Ba-Vulva(ばあばるば)は、外陰部の構造を楽しく正しく理解し対話するためのパペットです。
情報を知るだけでなく、対話をすることで、大切な人たちと健やかな日々を過ごしてほしいという想いがあり、セクシュアルウェルネス、ウェルビーイングな社会に寄与したいと思っています。
現在、国内外には様々なカタチでSRHR(性と生殖における健康と権利)、セクシュアルウェルネス業界で活動をしている人たちがいます。
Ba-Vulvaではそのような方々と連携を図りながら、個々人が自身のカラダについて理解し、そして、楽しく、心地よく過ごすためのサポートをしていきたいと思っています。
そこで<Ba-Vulva Friend>と題して国内外で国内外のセクソロジストや性教育関係者など、セクシュアルウェルネス業界で活躍する方々にインタビューをしていきます。
今回は「日常の」セックス動画を投稿できるプラットフォーム「MakeLoveNotPorn」を手がけるCindy Gallop(シンディ・ギャロップ)さん。
ランドリーボックスでは2022年に同氏の単独インタビューを実施しました。シンディさんのその後の活動や、Ba-Vulvaへの期待感について聞きました。
・セックスに正解なんてない。MakeLoveNotPorn代表シンディ・ギャロップが語るソーシャルセックス
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Make Love Not Pornがセックスレス解消に。寄せられる喜びの声
Misa:インタビューの時間を取っていただきありがとうございます。2022年にインタビュー記事を公開しましたが、前回お会いしてからは約6年ほど経ちました。Make Love Not Pornの近況について伺いたいです。COVID以降、何か良いニュースはありましたか?
Cindy:そうですね、まず、Make Love Not Pornでは、引き続き性にまつわるポジティブなビジネスを構築するための課題に直面していますが、良いニュースは「私たちがまだこの業界にいる」ということです。
というのも、多くのスタートアップは様々な困難に直面します。Make Love Not Pornも多くの障壁に直面してきました。それでも続けられているというのは、とても意味があることです。
その他に、良いお知らせが2つあります。まず1つ目は、Make Love Not Pornは、他にはない独自の力を持っているということ。私たちには、人々の「性」に対する態度や行動をより良くする力があります。それは、他にできない形での変革です。
この6年間で、多くの若い人たちから「ポルノと現実のセックスの違いを教えてくれた」という声をいただいています。なので、Z世代の人には受け入れられていると感じますね。
そして、私たちは多くの結婚生活やカップルの関係を救っているんです。「あなたたちが私たちの結婚生活を救ってくれました」といったメッセージをたくさんいただきます。
例えば、ある女性からは、「夫と数カ月に1回しかセックスをしていなかったけど、Make Love Not Pornを見つけてから、一カ月で8回もセックスをしました」と言われました。
でも大事なのは、彼女が「ただセックスの回数が増えただけじゃなくて、今まで以上に夫との愛を感じている」と言ってくれたこと。彼女は最後に「私たちの結婚を救ってくれて本当にありがとう」とメールをくれました。
同じような声がたくさん寄せられています。これは、少子化が進んでいる日本でも必要なことだと思います。
安全かつ信頼できる場所で「性」を共有することが、トラウマを癒す手助けになる
Cindy:それから、ここ6年間で特に興味深いのは、親たちが10代や20代の子どもたちのためにMake Love Not Pornのサブスクリプションを購入していることです。
親たちは「子どもたちに幸せで健康的なセックスの関係を見せたい」と話しています。「うちの子どもはポルノを見ているけど、それは見せたくない。ポルノではなく、愛の作り方を学んでほしい」という親たちが増えてきました。
私がMake Love Not Pornを立ち上げた理由となる問題は、ますます大きくなっています。子どもたちがますます幼い年齢でポルノにアクセスし、トラウマを抱え、「これがセックスだ」と思い込んでしまうんです。
さらに面白いのは、Make Love Not Pornのような新しいテクノロジーを作ると、創業者が当初考えていなかった使い方が生まれるということです。
長年、私たちはレイプ、性的暴行、性的虐待の被害者、女性、男性、トランスジェンダー、ノンバイナリーの方々から「Make Love Not Pornは私たちが自分の身体を取り戻す手助けをしてくれた」との声を聞いてきました。
Misa:トラウマを乗り越える手助けをしているということでしょうか?
