子どもを産み、育てることは多くの人にとって複雑なことですが、LGBTQの人々にとっては、さらに困難なことです。
同性婚が認められていない日本では、まだまだ子どもを持つことには課題が多くありますが、海外のフェムテック企業は、さまざまな角度からLGBTQカップルやファミリーを支援しています。今回はその取り組みをご紹介します。
フェムテックとは?
フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、女性の健康課題である「生理」「更年期」「婦人科系疾患」「不妊・妊よう性」「出産・育児」「セクシャルウェルネス」などを解決するイノベーションです。
2025年ごろ市場規模は約5兆円と言われており、近年は日本発のサービスも増えてきています。
今回紹介するものは、ほとんどが日本にはまだ無いサービスばかりですが、すでにこの世に存在していることから、今後、日本にも変化を促す可能性もゼロではありません。
2015年にアメリカ最高裁で同性婚が認められて以降、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた世代)を中心に、77%がすでに子どもを持つ親や今後子どもを持つことを考えていて、欧米を中心に多様な家族の在り方への要望が高まっています。
元祖フェムテックアプリ「Clue」
フェムテックという概念は、ベルリン発の月経や排卵の周期管理アプリClueのCEOであるIda Tin氏によって作られました。
Clueは、サービスを開始した初期から、ピンクや花柄などスレレオタイプなデザインにせず、トランス男性も考慮してデザインしており、LGBTQの健康サポートにも力を入れています。
App creators need to rethink their design approach “for women”
また、チーフメディカルオフィサー(Chief Medical Officer、最高医学責任者)のLynae Brayboy博士は、今後さらに生理や卵巣のある人、誰もが利用できるようにしていくとインタビューで答えています。
LGBTQの人たちが健康管理で取り残されないよう、開発も人種的、思考プロセスや背景、出身地においても、多様性に富んだチームで取り組んでいるそうです。
手軽なキットを使って在宅で不妊検査できる「Modern Fertility」
自分で指先の血液を採取して在宅で不妊検査ができるキットを提供しているModern Fertilityは、誰もが子どもを持つための検査にアクセスできるようLGBTQファミリーの家族計画を支援しています。
Modern Fertilityの2019年度のLGBTQの人々の妊活についての意識調査では、従来の医療機関では診察を受けにくいと答える人が多いことから、オンラインカウンセリング、ホームテストによる包括的なサービスを提供しています。
Modern State of LGBTQ+ Fertility 2019
LGBTQカップルの妊活支援「Natalist」
創業者のHalle Tecco氏自身が4年以上不妊治療をした経験から立ち上げたNatalistは、妊活を始める人々のためのサポートキットを提供。
2019年に500万ドル(約5億3,000万円)の資金調達をした際の投資家には3名のLGBTQの親が含まれており、LGBTQカップル向けの妊活や子育てのサポートも準備中です。
家族計画をサポートするクリニック「Kindbody」
移動式の妊よう性診断バスやクリニック、卵子凍結や不妊治療を福利厚生サービスとして提供するKindbodyは、LGBTQファミリーのために、女性のカップル(レズビアン、トランス)の2人の卵子の妊よう性検査と、家族計画のカウンセリングも展開しています。
レズビアンとトランスカップル向けのサービスを提供する「Future Family」
在宅での不妊検査キットや廉価な卵子凍結サービスのフェムテックスタートアップFuture Familiyは、レズビアンとトランスカップル向けに、1人の女性の卵子をドナーの精子によって受精させ、パートナーの女性の子宮に移植される相互体外受精が可能なメンバーシッププランを開始。
24時間年中無休のコーチングで、通常より更に困難なレズビアンとトランスカップルの不妊治療をサポートしています。
A Lesbian Couple Relied on Reciprocal IVF to Start Their Family, and Their Story Is Beautiful
ママ友をオンラインで見つけられる「Peanut」
妊活中や子育て中のママが、自分と志向の合う友達づくりやコミュニティに参加できるPeanutは、ストレート、ゲイ、バイセクシュアル、クィア、トランスの親など、多様性あるカテゴリでサポートし合えるサービスを提供。
コミュニティに参加して、不妊治療の悩みを共有することが可能となっています。
不妊治療のプロセスは、ヘテロセクシャル(異性愛者)カップルとLGBTQカップルで大きな違いはありませんが、異なるところもあります。
フェムテックは、生物学的女性の健康の課題を解決するだけでなく、多様な性や家族の在り方も豊かにする可能性がたくさんあります。
子どもを欲しいと思ったLGBTQカップルがさまざまな選択肢を選べて、子育てサポートができるサービスが日本でも早くできて欲しいと思います。