性教育パペット「ばあばるば」では、<Ba-Vulva Friends>と題して、国内外のセクシュアルヘルスにまつわる方々にインタビューをしています。

今回は、フォトグラファーの花盛友里さん。12年前、妊娠をきっかけに始めた「脱いでみた。」プロジェクト

当時は母になることへの不安と葛藤を抱えていた花盛さんが、今では200人以上の女性のヌード写真を撮影し、女性をエンパワーし続けています。

撮影を通して見えてきた女性を取り巻く環境の変化、カラダや性教育への想いを花盛さんに聞きました。

きっかけは「お母さんになること」への不安

——「脱いでみた。」を始めたきっかけを教えてください。

12年前に妊娠したことがきっかけです。

当時、多様なお母さんの姿を知らなくて、思い浮かぶ母親像はサザエさんとかしんちゃんのママくらい。「おかんになるのか…」と母になることがすごく不安だったんです。

その反動から「もっと激しいことをしたい」と思い、カメラマンで激しいことといえば、ヌードでしょという安易なノリでスタートしました。

—— 最初は母になる不安からだったんですね。けれど、そこから10年以上続けられています。

最初の頃は、プロのモデルさんを被写体にしていたんです。その子たちと話していて、とても綺麗な容姿であっても、自分の容姿にすごくコンプレックスを抱えていると気づきました。

でもヌード写真を撮影すると「私もいいのかも」とポジティブに思ってくれて。そこから一般の子も撮影するようになり、これまで200人くらい撮影させてもらいました。

撮影を通じて笑顔になってくれるのが嬉しいんです。

「ありのままが美しい」から「あなたの人生が美しい」へ

—— 撮影を通じて女性たちをエンパワーされているんですね。当初と気持ちが変わってきたと感じることはありますか?

当初はフェミニズムもよくわかってなくて、自分が”お母さんだけ”であることに抗いたくて撮影をしていました。

でも今は、社会のあり方も変わってきて、お母さんは料理ができないといけないとか、「こうあるべき」みたいなのはおかしいという発信が増えましたよね。

それもあり、私自身も女性の社会進出や性教育のことなど、言葉にしていきたいことが増えている気がします。

——  それは写真にも影響していますか?

そうだと思います。当初は目の前にいる女の子の「体のきれいな部分を探すこと」を大事にしてたんです。

たとえば「耳ひとつ撮ってもこんな綺麗やで。ほらここもきれいやん!」と撮影で伝えていました。

でも今は、もっと彼女たちの人生にフォーカスしたいと思うようになりました。

良いことも嫌なことも、いっぱい泣いたり笑ったりしてきて今があります。だから、個々のパーツだけでなく「全部ひっくるめたあなたが素敵だよ!」と言いたくて撮影をしています。

——  年月を重ねたからこそですね。花盛さん自身の心境にも変化がありますか?

それはそうですね。年を重ねることで言えることが増えてきたと感じています。若い頃に同じ言葉を言っても説得力がないこともあると思うので。

とはいえ、私も人並みに「年をとりたくないな」と思うことはあります。もっと若かったらなんでもできるのに…と落ち込む瞬間もあります。

でも、そういう悲しさや辛い機会を経験するからこそ、人の悩みを理解できるようになるし、みんなの想いを感じることもできるんだなって今は思えます。

——  年を重ねることが前向きに捉えられるように。これから更年期もやってきますしね!

そうなんです。もちろん、嫌なものは嫌なんですけど、嫌だと思うたびに成長したんだと。この気持ちと一緒にみんなを撮影したら、若い頃にはできなかったことができると思っています。

きっと60歳になったらもっとすごいですよ。若い子達に「大丈夫だよ」ってもっと言えるようになるんだろうなって。

あとは、若い子たちと喋ることで自分も学べるので、それが醍醐味です。

撮られる側も、社会も、変わってきた

—— 撮影を希望する女性たちも変わってきていますか?

すごく変わっています。当初は、顔は映してほしくない方や、彼氏や会社から言われて写真を載せられなくなった方もいました。

でも今は、撮影に家族総出で送り出してくれるような人ばかりです。びっくりしますよ。

「子どもを見ておくから撮影に行っておいで」「君がやりたいならいいじゃん」と夫さんが応援してくれているという方も多くて、この10年の社会の成長がすごいなと感じます。

昔は、マタニティ撮影ですら賛成してくれる男性は少なかったように思います。

—— 撮影を希望する女性たちはどんな理由でお越しになるのですか?

