「生理中、意識の何割かを尻に持っていかれるのは勘弁」。

そうツイートをした、イラストエッセイストの犬山紙子さん。

生理のつらさを軽減するために、今ではミレーナ*を装着しています。

(*ミレーナは膣内に直接挿入するに避妊具。黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システムで、子宮内膜の増殖を抑え、月経量を減少させるとともに月経痛を軽くする効果もあります)

生理痛やPMSなどを含め、元々体調不良になりやすいタイプという犬山さんは、夫・劔樹人さんに具合が悪いことをすぐに伝えるそうです。

そんなご夫婦である二人は、どのような意識をしてコミュニケーションをとっているのでしょうか。

今回は犬山さん・劔さんのお二人に、体調不良時、パートナーにどう伝えるか、どう寄り添っているのかについて聞きました。

ミレーナを装着した今では、お尻に気をとられることがなくなって超快適

——ミレーナを装着されて生理が楽になったことをコラムに綴っていらっしゃいました。以前はどのような不調があったのですか?
犬山紙子さん(以下、犬山):まず生理痛は3日目まではえぐりとられるような痛み、でもなんとか仕事はできるな、というくらい。婦人科で診てもらって初めてわかったのですが、経血量は多い方でした。あとはPMSでイライラ、眠気、頭痛、甘いものが食べたくなるということがよくありましたね。イライラのせいで彼に八つ当たりして、自分も罪悪感を感じていました。

——その際、どんな対処をしていたのですか?

犬山:頭痛のときは薬を飲んで、あまり我慢はしないほう。彼には「私は今こういう状況だから(体調が悪い、イライラする)」と説明をして、理解してもらっていました。あと私は空腹がイライラを増幅させるタイプなので、朝ごはんをしっかり食べていますね。他には、サプリで鉄分を摂っていました。

——そこからミレーナを挿れた経緯を教えてください

犬山:出産前は生理ってそんなものか、と受け入れていたし諦めていたところがあったんです。ピルも飲んでませんでした。でも、産後に生理が復活したときに、こんなめんどくさいものだっけ? こんなしんどいものなんだ!という衝撃がすごくて。仕事も復帰していたので、仕事する上で生理による体調不良があると超ハンデじゃん!とも思いました。出張も始まっていたので、新幹線のトイレで使用後のナプキンを変えるのも精神的にも嫌でしたね。

どうにかならんか、と思って、Twitterでこうつぶやいたんです。

そうしたら、知人がミレーナのことを教えてくれました。

——ミレーナを挿れた現在は快適ですか?

犬山:いまいましい生理痛や、お尻に気を取られるっていうことがなくなったので、結構快適です。メンタル的にもストレス軽減になりました。PMSはあるのですが。今では、新幹線移動もどんとこいだし、旅行も生理を気にしなくていいなって思います。

Photo by Mikito Tsurugi

妊娠中は彼女の身体に細心の注意を払っていました。

——劔さんは犬山さんの体調不良にすぐ気付くほうですか?

劔樹人(以下、劔):気づくというよりは、彼女の方から体調不良を訴えてきますね。家にいると、仕事の帰り道のうちに連絡が来て、具合悪いって聞かされます(笑)。一般的な人と比べると体調が悪くなりがちなタイプだと思うので、特別僕のほうで何かしてるってわけではないですかね。

犬山:彼は自然なんですけど、当たり前のように私をベッドで寝かせてくれて、子どもを見てくれるんです。PMSだからイライラしてるんだ、とかも理解してくれます。

劔:最近はミレーナのおかげと彼女の努力もあって、徐々にイライラがなくなってる気はしますね。

——妊娠中や産後もホルモンバランスが崩れやすく体調不良になりやすいと思うのですが、どのような気遣いをしていたのでしょうか。

劔:そこはもう彼女の身体に細心の注意をはらっていました。つわりがひどかったのですが、要望があれば、買い物も1日4〜5回行きました。

犬山:私が食べづわりだったのですが、そのときに食べたいものがコロコロ変わる私の要望に彼はすべて答えてくれていました。

劔:身体の変化があるのは彼女なので、妊娠中の身体にどのような変化があるのか本を読んで全力でサポートするぞ!と決めていました。生温い父親になってたまるか!とも思っていましたね。

それで、産前産後含めて3カ月間仕事をしなくていいように調整していました。とにかく産後クライシスが怖かったので(笑)、自分にできることは全部しようと思っていました。

犬山:彼は産褥期もとても気遣って休ませてくれたんです。お義母さんがお手伝いにきてくれたときも、お義母さんにというわけではなく何にでも気が立っちゃう状況だったのですが、関係が悪くならないように彼が動いてくれて。

劔:僕はそんな印象はないけどなぁ…。

Photo by Kamiko Inuyama

夫婦カウンセリングに行って、理解が深まった

——夫婦カウンセラーに通っているとお聞きしました。通うようになった経緯を教えてください。

犬山:イライラしやすい、怒りっぽいのは私自身の性格だと思っていたんです。性質だからしょうがないって。でも、理不尽に怒ったりすると、一緒に住んでいる人もストレスだし、夫との関係も長く続けたいと思っている。私がイライラしちゃうと子どもまでイライラしちゃう。よくないことが多いなと思って、カウンセリングに行きました。

——実際に通われてみて、どんな効果がありましたか?