Cindy:そうなんです。ポルノがトリガーとなる場合、現実のセックスビデオを見ることで、安心感を得ることができるんです。
私たちの投稿者であるMake Love Not Pornスターたちからも、「完全に安全で、信頼できる場所で自分のセクシュアリティをシェアすることが、性的なトラウマを癒す手助けになった」との声をいただいています。
私がこのMLNPをはじめたときは、こういった使い方があるとは全く思っていませんでした。これは本当に感謝すべきことです。
これが1つ目の良いニュースで、私たちが性に関することへの態度や行動を変える力を持ち続けているということです。
これはとても重要で、私たちMake Love Not Pornの最終的なミッションは、「レイプカルチャー」を世界中で終わらせることなんです。大きなビジョンのように聞こえるかもしれませんが、私たちは11年間にわたり、ミクロレベルでその効果を実証してきました。
Make Love Not Pornは、インターネットのどこにもないシンプルな方法で「レイプカルチャー」を終わらせようとしています。それは「現実の世界での、合意とコミュニケーションのある素晴らしいセックス」を見せることです。
私たちのソーシャルセックスビデオは、健全な性的価値観と行動をモデル化しています。そして何より、ポルノや大衆文化で見られるものよりも、ずっと魅力的に見せています。ある男性が「この動画を見て、ベッドルームでも人生でもより良い人間になりたいと思った」とコメントしてくれました。
こういう変化を起こすことができるんです。
Misa:素晴らしいですね。2つ目にはどんなお知らせがありますか?
0歳から年齢別に学べる今までにない性教育プラットフォームMake Love Not Porn Academyの立ち上げ
Cindy:2つ目のいいニュースは、ついに10年越しの構想だったプロダクトの開発に取り掛かれたことです。プロダクト名は「Make Love Not Porn Academy」です。私のビジョンは、makelovenotporn.academyにまとめてあるのでぜひ見てみてください。
これは「性教育版カーンアカデミー」とも言えるもので、カーンアカデミーが世界中の子どもたちにあらゆるトピックを教えるのと同じように、「Make Love Not Porn Academy」は、性教育をカバーします。
Edtech(教育テクノロジー)は今、爆発的に拡大している分野ですが、セクシュアルウェルネスの領域ではまだまだ未開拓なんです。
このプロダクトを考えた理由は、Make Love Not Pornが始まった当初から、世界中の親や教師、特に日本からも多くの要望があったからです。
「Make Love Not Pornの活動は素晴らしいと思いますが、18歳以上が対象ですよね。0歳から18歳以上までを対象とした性教育を作ってもらえませんか?」という声を以前からいただいていました。
10年間資金を集めようとしてきたものの、なかなか投資家を見つけることができずに苦労していたんです。
ですが、今年初めに私たちが初めて株式のクラウドファンディングを開始できたことで、ついにAdademyの構築が可能になりました。
これまで、どのクラウドファンディングプラットフォームも私たちを受け入れてくれませんでした。「Make Love Not Porn は出稿できません」と言われてきたのです。なぜなら、彼らはレイプカルチャーを終わらせることをミッションとするビジネスを受け入れないからです。
そんな中、今年キャンペーンを開始できた理由は、ジャミーラ・ジャミルという俳優のおかげです。
彼女はアメリカのテレビ番組『The Good Place』や『She-Hulk』に出演しており、イギリス系南アジアの俳優で、数百万人のInstagramフォロワーを持っています。
彼女はボディポジティブやセックスポジティブについて声を上げており、私のポッドキャストでのインタビューでもMake Love Not Pornの大ファンであることを公言してくれました。
彼女はポルノが自分の自尊心や人間関係に与えた影響についてオープンに語り、私たちのリード投資家として株式クラウドファンディングキャンペーンをはじめることを提案してくれたんです。そして、私たちをWeFunderというプラットフォームに紹介してくれました。
彼女が私たちを保証してくれたおかげで、今年の初めに100万ドルを目標にキャンペーンを開始することができたんです!
