ランドリーボックスは、外陰部の構造を楽しく、正しく理解し対話するためのパペット Ba-Vulva(ばあばるば)を企画・制作しています。

ばあばるばでは、カラダについて適切な情報を知り、対話を通じて健やかな日々を送っていただきたいという想いから、<Ba-Vulva Friend>と題し、国内外の専門家にインタビューを行っています。

今回お話を伺ったのは、DV被害や家庭環境、生活困窮者の一時避難、中長期滞在を支援するシェアハウス「星の虹」を運営する二星星(にぼしぼし)さんです。

二星星さんは、DV被害の当事者として裁判を起こし、その経験を漫画にして出版。

その後、DV支援や女性支援が足りていないと感じた山梨県に移住し、女性向けシェアハウスとエステサロンを軸に持続可能な支援仕組みをつくり続けています。

自身の経験を糧に行動し続けてきた二星星さんに、DV被害支援をするに至った経緯、身体の知識の重要さについてうかがいました。

殴られた翌日に「泣き寝入りはしない」と決めた

−−DV被害をうけて、裁判をし、その経験を漫画にされています。 裁判に踏み切れた理由はなんでしょうか?

二星星さん: 被害に遭った翌日、弁護士事務所で働いている中学時代の友人に相談したんです。そしたら「泣き寝入りする人が多いよ」って。

でも私は、こっちが泣き寝入りする必要はないと体が拒否して。やってダメならしょうがないけど、とにかく泣き寝入りが嫌だった。

それに、この経験は世の中に発信した方がいいって、被害を受けた直後からずっと感じていました。だから裁判を続けることで発信力を上げる、絶対に何かの形にしてやるぞ、という気持ちもあって続けられました。

−−当時、DV被害後の選択肢についての情報はありましたか?

二星星さん: 11年前は、今ほど情報もなかったし、殴られたその日に病院や警察に行っても、誰も何も支援の情報を教えてくれませんでした。

そもそも何も知らない状態でずっといたんです。だからこそ、正しい方法を届けることがすごく大事だと思うようになりました。

500軒の書店周り。「なんでもいいからDV被害の経験をかたちにしたい」で始まった漫画出版

−−その経験もあって、漫画「ダメ彼を訴えます!! ~殴られたので裁判しました~」を出版されたんですね。

二星星さん: 裁判の途中に「何かこの経験をかたちにしたい」と思っていました。もともと絵が好きだったので漫画かエッセイかなとぼんやり考え、でも漫画はほとんど読んだことがない状態でなんでもいいから「持ち込みができるところを…」と検索して、一番上に出てきたところに電話したんです。それが某大手出版社の漫画雑誌で…。

−− かなり大手の漫画出版社ですね…!

二星星さん: ですよね。しかも、その漫画雑誌のことをよくわかってないまま、自由帳に描いた4コマ漫画を持って行ってしまって。

現れた編集者の方に「君は何しに来たんだ?ここは漫画の部署だけどわかっているのか?」って言われて、「いま、知りました」となりまして。

−− …。その現場に居合わせたくないです(笑)

二星星さん:ですよね。でも裁判のことを話して、とにかく形にしたいという話をしたら担当の方が興味を持ってくださって「漫画の書き方を教えます」と。

そこから1年半、その出版社の方から基礎を教えてもらいました。

ただ内容的にその出版社では難しいから、エッセイに強い会社に持ち込んでみるといいとアドバイスを受け、その方から卒業して別の出版社に持ち込んだら1ヶ月後に「出版しましょう」と。半年で160ページを書き上げて出版しました。

−− 出版社の編集の方が直接教えてくれたこともですし、すぐに出版というのもすごいですね。出版後はどのような活動を?

二星星さん: 出版時は認知度も低いので、自分で手作りの色紙を持って東京、神奈川、関西、鳥取、島根あたりまで、本屋さんを500軒以上を歩いて回りました。ラジオ局にメールを送ったり、電話をしたりして出演させてもらって。木村拓哉さんのラジオでも取り上げていただいて。

その結果、少しづつ置いてくれる書店が増え、漫画を読んで「裁判をしようと思いました」「やり方を教えてほしい」という問い合わせが少しずつ来るようにもなり、書いてよかったと感じました。

「ないなら、やるしかない」日本一DV支援が少ない県・山梨へ

−− そこからどういう経緯で山梨でシェアハウスをすることに?

二星星さん: コロナ禍になって営業活動ができなかったので、その間に法律の勉強や心理カウンセラーの資格の勉強をしていました。

当時は東京に住んでいたんですど、たまたまラジオで聞いた山梨の移住体験ツアーに当選して、遊びのつもりで行ったんです。

いざ行ってみたら、ツアー参加者が10人のうち女性が4人だったんですが、3人がDV被害者でした。私が自己紹介したら「実は私も」とそっと打ち明けてくれて。

そこから気になって調べたら、山梨県はDVや女性、子どもへの支援が日本で最も少ない県のひとつで、空き家も日本一多かった。「この空き家と支援を組み合わせられないか」と思いながら東京に帰りました。

−−そこから準備を?

