります。しかし、相手がちゃんと伝えていても自分にはモスキート音のように「聞こえていない」こともあるのです。

その可能性を考慮して、わからなくても否定したり遮ったりせず、インタビュアーのように「ほうほう、それはどうしてですか?」と聴いてみると相手の声がもっと聴こえるようになるかもしれません。

[STEP3] キャッチしてから、投げ返す

キャッチボールは至近距離から投げられるほどキャッチするためのスキルが要ります。つい反射的に避けてしまったり、打ち返してしまったり、さらには相手のボールを受け止めてないのにこちらから投げ返したりしてしまいます。

でも、それではキャッチボールではなく、雪合戦です。こちらから投げたくなっても、まずキャッチして、相手の体勢が整ったことを確認してから、ボールを投げるようにしましょう。

ミヒャエル・エンデの『モモ』という名作があります。

みんなはなにかことがあると、「モモのところへ行ってごらん!」と言うのです。

でも、どうしてでしょう?モモがものすごく頭がよくて、なにを相談されても、いい考えをおしえてあげられたからでしょうか?・・・小さなモモにできたこと、それはほかでもありません、あいての話を聞くことでした。・・・モモに話を聞いてもらっていると、ばかな人にもきゅうにまともな考えがうかんできます。モモがそういう考えを引き出すようなことを言ったり質問したりした、というわけではないのです。彼女はただじっとすわって、注意ぶかく聞いているだけです。その大きな黒い目は、あいてをじっと見つめています。するとあいてには、じぶんのどこにそんなものがひそんでいたかとおどろくような考えが、すうっとうかびあがってくるのです。

モモはただじっと、しかしちゃんと相手のことばを受け止めます。その方がアドバイスをするよりも答えが見つかるのです。

パートナーとの関係でも、ほんとうによいコミュニケーションはそういうものかもしれませんね。難しいですが、モモのような「聴く」を目指していきたいものです。

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