現時点で360,000ドルを調達しており、目標の3分の1まで到達しています。このインタビューの後でリンクをお送りするので、ぜひランドリーボックスの読者にも広めていただければ嬉しいです。
Misa:最低投資額は100ドルでいいんですね。
Cindy:はい。非常に少額の投資家として自由に投資することができるんです。私たちはまだ目標の3分の1にしか到達していませんが、これまでに調達した資金はMake Love Not Porn Academyの設計と構築に役立っています。
AdademyはMake Love Not Pornと同じ原則に基づいて構築されます。つまり、ユーザーが生成し、クラウドソースされ、100%人間によってキュレーションされます。そして、収益分配モデルで運営する予定です。
私は決して新しいことを発明しているわけではありません。
世界最高の性教育コンテンツを集めたグローバルなハブを構築している最中なので、世界中の性教育者にこのプラットフォームを開放する予定です。日本の性教育者にも、ぜひこの話を広めていただければと思っています。
例えば、世界中の性教育者にコースワーク、ビデオ、書籍、コミック、資料など、あらゆるコンテンツを共有してもらうことを期待しています。
「教育者」という用語を広く解釈しており、性健康やウェルネスの専門家、セラピスト、医療専門家、作家、ポッドキャスターも含みます。
そしてとても重要なのは、私たちがすべてのコンテンツを人間の目でキュレーションすることです。Make Love Not Pornでは「インターネット上に人間のキュレーションレイヤーを配置する」という独自のモデルがあります。
Acadamyでは、すべての教育者とコンテンツをキュレーターがレビューすることによって安全性を確認できるので、保護者や教師は安心できますよね。その後、すべてのコンテンツは年齢に適した形で公開されます。
例えば、もし、6歳の子どもが性行為についてなど性にまつわる質問をしたときに親がどう答えればいいか悩む場合、その年齢に適したツールとコンテンツを提供することができます。
14歳のクラスを持つ教師であれば、その年齢に適した教育資料を利用できます。
そして大人はすべてのコンテンツにアクセスできます。なぜなら、大人も若者と同様に性にまつわる情報を知りたいと切望しているからです。Academyの重要な点は、保護者や教師の監視なしに子どもや若者がアクセスできるように設計されていることです。
それがなぜ重要かというと、数年前、友人の8歳の息子が家族のコンピューターで「子ども向けのセックス」という言葉を検索したことがありました。彼女は驚きつつも、なぜその検索をしたのかを冷静に息子に聞いたそうです。
このエピソードは、可愛らしいと同時に恐ろしいものでした。彼女の息子は、ただわかりやすい形でセックスについて知りたかったのです。
無邪気に「子ども向けのセックス」と検索したときに出てきたものは、想像に難くないですよね。彼女の息子は、その検索結果を見てトラウマを負いました。
Academyは、8歳の子どもが自分の年齢を入力すると、その年齢に適した性教育コンテンツだけが表示される仕組みになる予定です。
この中には無料のコンテンツもありますが、性教育者が書籍、製品、コースをAcademy上で販売することもでき、収益の10%を手数料として受け取り、90%を性教育者に還元します。
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後編に続く
/magazine/cindygallop_interiew2/
<プロフィール>
Cindy Gallop(シンディ・ギャロップ)
広告業界で成功を収めたビジネスリーダーであり、社会改革家としても知られている。2003年「アドバタイジング・ウーマン・オブ・ニューヨーク」に選ばれ、「ニューヨークの女王」と称される2009年に「MakeLoveNotPorn」を立ち上げ、性教育と多様性に関する対話を促進。社会変革に尽力している。
本記事はランドリーボックスが制作している性教育パペット「Ba-Vulva(ばあばるば)」の公式サイトの記事を一部編集の上、転載しています。