2019年10月東京・渋谷で、乳がん、子宮頸がんについて学べるイベント「woman’s health academy」が開催された。同イベントは、10月のピンクリボン月間、11月の子宮頸がん啓発強化月間に合わせて開かれたもの。

「おかずクラブと学んで発見、ヘルスアカデミー」では、お笑い芸人おかずクラブのゆいP、オカリナのふたりが登場した。トークセッションの模様をレポートする。

女性ホルモンに晒される期間、乳がん発生のリスクがある

日本で乳がんは、11人に1人がかかる病気。徐々に増えており、女性が罹患するがんで最も多い。先進国における乳がんの罹患者は減っているが、日本では増えているという。

「藤沢 女性のクリニックもんま」院長の門間美佳医師はこう説明した。

「藤沢 女性のクリニックもんま」院長の門間美佳医師 Photo by Emi Kawasaki / Laundry Box

「食生活が欧米化していることで増えているとも言われています。そのほか喫煙者は乳がんの発生率が約2.5倍、毎日飲酒している人は約1.27倍に増えるというデータもあります」(門間医師)

「妊娠中と出産後の授乳期間は生理が止まりますよね。その間女性ホルモンに晒される期間が短くなります。一方、出産をしない場合は女性ホルモンに晒され続けるため、乳がんの発生リスクも高まります」(門間医師)

一般社団法人KSHSキチンと手術・ホンネで再建の会・代表理事の溝口綾子さん Photo by Emi Kawasaki / Laundry Box

自身も乳がん経験者である一般社団法人KSHSキチンと手術・ホンネで再建の会・代表理事の溝口綾子さんはこう指摘する。

「とはいえ、5人くらい出産しないとそこまで発生率に差がないとも言われています。もし出産して乳がんのリスクを抑えたい、そして少子化を救いたいという方がいらっしゃればぜひ」(溝口さん)

肥満も乳がんリスクが高まる

また、肥満も乳がんのリスクが高まる要因と門間医師が指摘する。

「BMI=29を越えると、乳がん発生リスクが2.5倍にまで高まります」(門間医師)

「BMIは見ないことにしている(笑)」というゆいPさんは、検診に対する意識が高く、相方のオカリナさんにも声をかけて、23歳から毎年健康診断を受けているそうだ。

「今年も人間ドックを受けました。オプションで婦人科検診もつけて。子どもの頃から母に、『色白でぽっちゃり体型は乳がんにかかりやすいから気をつけて』と言われて来たんです」(ゆいP)

「生理くるの早かった」ゆいPの初潮エピソード

Photo by Emi Kawasaki / Laundry Box

出産しない人に加え、初潮を迎えるのが早かった人、閉経が遅い人は女性ホルモンに晒される期間が長いため、乳がんになるリスクも高まると門間医師は指摘する。

「小学3年生の夏休み、おばあちゃんちに泊まっているときに一番最初の生理が来ました。おばあちゃんは大慌て。おじいちゃんの車で、生理用品を買いに行ってくれたのを覚えています。その1-2年後に周りが生理になって慌てている頃には、私だけ悟りの境地でした(笑)」(ゆいP)

女性ホルモンと乳がん発生リスクは密接に関わっているため、日頃からのセルフチェックと乳がん検診の大切さを語るセッションとなった。

「まずはセルフチェックが大事です。日頃から触っていれば、異変に気付きやすい。1-2センチになったときには発症からすでに10年くらい経ってる状態です。それでも手術をすればちゃんと治るので、手遅れではない。少しでも早く気づくことが重要です」(溝口さん)

お笑い芸人になる前は看護師として働いていたオカリナさんは「パートナーとのスキンシップがきっかけで早期発見できたという患者さんを目にしてきた。大切な人を救うためにもスキンシップが大事だと思う」と語った。