犬山:私は行くことによって「甘えたい気持ちが怒りとなって出ている」と原因を知ることができたし、怒っている自分というものを認知できるようになりました。

劔:僕は落ち込みやすいタイプなんですけど、自分を責めすぎないようにする認知行動療法のトレーニングをして、「あ、今自分を責めているな」と認知できるようになりました。

犬山:お互い冷静に見られるようになったよね。彼は落ち込みからの回復がとてもはやくなったと思うし。自分のタイプを自覚して直そうと努力している人なんだと、彼への理解が深まったように思います。

だから、彼に不用意に「自分を責めちゃダメだよ!」と言わなくなりました。私も、自分も努力できてるし、イライラしてないし、と自己効力感が高まりました。

Photo by Kamiko Inuyama

夫婦間で力関係はどうしてもできてしまうけれど、常に「横」の関係性でいたい

——相手がしてくれた気遣いで特に嬉しかったことは何ですか?

犬山:妊娠中に女性の体や心の変化について情報をとりにいってくれたことですね。女性のことも自分ごととして知識をとりいれてくたんです。だから、理解してくれていると感じますし、孤独感も感じない。超強い味方です。

劔:彼女は勉強家なので教わることが多いですね。世の中の見方など、知見をもらっています。

Photo by Mikito Tsurugi


——お二人それぞれが気持ちよく、仲良く過ごせている秘訣はなんだと思いますか?

劔:仲はいいので…特にコレっていうのはないかも…。二人とも在宅で一緒にいる時間も長いし。

犬山:よく二人でランチにいったりするよね。私は結構考えていて、全部で3つ。まず1つがお互いの聖域には口を出さない。リビングとか共用の部分はきれいにしようよっていうけど、彼の部屋は汚くても指摘しない。趣味もあるけど、そこには口をださない。個人の聖域の部分は守っていますね。

2つ目は、横の関係性であること。恋愛においては惚れさせたほうが勝ちと思っていたときもあったけれど、そういうのは違うし、家庭に持ち込むと絶対疲れちゃう。それだけは絶対イヤだったんです。だから上下の関係性ではなく、横の関係性。そのためには相手を絶対不安にさせてはいけないから、愛情をめちゃくちゃ口に出して伝える。そうすることで自分の中にもおまじないのように効いてくるんですよね。

最後は、関係性の見直し。私のほうが発言権が強くて、彼のほうが弱くなっていないかどうか、自分の中で見直しますね。どうしても夫婦間の力関係っていつのまにか変わってしまうものだと思うので。

劔:人間が二人いるとどうしても強弱ができますよね。そこで優位に立っている人のほうが意識して気をつけてくれているというのは、相手のペースに合わせてしまうほうからすると重要だしありがたいなって思います。

犬山:あとは「身内下げ」は絶対しないってことね。私すごく嫌いなんです、旦那さんすばらしいですよねって言われて「いやいや〜」って謙遜するの。だから、ここで声を大にして言っておきます(笑)。

私が夫と結婚したい、と思ったのは、彼の性格に惚れ込んだから。優しくて、感謝の気持ちもいつも伝えてくれて、自分より周りの人を優先してしまうような人。家に帰ってそんな人がいたらなんて幸せなんだろうって。そして結婚した当初よりも成熟し、より大好きになりました。そんな夫のことを大切にできないとダメだって、夫の優しさに引っ張られて自分が変わろうとできました、感謝ですね。

劔:今の自分をそのまま認めてくれるし、それでいて一緒にいると自分も成長させてもらえて。ずっと楽しくなり続けて、仲良く歳をとってゆける人だと思います。

Photo by Kamiko Inuyama

<Profile>

犬山紙子(いぬやま・かみこ):1981年、大阪府生まれ。イラスト・エッセイストとして多くの雑誌で執筆。テレビ、ラジオにも出演。2017年1月に出産。

劔樹人(つるぎ・みきと):1979年、新潟県生まれ。ダブ・エレクトロユニット「あらかじめ決められた恋人たちへ」ベーシスト。2009年からは、ロックバンド「神聖かまってちゃん」のマネジャーも務めた。14年に結婚し、兼業主夫となる。同年、漫画家デビュー。

ランドリーボックスでは、特集「これからのパートナーシップ〜どう伝える?どう寄り添う?〜」をはじめました。

生理、PMS、不妊治療…。

女性のからだや心にまとわりついてくる体調不良の数々。

パートナーが理解して寄り添ってくれれば…と、ついつい思ってしまいます。

こんなとき、みなさんはどうパートナーに伝えているのでしょうか。

また、パートナーはどんな気持ちで寄り添っているのでしょうか。

ランドリーボックスは、様々な人たちの声を聞きました。

お互いに理解し、寄り添う二人の選択肢のひとつになれば幸いです。

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