「おりものの色がいつもと違う」「おりもののにおいが気になる」
おりものがいつもと違うと、身体に異変が起きているかもしれないと気になります。おりものは、子宮や腟などの生殖器からの分泌物。気になる異変があったときは、なるべく早く婦人科に相談すると安心です。
この記事では、正常なおりものの状態を説明した上で、注意が必要なおりものの色やにおいについてもお伝えします。
おりものは、女性ホルモンの影響で変化する
おりものとは、子宮内膜や子宮頸管、腟壁などの分泌物や、皮脂腺や汗腺などからの分泌液がまざった粘度のある液体のこと。
おりものの役割は、腟内に細菌が入り込むのを防いで膣内のバランスを保ったり、排卵時に精子が子宮にスムーズに到着するよう、受精の手助けを行ったりすることです。
また、おりものは女性ホルモンの分泌の変化にともなって、以下のように形状や色合いが変化します。ふだんと、おりものの色や量が違うと感じた場合は、生理周期と照らし合わせて確認してみてください。(※生理からの日数は、28日周期と仮定した場合の目安です)
・卵胞期(前回の生理開始から7日~13日くらい)
生理直後は、経血の残りとおりものが混ざるので少し茶色い場合がありますが、徐々に透明に変わり、質感もさらっとしていきます。おりものの量が一番少ない時期ですが、排卵期に向けておりものの量が増加していきます。
・排卵期(前回の生理開始から13~15日くらい)
排卵期のおりものは、受精を手伝う役割を果たすために、透明でとろみのある状態になります。おりものの量が多い時期です。
排卵日前後に、「排卵期出血」とよばれるピンクや茶褐色のおりものが出ることがあります。(排卵期以外の時期にこうしたおりものが出る場合は、注意が必要です)
・黄体期(前回の生理開始から15~21日前後)
おりものの量は徐々に減っていき、透明から白濁した状態になります。
・生理前(生理終了から21~28日)
おりものは白濁した状態で、量が徐々に増えていきます。
また、おりものの量は女性ホルモンの分泌によって変化するため、年代によって違いがあります。20代・30代はもっともおりものの量が多く、40代からは量が減っていき、閉経を終えると、かなり量が少なくなります。
ここまでご説明した状態に当てはまる場合は、正常なおりものです。しかし、これらに当てはまらない、おりものの色やにおいがあった場合は注意が必要です。
おりものの色とにおい、かゆみがあるかをチェック
おりものの色は、透明や白濁、薄黄色は正常ですが、濃い黄色や緑、茶色、赤色などの場合は、なんらかの病気がひそんでいる可能性があります。
おりものの状態をチェックするときは、においと色、かゆみがあるかを確認します。
実際には、おりもの色や匂いだけでは病気を決めることは難しく、診断には産婦人科などで検査や診察が必要です。以下の症状に当てはまる場合は、ぜひ婦人科に相談してみてください。
・かゆみがあり、白色で酒粕(さけかす)やチーズ・おからのようなおりもの
腟カンジダ症などの可能性があります。
・においに変化がなく、おりものの色が茶色っぽい、赤色
おりものに出血が混じっている可能性があります。子宮腟部びらん、子宮頸管ポリープ、萎縮性腟炎、子宮頸がん・子宮体がんの初期症状の可能性があります。
・においに変化がなく、かゆみがあり、濃い黄色、緑色、茶色
子宮頸管炎、細菌性腟症、クラミジア感染症、淋病、萎縮性腟炎などの可能性があります。
・においがあり、かゆみはなく、濃い黄色や緑色
細菌性腟症、クラミジア感染症、淋病、子宮瘤膿症、子宮頸がん/子宮体がん初期症状などの可能性があります。
・においがあり、かゆみがあって、灰色や茶色
腟トリコモナス症、細菌性腟症、クラミジア感染症、淋病などの可能性があります。
おりものの色やにおいが変化する原因は、こうした性感染症だけではありません。生理用品のムレや腟の洗いすぎ、体調不良による腟内環境の変化が原因になることもあるので、注意が必要です。
おりものの状態は、子宮などの生殖器の状態や、体調などが反映されます。症状が出たときにすぐに異変に気づけるよう、ふだんからおりものの変化を確認しておきましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。