理由は様々ですが、「脱いでみた。」の世界に入りたいという方も多いです。あとは、自分を好きになりたいと来てくれる子もいます。

昔と比べると今の方がもっとオープンというかポップな感じがします。あとは、何年も「脱いでみた。」の写真を見てくれているので、ここは自分を受け入れてもらえる場所だと安心感を持ってくれているのかもしれません。

心の準備ができているんですよね。

それはだれのため?自分を見失わないためにできること

——  今だからこそ増えている悩みはありますか?

やっぱり、世の中に綺麗な人が多すぎることですかね。加工だらけですが(笑)

1日中、自分の近くに携帯があって、携帯に表示される人はみんな綺麗ですよね。いやいや、そんな綺麗なわけないよね?と思いながらも、私自身「これ買おう」って流されてしまいます。

「ありのままで」という発信が増えている一方で、加工技術の進化は止まらないです。

足、長すぎ。顎、細すぎ。肌、綺麗すぎ。正直、ちょっと異常ですよね。

自身の写真を加工することで、自分を好きになる瞬間もあると思います。でも、加工をすればするほど鏡で自分を見た時に、もっと落ち込むこともあるのではと思ってしまうんです。

——  リアルとSNS。完全な切り分けって、なかなか難しいですよね。どう対処したらいいと思いますか?

すごく難しいと思いますが、もう、銭湯行きましょうって思います(笑)

意識的に自分から携帯を引き離して、道を歩く。銭湯に行く。対面で人と話す。そして、そこでちゃんと悩みを言う。

意識的にオフラインの場を持たないと、落ち込みはひどくなる一方な気がします。

—— 銭湯いいですね…!無加工のリアルがそこにありますね。

そうなんです。加工すること自体を止めるのはとても難しい。だから「脱いでみた。」みたいな写真集や企画が点在していて、その写真を見ることで、「私そのままでもええやん」と思ってもらえたらいいなって思っています。

「脱いでみた。」は、持ち歩ける銭湯になりたいですね。

花盛友里「nuidemita – 脱いでみた。3 -」

小さな刷り込みが、人生を変える

——  性教育についても思うことがあるとおっしゃっていました。

まず、子どもたちに伝えないといけないことを学校で教えられない状況があるということがおかしいですよね。

「セックスを教えることで不純な性行動を助長する」なんて考えはありえないですよね。

性教育ができていないことによる影響の方が大きいですよね。私も昔言われたんですが、「ゴムつけるなんて俺のこと好きじゃないの」っていう人とかね。

——  あーーー、、そういう謎のことをいう人もいましたよね。

ああいう男の子からの言葉も、子供の頃に性教育をきちんと学んでいたら、そんなことを相手に言われても「そんなわけあるか」って言い返せてたと思うんです。

でも知らなくて強く言えなかった。だから、まず私たち大人も性教育を受ける必要があります。

昔から正しい情報を知っていたら、もっと自分を大事にできたのにってすごく思うから、今の子どもたちには学んでほしいんです。

女の子には、さっきみたいなこと言われたら、「わたし軽んじられてるんや!」って思ってほしいし、男の子にはこういう発言は「愛がない」ことだと性教育で学べると思います。

本当の愛というか、性欲だけじゃない愛を見つけるためにも、性教育は小さい頃からしておく必要を強く感じます。

—— ご自身の息子さんたちにも性教育をされていますか?

はい、段階を追って教えているところです。何冊か性教育の本を読んでいます。親として知っておきたいことが書かれている本と、子供と一緒に見る本です。

子どもと一緒に見る本のページを開いて説明をしています。「パンツは自分で洗うのか、お母さんが洗うのか」といった日常的な話もしています。

小5の息子には先日夢精について伝えて、次のステップがセックスについてなので、どう伝えようかと考えているところです。

精子や卵子の話はよく出てきますが、セックスについてはやはりドキドキしますよね。でも、中学生になると話を聞いてくれなくなりそうなので今が大切なんだろうなと向き合っています。

日常で伝えるジェンダーのこと

—— お話をきいていて、花盛さんはお子さんに飾らない言葉で、日常的に伝えているんだろうなと感じます。

そうですね、意識的に伝えるようにしています。

たとえば、朝のニュースで、お母さんが赤ちゃんを殺害して捨てたという話題が出ていたら「このニュースだと、お母さんだけが悪いように言われているけど、捨てた男の人もいるっていうことやからな」と、毎回伝えています。

男女がいて子供が産まれる。精子がないと子供はできないんだよって。

—— 大切ですね。男の子だからこそ知っておいてほしいことですよね。息子さんたちは、お母さんの活動を知ってますか?