ワクチンを怖がるよりも、打たずに子宮頸がんにかかる方がリスク

続いて子宮頸がんのセッションで、門間医師は、20-30代の死亡率が白血病と並んでもっとも高いのが子宮頸がんであると説明した。

「若い女性の命を奪う“マザーキラー”とも言われているのが子宮頸がんです。子宮頸がんは、がんの進行度でいう0期であれば部分切除で済みますが、1期ではすでに子宮を全摘しなければなりません。2期になると、全摘もできずに放射線治療などが必要になってきます」(門間医師)

Photo by Emi Kawasaki / Laundry Box

門間医師は予防について続けた。一次予防は、10代の若いうちに性交渉しないこと。子宮頸がんの元となるヒトパピローマウイルス(HPV)は性交渉で感染するためだ。または、性交渉よりも前に子宮頸がんワクチンを打つことが重要であると指摘。

「ワクチンに関しては数年前ある映像が出回ったことで、怖いワクチンだと思っている人も多いですが、ワクチン打つことによってそういうことが起こるリスクは10万人のうち25人程度。ワクチンを打たずに、子宮頸がんにかかるリスクは、10万人のうちの数千人という大きな割合なんです。ワクチンを怖がるよりも、打たずに子宮頸がんにかかる方がリスクだと最近は考えられています」(門間医師)

二次予防は、定期的にがん検診を受けることだという。

「検診での子宮頸がんの発見率は86%、つまり検診を受けても14%は見逃してしまうと言われています。ですがHPVは悪性度が高く、進行しやすいため、とくに20代のうちは、陰性という結果が出ても毎年受診することが大事です」(門間医師)

一年に一度、検診の日を決めるのもいい

Photo by Emi Kawasaki / Laundry Box

しかしながら、20代の子宮頸がん検診の受診率は、わずか22%にとどまっている。

「若い子が検診に来てくれたらそれだけで嬉しくなります。職場とか学校とかみんなに広めてほしいって話をするようにしています。実際に、前がん病者が職場で見つかるとほかの人も検診を受けて、見つかるパターンも多いのです。痛いという検診のイメージを払拭するために“痛くない検診”を心がけています」(門間医師)

「乳がんの検診率は12年前は7-8%だったところ、今は50%近くにまで上がったということを知って、進歩していていいなと思いました」(ゆいPさん)

「うちの母は、私が生まれた日を毎年検診の日に設定しています。そういうふうに自分にとって大事な日を検診日と決めるのもいいかも」(オカリナさん)

「生涯未婚率は上がっていますし、乳がんも子宮頸がんも『自分はパートナーもいないし、結婚とか出産の予定もないし』と思っている人もいるかもしれません。でも好きなことを好きにするためには、健康でいることが大事だなと思いました。1年に1回検診に行って、自分のカラダを知って好きなことを楽しんでほしい」(オカリナさん)

人気芸人、おかずクラブの生理事情は?

Photo by Emi Kawasaki / Laundry Box

お笑い芸人はときにハードな仕事だけれど、忙しく活躍しているおかずクラブのふたりの生理事情はどうなのか?ランドリーボックスが、イベント後に話を聞いた。

ゆいPさんは昨年、5カ月で−13kgのダイエットをしたときに生理が止まったと話した。

「ダイエット中は生理が来なくなって、リバウンドしたあとに生理がきました。最近、若い人の中でも、生理が止まる人が多いそうなんです。3カ月生理が来なかったら、婦人科を受診した方がいいんですって。でもそういうことを教わる場所ってなかなかないですよね?もっと学校で教えてほしいと思いました」(ゆいPさん)

オカリナさんは生理用品にはこだわりがあるそうで、こんな話をしてくれた。

「私は新しいナプキンがでたらチェックして、色々試しています。一時期、布ナプキンにハマっていたことがあるのですが脱落しました……。現場で取り替えたものを持ち帰らないといけないし、洗うのが面倒になってきちゃって(笑)。でもいろんな生理用品があって、選択肢があるっていいことですよね」(オカリナさん)

 *

今回、芸人さんのカラダのこと、生理事情を聞けたのは新鮮な取材になった。ランドリーボックスでは、「スポーツと生理」などを取り上げてきたが、今後さまざまな仕事と、生理をはじめとするヘルスケア領域について、取材していこうと思っている。

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