2019年9月19日、東京・渋谷のコミュニティスペース「EDGEof(エッジ・オブ)」にて日本では初となるFemtech(フェムテック)関連のリアルイベント「Femtech Fes! 〜あなたの欲しいモノは、みんなの欲しいモノ」が開催されました。
国内外から、26のフェムテック製品やサービスが会場に集結。また、最新のフェムテック業界カオスマップも発表されました。当日の見所を紹介します。
FemTech Fes!ってなに?
「Femtech Fes!」は、国内外でフェムテックと呼ばれる領域の製品+サービスの見本市。今回、第1回目にして、来場者は定員枠を超え大盛況となりました。
ランドリーボックス読者ならすでにご存じの方もいるかもしれませんが、改めてひとことで紹介すると、「Femtech(フェムテック)」とは、女性特有のカラダにまつわる症状改善や健康を目的とした製品や、技術、サービスのこと。
Female(女性)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、本イベントにも出展されていた女性の周期管理アプリ「クルー(Clue)」のCEOであるIda Tinさんが名付け親です。
2025年には500億ドル(5兆円)市場になるといわれるフェムテック業界のアイコン的存在になっています。また、ヘルスケアと対比するフェムケア(Femcare)という呼び方も使われています。
Femtech Fes!は、フェムテックに興味をもつ人たちに集ってもらい、プロダクトに触れ、興味のある分野を語り、まだ生まれたばかりのこの市場を盛り上げていこうという趣旨のイベントです。
日本国内からは7社、海外は8カ国、19社が集まりました。個人輸入やクラウドファンディングに参加する必要があるもの、未発売のものもあるため、プロダクトに直接触れられるという、貴重なチャンスとなりました。
発表! 海外系「Femtechカオスマップ2019」
イベント内のプレゼンテーションでは、フェムテックの歩みなどが紹介されましたが、目玉は、当日発表された業界カオスマップ。
現在、インターネット上のカオスマップとしては、2年前の2017年に発表されたFemtech Market Map、Womens’s Health Sartup Mapが最新でした。
しかし、そこから多くのサービスが新たに生まれているはず…ということで、今回、2019年版を当イベント主催のfermata株式会社が制作しました。その「国外のFemtechカオスマップ2019」がこちら。
なんとすでに221社にも上ります。カテゴリーは8分類にされていました。簡単にジャンルを紹介すると、左から、
・Period「女性周期・生理関連」…もっとも数が多いエリアです。生理用品、周期トラッキング、生理痛の緩和などを扱っているスタートアップです。
・Fertility/Infertilitiy「妊活・不妊」…妊娠のコントロールや処方箋のサブスクリプション、いわゆる妊活のためのソリューションの分野です。
・Mother’s solution「妊婦・育児」…ハンズフリーの自動搾乳機や産後ケア、妊娠中の管理や陣痛予測までさまざまなサービスがあります。
・Women’s specific diseases「女性特有の病気」…乳がん・子宮がんなど女性特有のがんチェック、骨盤底筋の緩み改善、性欲減退の改善、女性と家族に向けた医療相談(家族の健康ケアは多くの場合女性に責任が持たされているため)
・Menopause「更年期」…閉経期・更年期に起こりがちな体調不良や違和感などの軽減、解消。年齢層が上がる対象サービスはまだまだ少ない!でも確実にニーズがある伸びが期待される分野です、というお話もチラリ。
・Sexual Wellness「性の健康」…女性目線でのセックストイや性感の改善など、中には過激なポルノビデオしか見たことがない彼氏教育のための「ふつうのセックスをシェアする」SNSも。性やセックスについて女性のためのソリューションを提案する(男性目線のセックスのソリューションではなく)ことがポイントなのですが、それ自体がタブーであることは多く、近年もスタートアップのネット/公共広告が事業者によって排除されることが社会問題になっています。
・MentalHealth「メンタルヘルス」…リラックス目的や、鬱傾向などに対応するためのサービスなどです。
・Others「その他」…そのほかにもメディアやトレーニングアプリのなど上記の分野に収まらないフェムテックも存在します。
カオスマップで紹介されたスタートアップは、知名度や成長度には差があります。そんななか、すでに大成長が期待されるスタートアップもあります。例えば子育て女性のためのプロダクトを開発するElvie(イギリス)は、4200万ドルの資金調達を2019年春に得ました。今後数年のうちに、こういった大型のフェムテック・スタートアップがいくつも登場すると考えるとワクワクします。
当然、日本でも同様の動きが起こりつつあり、イベントにも「Herbio(ハービオ)」「Seem(シーム)」「PAIRCARE(ペアケア)」「Emily Week(エミリーウィーク)」「スマルナ」「Genome Clinic(ゲノムクリニック)」「Bonyu.lab(ボニューラボ)」が出展していました。海外フェムテックの上陸も待ち遠しいですが、質が高く、安心して使える国内サービスが広がっていくのも楽しみです。