もちろん知っています。私の活動を嫌だと思っていた時期もあったと思います。「なんで裸ばっかりとるの?」って。きっと恥ずかしかったんだと思います。

でも2023年に「脱いでみた。」の個展をした時、「ぼくの母ちゃんかっこいいでしょ」と褒めてくれて、もうほんとに、ほんとにめっちゃ嬉しかったですね。

2023年の個展の様子/Photo by Haruka Nakamoto

自分の体に愛着を持つためには?

—— 私たちは、女性の外陰部の構造などを正しく楽しく学ぶ性教育パペット「ばあばるば」を企画制作しています。このようなパペットについてどう思われますか?

まずは、保健室に置いてほしいです。以前に、保健室の先生が個展に来てくれたのですが、その方が保健室に「脱いでみた。」の写真集を置いてくれているんです。

からだや人間関係の話とか、保健室でしか言えない悩みってすごくあるなと思って。ばあばるばも、保健室で1人の時だからこそ、ゆっくり眺められるんじゃないかなって思いました。

あと、産婦人科にもめっちゃ置いてほしいです。

—— 保健室いいですね…!たしかにゆっくり1人で見るのも大切ですね。

あと、ばあばるば、めっちゃ可愛いですね。ポップで色味が完璧です。普通に部屋に置いてあっても違和感ないですし、息子にも全然見せられます。

可愛いものを使うと説明しやすい気がします。

—— うれしいです。可愛さって大事ですよね。

なぜか性器って汚いものって思いがちですよね。でも、自分のものを汚いって思うと、大切にできないこともあると思うので、知識を学ぶことも大事ですが、自分にはこういう素敵な器官があるって思えたらいいなと思います。

あと、おばあちゃんが大事に作ってくれているっていうのもいいです。性教育にもポップさや可愛さ、そして愛のある発信が大事だなって思います。

「こうやって置いておけば息子に全然、見せれる!めっちゃ馴染んでる。可愛いもん」(花盛さん)

—— これを知れば、もっとハッピーになれる!ってなっていくといいですよね。自分の体に愛着を持つために、何かするといいことってありますか?

銭湯もいろんな体があることを知れるのでいい場所だと思います。

でも、普段から自分でできることとしては、自分と対話して褒めてあげるのがとても大事だと思います。

1日1回お風呂入る前にとかに鏡をみて「この角度よくない?」って。そんなくらいで全然いいと思うんです。体ってそれも全部聞いていると思います。

あと、アメリカの有名モデルの方がカウンセラーに言われたことらしいのですが、「自分の子供の時の写真を鏡に貼って、その子に言ってあげたいことを言ってあげなさい」って。

小さい頃の自分に意地悪なんて言わないじゃないですか。きっと優しい言葉を投げかけますよね。すごく素敵な方法だなと思いました。

—— すごく素敵な方法ですね!私も鏡の横に貼ります。花盛さんありがとうございました!

ーー

写真や撮影を通じて「私のままで素敵やん」と思うきっかけを作りつづけている花盛さん。

社会やデジタルのフィルターにさらされ、自分の”ありのまま”を見つめることが難しい時代。

だからこそ、「わたし、いいやん!」と思わせてくれる人やモノ、場所に触れることが大切だと改めて感じました。

ばあばるばも、そんなきっかけのひとつになっていきたい。

花盛さん、ありがとうございました!

花盛友里「nuidemita – 脱いでみた。3 -」

ーー

Ba-Vulva(ばあばるば)は、おばあちゃんたちと手作りで作っています。ばあばるばに込めた想いやプロダクト詳細はこちらをご確認ください。
https://laundrybox.co.jp/BA-VULVA_jp 

本記事はランドリーボックスが制作している性教育パペット「Ba-Vulva(ばあばるば)」の公式サイトの記事を一部編集の上、転載しています。

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