保護者の約8〜9割が、避妊や性的同意・性暴力などのテーマを「中学校までに教え始めるのが適切」と考えている。
NPO法人ピルコンと公益財団法人ジョイセフが共同で実施した全国5000人への意識調査では、現在の性教育内容と理想との乖離が明らかになりました。
日本の学校の性教育では、「はどめ規定」*によって性交や避妊、妊娠の過程などの指導が制限されており、避妊や性的同意といった重要なテーマが学校教育の中で十分に扱われていません。
その結果、学校で学ぶ内容と、子どもたちが実際に知りたい情報との間には大きなギャップが生まれています。(関連記事:「お風呂で妊娠するの?」性教育”はどめ規定”の現状とは)
日本の性教育を取り巻く課題を可視化するために実施された本調査は、全国の10代〜60代の男女5000人を対象に実施されました。
調査結果を紹介します。
※はどめ規定:学校の教育内容について定める「学習指導要領」における「妊娠の経過は取り扱わないものとする」等の、性に関する学習内容を制限する規定。
学校の性教育と、実際に求められている学び
学校で性教育を受けた経験があると答えたのは全体の40.7%。若者世代(15〜24歳)では59.2%と半数を超えるが、内容への満足度は全体でわずか18.0%にとどまった。若者世代でも35.9%と、3人に2人は満足していないという結果に。
学んだ内容で最も多いのは「体の変化・思春期」(59.3%)。一方で、当時もっと知りたかった内容としては「避妊」(16.2%)や「妊娠・出産」(14.2%)があげられました。
また、現在重要だと思うテーマも「避妊」(24.3%)、「妊娠・出産」(17.4%)、「性的同意・性暴力」(14.9%)が上位に並び、教わった内容と知りたかった内容のギャップが浮き彫りになっています。
自由回答では「体の仕組みの説明だけで、どう向き合うかまでは教わらなかった」(15歳・男性)、「大事な内容なのに教えられることが少なかった」(16歳・女性)といった声が寄せられた。
◾️学校で性教育を受けた記憶はありますか?

◾️学んだ内容に満足していますか?

◾️次の項目について、(1)学校で学んだ内容(2)もっと知りたかった内容(最大上位3つ)(3)今、重要だと思う内容(最大上位3つ)それぞれ当てはまるものを選んでください。

保護者の約8〜9割「中学校までに避妊・性的同意を教えるべき」
また、性教育を始める時期についても、多くの人が早い段階での実施が望ましいと考えていることが分かりました。
「避妊」「性的同意・性暴力」「ジェンダー平等」「性の多様性」など12項目のテーマについて、約7割が小学校または中学校までに教え始めるのが適切だと回答。
性教育を始める適切な時期について、「避妊」「性的同意・性暴力」「ジェンダー平等」「性の多様性」など12項目すべてで、約7割が「小学校または中学校まで」に教え始めるのが望ましいと答えました。
特に保護者層ではその傾向が強く、「妊娠・出産」「避妊」「性的同意・性暴力」の3項目については約8〜9割が中学校までと回答しました。
「小学生のうちに学びたかった」(44歳・女性)、「繊細なテーマだからこそ、繰り返し学ぶ機会を増やしてほしい」(46歳・男性)という声も。
スマートフォン利用の低年齢化を背景に、「インターネットの使い方」については53.5%が小学校からの指導を求めています。特に女性保護者では6割以上の方が早期のリテラシー教育を望んでいます。
◾️次の内容について、「教え始めるのに適切だと思う時期」をそれぞれ1つ選んでください。

◾️妊娠・出産について教え始めるのに適切だと思う時期は?

◾️避妊について教え始めるのに適切だと思う時期は?

◾️性的同意・性暴力について教え始めるのに適切だと思う時期は?

自由記述では、評価する声がある一方で、内容の不足を指摘する声も見られました。
「避妊の大切さや命の尊さ、ジェンダー平等などを学べた」(16歳・女性)
「体の仕組みの説明だけで、どう向き合うかまでは教わらなかった」(15歳・男性)
「大事な内容なのに教えられることが少なかった」(16歳・女性)
「小学生のうちに学びたかった」(44歳・女性)
「繊細なテーマだからこそ、繰り返し学ぶ機会を増やしてほしい」(46歳・男性)
性の情報は「インターネット」が中心、相談先の少なさも課題
性に関する情報源として最も多かったのは「インターネット」(42.4%)でした。次いで「特になし」(33.4%)、「学校・教員」(15.9%)と続いています。
「自分が知りたいことを調べるだけなので、本当に大切なことが調べられているか分からない」など、インターネットで情報を得ている人が多い一方で、情報の正確さに不安を感じる声も見られました。
若者世代では、「SNS」(30.6%)や「学校・教員」(28.0%)を情報源とする割合が全体より高くなっています。
特に「学校・教員」は、信頼できる情報源として挙げた割合も16.9%と全体より高く、学校での性教育が信頼できる情報に触れる機会の一つになっていることがわかります。
◾️性に関する情報の入手先を教えてください。(複数回答可)

◾️先の問いで選択したうち、最も信頼する情報源を1つ選んでください。

性について相談できる相手は「特になし」が最多
性について相談できる相手については、「特になし」が63.5%で最も多い結果に。学校(3.6%)や医療機関(6.5%)と答えた人は多くありませんでした。
若者世代でも「特になし」が58.7%で最も多く、「友人・先輩」13.9%がそれに続いています。悩みがあっても、誰に相談すればよいのか分からないと感じている人も少なくないことが分かります。
◾️性に関する情報の入手先を教えてください。(複数回答可)