ランドリーボックスが注目したプロダクトを紹介
タッチアンドトライできるプロダクトや創立者たちからのパネルメッセージが展示された会場から、編集部で注目したプロダクトをピックアップしました。
■ 英国発 スマホと連携できる「膣トレ」デバイス「Elvie Trainer」
今年大型資金調達に成功したElvieは、骨盤底筋を鍛える小さなデバイスを手がける。膣の中に挿入した状態で、スマホのアプリを見ながら膣トレをするというもの。個人差はありますが、1日2分ほど続けると2週間前後で膣の緩みが改善されるそうです。
10月半ばより、ランドリーボックスのECサイトでも販売予定。
■ 妊婦さん向けの陣痛モニター「Bloomlife」
Bloomlifeは、妊娠トラッカーと呼ばれるもので、妊娠中のお母さんがお腹にペタッと貼り付けて陣痛のタイミングを計測するデバイス。子宮収縮のリズムをアプリから計測モニターできるようになり、お産の本番日に近づいていることがチェックできます。出産日の予測は女性のパーソナルデータを計測することで、将来より確実になると考えられています。週20ドルのレンタル(現在はアメリカ国内のみサービス)。
■ 韓国発の 経血をデータ化して健康管理に役立てる「LoonCup」
ランドリーボックスのECでも大人気アイテムの「月経カップ」。このLoonCupは、経血を溜めるだけだった既存商品から大幅に進化した「スマート月経カップ」。
本体内側の下部にセンサーを埋め込んであり(肌に直接触れることはありません)、カップに溜まった経血の量・色・体温・サイクルをアプリで見える化・記録し、健康指標に役立てようというもの。「ただ出血して終わるのもなんかもったいない」そう感じていた女性たちに響いたのか、KickStarterで2017年に16万ドルを調達。現在はβ版のテストがスタートしています。
■ カナダ 更年期向けデリケートゾーン専用ローション「Pulse」
香りやカラーが選べる、デリケートゾーン用のローション。起業家であるご本人が素っ気のない既存の製品やそのクオリティの悪さに驚き、こだわりをもって作られた。肌触りや使い心地を極め、人肌に温めて使えるウォーマー機能が高ポイントです。明るさやカラーが選べるライトを備えており、ベッドサイドに置いて使えば、雰囲気も高められるというきめ細やかさ。専用ローションは29.95ドルで販売している(日本では未発売)。
■ 男性向け妊活アイテム。スマホでできる精子セルフチェック「Seem」
フェムテックが「女性の健康のため」とされている一方で、不妊に関しては、半分は男性側に原因があると言われています。
Seemは簡単なキットを使って、スマホで精子の動きをセルフチェックできるサービス。測定結果は基準値と比較して精子の健康状態や環境による状態の変化を確認できます。1回分のキットは3980円で販売中。
おわりに
このほかにも、ワークショップやネットワーキングなど盛りだくさんのイベントでした。
運営の杉本 亜美奈さんから、フェムテック市場に関する講演がありましたので、いくつかポイントを紹介して、このレポートを終えたいと思います。
フェムテックを躍進されるための鍵
・健全性や有効性の検証
フェムテックには「わー!そんな夢のような商品が!?」と心躍るものもありますし、よりパートナーや社会の仕組みに関連するようなものもあります。
健全性や、医学的な有効性が重要になってくるでしょう。その点がきちんと検証されなけれ、ポッと出たスタートアップが失敗して、業界全体の信用が失われるということが起こりかねません。そのためにも第三者や医療の専門家がチェックする必要があります。
・開発コストと、プロダクトが高額であること
アプリサービスと違い、ウエラブルデバイスの開発などには開発費や製造費、検証コストなどが多くかかります。フェムテック市場が進むには、より多くの理解のある出資者やサポーターの存在が欠かせません。
・データセキュリティの担保
フェムテックで集まるデータは、今後の健康指標や予防医学に役立つビッグデータになると考えられています。その一方で、自分のカラダに関わる情報は、もっとも外に出したくないパーソナルデータです。
情報漏洩や悪用・盗用など、利用者が危険な目に遭わないように、データ運用のポリシーや、データを預ける場合の安全性を担保するのは最重要項目です。
・フェムテックは女性だけ?
フェムテックの領域は女性のカラダと健康に関わるもの。とはいえ、LGBTの文脈や、妊活における男性の課題など、「フェムテックって女だけの問題?」ということは常に問い続けなければなりません。
・文化の壁とタブーの破壊
日本に海外フェムテックが入りづらいのは、文化の壁が大きいと考えられています。言葉や商習慣だけでなく、女性のカラダや性の問題などについて語りづらいという習慣によるもの。
日本に限らず、女性のためのフェムテックは、タブーの破壊によって問題や悩みが語られ、オープンにされ、アイディアを出しあって解決することによって成立するのではないでしょうか。日本に住んでいる女性一人ひとりが、自分がどんなタブーを背負っているのか感じ、またその不自由さを壊していく、これが、フェムテックがさらに躍進する原動力になるのだと思います。
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