ランドリーボックスではこれまで、主に女性の体と心の健康をテーマに、生理、婦人科疾患、更年期、性教育、セクシャルウェルネスなどの情報を発信してきました。
セクシャルウェルネス(性の健康)においては、性別を問わず体のことを知る「相互理解」が重要であると考えています。私たちとともに学んでいきましょう。
今回は、「プライベートケアクリニック東京」東京院 院長で泌尿器科医の小堀善友(こぼりよしとも)先生に「勃起と射精」の仕組みについて教えてもらいました。
勃起の仕組み
勃起は「陰茎に血が集まった状態」という単純な現象に思えますが、そのメカニズムは意外と複雑です。 神経や血管がきちんと連動して働くことが、勃起をするためには必要となります。
男性が性的刺激を受けると、脳から脊髄を通って刺激が副交感神経を通って伝達され、陰茎にて一酸化窒素(NO)が放出されます。
それがシグナルとなり、陰茎海綿体に血液が流入し、勃起を起こします。
勃起が満足にできず、セックスを完遂することができない状態のことを「勃起障害(ED)」といいます。勃起障害は、加齢に伴って増加することが判明しており、日本においては約1000万人がED患者であると推測されています。
EDの原因は、大きく分けて「心因性ED」と「器質性ED」があります。クリニックで治療法を提案しています。
射精の仕組み
射精は神経によって男性生殖器(精嚢、前立腺、精巣上体、精管)が収縮され、精液が尿道に押し出されることによって起こります。
その際、膀胱頚部が収縮することにより、精液が膀胱に逆流するのを防ぎます。
さらに、尿道周辺の筋肉が律動的に収縮すると、精液はさらに先に送られて陰茎外に放出されます。
射精までの3つのプロセス
射精は次の3つのプロセスを経て起こります。
1)Emission:
精子、精嚢の分泌液、前立腺液が前立腺内へ送られる
↓
2)膀胱頸部の閉鎖:
膀胱側に精液が逆流しないように、膀胱頸部が閉じる
↓
3)精液が尿道へ押し出される:
筋肉がリズミカルに動いて精液が尿道側へ押し出され、体外へでる(狭い意味での射精)
これらのメカニズムが複雑に絡まって射精が起きています。
このプロセスのうちどこかに問題が起これば「射精障害」となってしまいます。
クリニックでは、どこのプロセスに障害があるかを診断し、その結果により治療方針を示します。
たとえば、糖尿病などの基礎疾患を持っている場合、上のプロセスの1と2が障害になることがあります。この場合の多くは「三環系抗うつ薬」を使って治療ができます。
そのほか、さまざまな原因が考えられ、クリニックで治療法を提案しています。
次回からは、勃起障害と射精障害(早漏・遅漏)の、それぞれの原因と治療法について解説します。
<監修>
小堀善友(こぼりよしとも)
泌尿器科医、生殖医療専門医、性機能学会専門医
プライベートケアクリニック東京東京院院長。男性不妊症・射精障害など、男性の性の健康に関する診療を担当。1975年生まれ。金沢大学医学部卒業。主な著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)『泌尿器科医が教える正しいマスターベーション』(インプレス)などがある。