「はどめ規定」や「包括的性教育」をどう考えている?
学習指導要領における「はどめ規定」について知っていると答えた人は、全体の18.8%にとどまりました。
一方で、この規定についての考え方を尋ねると、「必要な教育を妨げていると思う」(21.6%)、「制限は一部残しつつも、性交や避妊については教えるべき」(33.5%)といった回答が見られ、合わせると半数以上が、より踏み込んだ性教育を求めていることが分かりました。
これに対し、「制限が必要」と考える人は7.8%でした。
◾️はどめ規定について、あなたの考えに近いものを選んでください。

<関連記事>
【UPDATE】「お風呂で妊娠するの?」性教育“はどめ規定”の現状とは | ランドリーボックス
性教育「はどめ規定」の誤解とは?モデル鈴木えみも登壇、10代が本当に知りたい性の情報を | ランドリーボックス
また、「包括的性教育」(※2)の認知率は27.6%でした。若者世代では32.0%と、ほかの世代と比べてやや高い傾向に。
包括的性教育に対するイメージとしては、「重要である」(42.8%)が最も多く、「役に立つ」(29.6%)、「身近なものである」(27.0%)と続き、認知している人の間では前向きなイメージが広がっていることが分かります。
◾️包括的性教育についてどのようなイメージがありますか?最大3つまで選んでください。

緊急避妊薬の薬局販売は認知4割、確実に購入できるのは3,000円未満が7割強
薬局販売の認知はまだ十分とはいえない
2026年2月から始まった緊急避妊薬の薬局販売について、「知っている」(14.1%)、「なんとなく聞いたことがある」(25.4%)と回答した人を合わせると約4割となりました。
一方で、過半数はまだ認知していない状況であり、社会全体への周知が十分とは言えない可能性も見えてきました。若者世代の女性でも「知っている」「聞いたことがある」を合わせた認知率は43.3%にとどまっています。
◾️緊急避妊薬は、2026年2月頃から一部薬局で処方せんなしでの販売が始まる予定です。このことを知っていましたか?

薬局で購入する際に知りたい情報としては、「販売場所」(50.4%)や「価格」(43.5%)が多く挙げられました。
◾️緊急避妊薬が必要となったとき、入手や使用にあたって知りたいと思うことはありますか?(複数回答可)

薬剤師に求める対応については、「簡潔な説明」(39.6%)を望む声が多く、必要な情報をわかりやすく得られる環境が求められているようです。
◾️緊急避妊薬を薬局で入手する際に、薬剤師からの説明に関する希望はありますか?(複数回答可)

さらに、薬局での面前服用については、若者世代の女性の回答では「必要な措置である」(31.7%)が最も多かったものの、「心理的な抵抗がある」(26.4%)と感じる人も見られました。

価格への期待と現実のギャップ
価格について見ると、要指導医薬品として販売される緊急避妊薬の希望小売価格は7,000円〜7,500円程度とされています。
一方、調査では希望する価格として「1,000円未満」(35.0%)が最も多く、「3,000円未満」までを含めると全体の7割以上(72.9%)に達しました。実際の販売価格との差が明らかになっています。
◾️緊急避妊薬がいくらであれば確実に入手できると思いますか?

今後の情報周知方法については、「コンドームや妊娠検査薬のパッケージに案内を入れる」(27.5%)、「学校での性教育を充実させる」(27.4%)といった回答があげられました。
「個人の問題ではなく、社会の制度設計の課題」
今回の調査からは、性教育の内容や情報へのアクセス、緊急避妊薬の周知など、さまざまな面で課題が残されていることが明らかになりました。
こうした結果を受けて、性教育の普及に取り組むNPO法人ピルコン理事長の染矢明日香さんは次のようにコメントしています。
NPO法人ピルコン理事長 染矢明日香さん
今回の調査では、保護者世代から「自分たちは十分に学べなかった」という切実な声が数多く寄せられました。同時に、若者世代からも、「大切なことだからこそ、きちんと学びたい」という強い要望が示されています。世代を超えて、体系的な性教育を求める声が広がっていることが明らかになりました。
しかし現状では、学校教育における性教育の不足や、いわゆる「はどめ規定」による内容制限のもとで、避妊や妊娠、性的同意といった重要なテーマが十分に扱われていません。その結果、若者が自らの健康や尊厳を守るための知識を得る機会が保障されず、インターネットやSNS上の不確かな情報に頼らざるを得ない状況や、相談先を見つけられず孤立する状況が生まれています。これは個人の問題ではなく、社会の制度設計の課題です。
また、緊急避妊薬の薬局販売が市民の声に後押しされて開始されたことは前進ですが、十分な周知とアクセス改善が伴わなければ、権利としての実効性は保障されません。加えて、政府主導でのプレコンセプションケアが推進される今こそ、人権とジェンダー平等を基盤とした包括的性教育を明確に位置づけていくことが必要です。私たちは、幼少期からの心・体を守る学びと若者の避妊や相談・支援へのアクセス改善とをあわせて両輪で推進することを強く求めます。
<調査概要>
・実施期間: 2026年1月26日(月)〜2月2日(月)
・実施方法:Webアンケート調査
・対象者: 全国の10代〜60代男女(高校生・大学生含む)
・有効回答数:5,000名