二星星さん: まずは毎月富士吉田に通って市役所の人に話を聞いたり、ツアーで出会った人たちとつながりを広げながら地域に友人をつくっていきました。

そんな中、空き家バンクで、寮として使われていた物件を見つけて、移住した日にシェアハウスをオープンしました。

SNSでシェアハウスのことを知ってくださる方が多いので、開始して2ヶ月で入居者がきてくれました。山梨の方だけでなく、日本全国からお越しになります。

「支援は優しさではできない」自立を見据えた関わり方

−− シェアハウスでの支援において、大切にしていることを教えてください。

二星星さん: 入居者の方には、入居前の面談で「家を出るとはどういうことか、これからどれだけ大変なことが待っているかわかっていますか」と説明をします。

家を出るということは、今まで夫のせいにできていたすべての責任が、これからはあなたの責任になります、と。

DV支援はボランティアではありません。入居者の方々が頑張ることを支える仕事です。私が代わりに何かをしてあげることではありません。

そう伝えた上で、それでも頑張りますという人が入居されています。

−− 厳しいと感じる人も多そうですよね。でも、それが自立への近道だと。

二星星さん: はい、優しい言葉をかけるだけでは本当の意味での支援にならないと思っています。

もちろん理由があって家を出てきているのですが、家を出てから何をするのか、役所への手続き、家庭裁判所への申し込み、ハローワークで仕事探し、市営住宅の申込み。生活をするために、すべきことはたくさんあります。

最初に全部提示して「あとはあなたがどうするかだよ」と伝えます。

基本的には、彼女たちが自分ですることです。ただ、きちんと活動しているかはチェックしています、さぼっていると一言声をかけますし、みんなに怖がられていると思いますよ(笑)

−− シェアハウスから出ていくことが一つのゴール。そのために自立する力をつける必要もある。シェアハウスの中にエステサロンもありますよね?

二星星さん: はい。シェアハウスをする際に、支援はボランティアではないので事業にしていかないと持続できないと思っていました。

エステサロンにしたのは、私自身がDVを受けた際に顔に大きなあざのようなシミができて。

身も心もボロボロだったんですが、エスティシャンの方がアザを直してくれた。見た目だけじゃなくて、心も良くなった気がして。

それで、エスティシャンの方に弟子入りして技術を学んで、シェアハウスの中にエステサロンを開業しました。入居している方たちが手に職をつけるために学びたいという方がいれば、教えていけたらとも思っています。

性暴力に気づかない。「自分の体の知識がない」ことの深刻さ

−− シェアハウスに入居される方と関わる中で、性や体の知識の重要性を感じますか?

二星星さん: 知識が足りていないと痛感します。子どもが4、5人いる方が相談にお越しになることもありますが、それは性暴力を受けているということに本人が気づいていないことも多いです。身体的暴力には気づくのに、性暴力には気づかない。

それは「夫の性的な要求を受けることが妻の役目」「子どもを産むことが女性の幸せ」と思い込んでいることも多いからです。

自分の体がどういう権利を持っているか、ノーと言っていいんだということを、根本から知らないんです。

−−性教育を受けていないことが、DV被害の温床にもなっているということですね。

二星星さん: そうです。10代や20代の若い子が、妊娠していることに気づかず産まれるまで病院に行かなかったという話もあります。

そういう子たちの多くが、親からのネグレクトや虐待を受けていて、生理周期のことも誰にも教わっていない。体の知識がゼロだから、何が起きているか気づけない。

自分の体のことを知っていれば「これはおかしい」「ノーと言っていい」とわかる。それを若いうちから届けることが本当に大切だと思います。

−−そのためにも教育体制の構築や情報共有における行政の働きかけも大切ですね。

二星星さん:本当にそうです。地域によっては、「女の子は専門学校でいい」「どうせ結婚するから学ばなくていいよ」と今も言われることがあります。

結果的に、正しい知識や権利を知っている子たちほど、自身の権利を守るために、どんどんその土地を出ていきます。なぜ、若い女性が多く出ていくのか。県や自治体もちゃんと理解する必要があります。

 加害者プログラム、NPO化「社会構造を変えるための入口をつくる」

−−今後の活動について教えてください。

二星星さん: 加害者が減らないと被害者は減らないので、加害者の更生プログラムをするための研修を受けています。

日本のDV防止法は「被害者が逃げる」ための法律で、加害者への対処がされていない。国が動かないから民間でやるしかないと思っています。

一方で、シェアハウスやエステサロンでやっていることは末端の支援です。本来は構造を変えていかないといけない。

社会構造を変えていくための最初の部分は、知識を届け、対話できる社会をつくることです。そこに向けて動き続けていきたいと思っています。

学校で1人1個「ばあばるば」が配られたらいい

−− 私たちは性教育パペット「ばあばるば」を作っています。このような取り組みについてはどう思いますか?


二星星さん: ばあばるばが、学校や保育園で1人に、教科書と一緒に教材として1個配られるような社会になってほしいです。それが難しければ、クラス、学校に1個でも。

ばあばるばを活用して出産や性行為についても学ぶことができます。体のことは、知識として、小学生から知っておくことも大切です。

あとは、養護学校ですね。どうしても障害がある女の子は被害に遭いやすいので、わかりやすい教材も必要だと思います。

みんながこれ(外陰部)をタブー視せず、当たり前で、恥ずかしくないものとして見られる社会に。

一緒に変えていこうね!

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<お話を伺った人>

二星星(にぼしぼし) 山梨県富士吉田市在住。DV被害当事者として裁判を起こし、その経験を綴った漫画を出版。2021年、日本でDV・女性支援が最も乏しい県のひとつである山梨県富士吉田市に移住し、DV被害者支援シェアハウス「星の虹」を開設。シェアハウス内でエステサロンも運営し、入居者の就業支援と持続可能な支援体制づくりに取り組む。現在はNPO法人化と加害者更生プログラムの立ち上げを準備中。

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本記事はランドリーボックスが制作している性教育パペット「Ba-Vulva(ばあばるば)」の公式サイトの記事を一部編集の上、転載しています。

https://laundrybox.co.jp/Ba-Vulva/NiboshiboshiSan_Interview

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