里村さんは15歳に女子プロレスの世界に入り、デビューして26年。40代を過ぎても現役プロレスラーであり、センダイガールズプロレスリングの代表取締役を務めています。

迫力とスピードのある技をかけたり、受けたり、男性顔負けの激しい試合をしながらも、女性の宿命である生理が毎月やってくるのです。

一体どのように生理と向き合っているのでしょうか。アスリートの生理について、オープンにつづっていただきます。

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身体のことよりも、強くなることばかり考えていた

女子プロレスラーはキラキラのコスチュームを着て、肌を露出し筋肉美を魅せながらリングの上で戦います。

女子プロレスラーが闘っているのを見て、「生理のときってどうしてるんだろう?」と疑問に思う人は多いのではないでしょうか。

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まずは、私の生理の話をさせてください。13歳から生理がはじまり、生理痛がひどく、毎月悶え苦しんでいました。

その一方、プロレスラーを志し、中学卒業と同時に長与千種さんが率いるガイアジャパンに入団しました。入門前は「女子プロレスラーは激しい練習と試合をし過ぎて生理が止まる」と噂で聞いたことがあったので、ちょっと怖かったことを覚えています。

とはいえ、入門してしまうと生理が止まろうが、生理痛がひどかろうが、病院に行かず、ただただ痛みに耐えるのが当たり前になっていました。

25年前の私は「1日の遅れは3日の遅れ!」と言い聞かせながら、強くなることばかりを考えて練習をしていたのです。

左から里村さん、山田敏代さん、加藤園子さん、1997年(当時18歳) 写真=本人提供

1試合50回、腰を強打するのは当たり前

若い頃は、生理の日の過ごし方もめちゃくちゃでした。

まず、朝起きて通常の2倍の容量の鎮痛剤を飲んで、「これで痛みが和らぎますように」と気持ちを紛らわします。(薬は用法・用量を守って正しく服用しましょう)

10分間のスパーリングの練習中は「あと3分我慢すれば終わる、あと2分、あと1分」と数え、終わったあとは痛みのあまりリング上でしばらく固まっていました。

練習が終わるとお腹にカイロをあてて、ひたすら痛みが落ち着くのを待つ。翌朝、また鎮痛剤を飲んで練習を始めるというルーティンです。

とくにつらいのがボディスラムされるとき。ボディスラムは、リングに投げつけられる技なのですが、腰を強打するのでお腹に響くんです。

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だいたい1試合の中で50発くらい腰から投げつけられます。それがまた生理痛をひどくさせているように感じます。子宮にも相当なダメージがかかっているでしょう。

それでも「休んでしまうと同期に越されてしまう」、「日々、身体を鍛えて自身をいじめ抜かないと強くならない」——本気でそう信じ込んでいました。

左から加藤園子さん、里村さん 写真=本人提供

私の身体が変なんだと思っていた思春期

先に述べたように、とにかく私は生理痛が重いタイプ。今でも、2日目までは鎮痛剤がないと過ごせません。そして、生理前は必ず頭痛、腰痛、イライラがともないます。

しかし、同期の中でも生理痛がまったくない人もいました。だから「私の身体が変なんだ」と思って更に我慢して隠していたのです。

女子プロレスは女だらけの世界なので、「今月いつ生理?」とか「次の試合で生理バッティングするわー」などの話は飛び交っています。しかし、「お腹が痛いから練習を休みたい」などの弱音はなかなか吐くことができませんでした。

今考えると、なんて自身を粗雑に扱っていたのか……。幸い、今はなんの疾患もなく健康体でいられていますが、もう少し自分を労ってあげてもよかったのかなと思います。

昔ほどではありませんが、生理不順で半年間生理が来ないという選手は今も少なくありません。

生理が来ないって、それだけで不安になるし、子どもが欲しい女性にとっては大きな悩みです。

若きアスリートに伝えたいこと

そして、これからの若いアスリートに伝えたいことがあります。

引退してからの女性としての人生の方が長いということ。結婚、出産など、将来の自分の身体のことを考えて、今を生きてほしい。

今は生理日をずらせるピルが、アスリートにも普及していますが、それもほんとにごく最近です。実際には、ピルを服用しているアスリートは、半分にも満たないと思います。

人それぞれ生理の症状には差がありますが、私のように生理痛がひどく悩んでいる人がいたら、我慢せず婦人科を受診して、医師に相談のうえピルを活用する選択肢もあると思っています。

そして私自身の生理事情がひどかったので、若い選手たちには同じようなマインドにさせてはいけないと強く思っています。そう思えたのも団体の代表になり、選手の体調面を管理する立場になってからでしょうか。

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リングドクターは産婦人科医

私が代表を務めているセンダイガールズプロレスリングでは、所属しているレスラーが自分のカラダと向き合えるように、産婦人科医の米田麻美先生にリングドクターをお願いしています。米田先生は、とても感じの良い(目が私似の)女性の医師です。

左から米田麻美さん、里村さん 写真=本人提供

生理のことや、婦人科系疾患、日々のメンタル的なことも選手たちから相談させていただいています。

女性として、他人に言いにくい身体のこと。1人で抱え込まず、気軽に相談できる環境が大切です。それだけ、多くのアスリートにとって生理事情は悩みのつきない課題なんです。

そして、いくら最強と言われている私でも生理には勝てません!

生理で大事なメインイベントやタイトルマッチの調子さえ簡単に崩されます。次回はこのエピソードをお話しようと思います。

そして、ほかの競技のアスリートのみなさんは生理とどう向き合っているのでしょうか。マラソンやフィギュアスケート、女子格闘家の生理事情も、すごく気になりますね。

Photo by SHIDA

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