「ねえ、今、生理前でしょ? だからイライラしてるんだよ」

「は??? 私の生理周期なんて把握してないでしょ」

「わかるよ、俺ずっとルナルナに登録してるから。明日かあさってには絶対に生理が来る」

ケンカの最中に飛び出した夫の一言にギョッとした。

なぜ男のあなたがルナルナを? 

私たち、妊活中でもないのに?

とにかく生理を何とかしたかった

生理が重い自覚はあった。

出血量は多く、脂汗が出るほど痛み、期間も長く、周期は不規則。10代のときからもうずっとだ。チョコレート嚢胞、過多月経、多嚢胞性卵巣症候群、黄体機能不全…。婦人科で診断される病名は数年おきに変わり、漢方薬、ピル、ミレーナと生理が楽になるものは手当り次第に試してきた。

生理にばかり気を取られていたせいか、PMS(月経前症候群)にはまったく意識を向けていなかった。

強いて言うなら「生理前になると、ガツンと甘いものか酸っぱいものが食べたくなる。あとやたら眠い」くらいか。三食のうち一食をジャンクフードに置き換えることくらい、一人暮らしにはたやすい。眠気もカフェイン投入で乗り切れる。PMSはどこか他人事だった。

ケンカが多いのは誰のせい?

Photo by Hanae Abe / Laundry Box

PMSについて考えるようになったのは、20代後半、二人暮らしが始まってからだ。

夫と一緒に暮らし始めて数年が過ぎた頃、

「生理が始まる前のあなたは、いつもイライラしている」

と何度か言われるようになった。そんな自覚がまったくない私は「別にそんなこと関係ない」と一蹴し続けた。

冒頭のケンカは、そんな言い争いが幾度となく繰り返された後のこと。

そしてルナルナ発言の翌日、夫の予言通りまんまと生理がきた。

初日の重苦しい痛みにトイレでぐったりしながらも、じわじわとおかしさがこみ上げてきた。

なんであの人、ルナルナやってるの。

ルナルナでわかったPMSとケンカの因果

Photo by Emi Kawasaki / Laundry Box

なぜルナルナを使っていたのか。夫に理由を聞いた。

「あなたは生理前になると、別人みたいにイライラするし、些細なことでめちゃくちゃ怒ってくる。マジで意味がわからなかったし、原因を知りたくて検索したらPMSの症状とぴったり当てはまったから、『これか!』と思って。

ただ、そのまま伝えても否定され続けたから、本当にそうかを確かめたくてアプリでここ数カ月の生理周期を観察することにした。そしたら生理前とケンカ勃発の時期がほぼ重なっていることがわかった。あと排卵日のあたりもイライラしやすくなってる。俺たちのあいだでシリアスなケンカが起きるのは、ほとんどがその時期だよ」

もともと、生理の話はオープンにしていた。

というか生理がくるたびに私は「生理きた。痛い痛い」と毎回愚痴っているので、一緒に暮らしていれば自然と伝わってしまう。夫はそんな私の様子を見ながら、コツコツとルナルナに登録して周期を確認していたという。

自分の生理周期が、自分以外の誰かに観察されていた。

そう知ったときの心境は複雑だった。虚をつかれた動揺、テリトリーに踏み込まれたような抵抗感、防衛本能…そんな気持ちがないまぜになってちょっと呆然としていたが、夫が付け加えた言葉でふっと肩の力が抜けた。

「女の人ってほんとに大変だな、って思ったよ」

ああ、彼は「わかりたい」と思ってくれたんだ。

もしも夫が「PMSの証拠を揃えてイライラしていることを納得させたい」と、ねじ伏せる気持ちでルナルナをせっせと登録していたのなら、私はきっと猛烈に反発していただろう(最初の動機はそうだったかもしれないけど)。

動機はどうあれ、男性の体を持つ彼が、女性のPMSや生理を理解しようと自分なりに行動してくれていたのだ。そう思えたとき、最初に抱いた抵抗感はいつのまにか消えていた。むしろパステルピンクのアプリ画面でコツコツ登録していた姿を想像すると結構笑える。

PMSは続行中だけれども

その後。

PMSとケンカの因果関係がわかって以来、夫婦間のケンカはゼロになった…とはもちろんいかない。ひとつ屋根の下で一緒に子育てをしていれば、ケンカの種はそこかしこにある。

Photo by Hanae Abe / Laundry Box

それでも、ケンカの作法は少しだけいい方向に変化した。私はPMSの症状でイライラしていることを自覚をするようになり、夫はカッとなったときの怒りをいったん持ち越す術を身につけつつある。イライラや怒りを抑えることは難しくて、お互いまだまだ失敗するほうが多いけれども。

最近は「月経前症候群治療薬」として市販されている「プレフェミン」を服用している。私には、効いているのかいないのかよくわからないが、夫は「いや、効いている。シリアスなケンカが格段に減った」と主張しているので様子見中だ。

ちなみに、ミレーナはPMS改善の効果はない。私の場合、ミレーナのおかげで出血量は激減したが、痛みは健在だ。

毎月の生理痛は相変わらず重い。でも生理やPMSのしんどさを理解して、寄り添ってくれる味方が、今はすぐそばにいてくれる。そのことが心強くて、素直に嬉しい。

ランドリーボックスでは、特集「これからのパートナーシップ〜どう伝える?どう寄り添う?〜」をはじめました。
生理、PMS、不妊治療…。
女性のからだや心にまとわりついてくる体調不良の数々。
パートナーが理解して寄り添ってくれれば…と、ついつい思ってしまいます。
こんなとき、みなさんはどうパートナーに伝えているのでしょうか。
また、パートナーはどんな気持ちで寄り添っているのでしょうか。
ランドリーボックスは、様々な人たちの声を聞きました。
お互いに理解し、寄り添う二人の選択肢のひとつになれば幸いです。

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