女性の健康に焦点を当てたテクノロジー製品「フェムテック」。家庭や職場など、日常生活で生じる女性の課題を、テクノロジーの力でサポートする商品やサービスのことで、近年広がりを見せている分野です。

2020年1月、アメリカ・ラスベガスで開催された「CES2020」でも、フェムテック関連の出展が数多く見られました。

CESは、世界最大のテックイベント。GoogleやAmazonなどの大手企業や、SONYやPanasonicなどの日本企業、起業して間もないスタートアップまで、世界各国から6000社が集い、新製品の発表や展示を行います。

筆者がCES2020で気になった、フェムテック製品をはじめとするいくつかのプロダクトをご紹介します。

働くママたちに大人気!スマートフォンと連携する搾乳機

まずは、IoT &ウェアラブル搾乳機の先駆け「Willow Pump」です。

Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box

この製品が発表されたのは、3年前の2017年。当時、とても画期的な商品として脚光を浴び、その年のCESイノベーションアワードを受賞しています。

Willow Pumpは、スマートフォンと連動する搾乳機。ブラジャーの内側に装着することで、自動的に搾乳ができ、アプリを使って母乳の状態をモニタリングできるのが特徴。

また、搾乳した母乳は、そのままミルクパックとして保管できて、冷凍も可能ということで、発売するなり、米国を中心に2万人のユーザーを獲得しました。

その後もユーザーの声を聴きながら改良を重ね、使い捨てのミルクパックだけでなく、再利用可能なパックをオプションとして販売。今回、さらなる改良版として、第三世代が発表されました。

Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box

このバージョンでは、サイズがコンパクトになり、搾乳率が20%アップ。また、痛みを感じやすい人のために、さらに優しい吸引レベルが選べるようになりました。ケーブルが不要な充電式で、簡単に扱えるところは変わりません。

また、吸引時の音も静かになり、フィット感も向上したため、Willow Pumpをつけたまま、マラソンをしたり、ヨガをすることも可能だとか。価格は499.99ドル(日本円でおよそ53,200 円)で、この春に発売予定です。

ブースにはWillow Pumpを装着して、搾乳しながらマラソンを走り切った女性の写真が(Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box)

実は筆者は、発表当時にもCESで取材をしたのですが、その時、とても新鮮に感じたことがあります。私がブースで”何故、IoT搾乳機を開発するに至ったのか”を聞くと、スタッフの方がこう答えてくれました。

「自宅で仕事をする際、テレビカンファレンスがあるでしょう? 授乳期間であっても、出席はしなければなりませんよね。でも、途中で母乳が溢れてしまうのは困るし、会議を中断するのも嫌。その解決策として、IoT搾乳機を開発しました。これなら、ブラジャーみたいにつけっぱなしで会議ができますよ」

3年前から、彼らの中では、授乳中の女性がリモートワークで働くという状況が想定されており、その際に起こる課題を解決するため商品として開発した、という事でした。

日本で同じような着眼点を持てる人が、どれくらいいるだろうか……そして、これが当たり前になるまでに、どれほどの時間がかかるだろうかと、少し思い悩んでしまった瞬間でした。

既に多くのユーザーを獲得しているWillow Pump、残念ながら現時点では日本未上陸。使い勝手が良くなっただけに、早く日本でも買えるようになるといいですね。

このほか会場では、同じくウェアラブル搾乳機を展開する「Elvie」と、母乳の保存サービス「Milk Stork」のコラボブースが注目を集めていました。女性の記者や来場者が利用できるとのこと。

Elvieが今回のCESのために制作したプロモーション動画もユニークです。

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「ベビーテック」から家族のための「ファミリーテック」へ

続いては育児関連グッズです。このジャンルは、ここ数年「ベビーテック」と呼ばれていますが、今年のCESでは、大きなカテゴリーとして「ファミリーテック」という名称が掲示されるようになりました。

とくに何か説明がされたわけではありませんが、育児に関わるのは女性に限ったことではなく、”家族全員がすべきこと”という考え方の表れのように感じました。

今年の話題は、業界最大手P&Gが、ベビーテックの分野に本格的に参入したということ。P&Gは、おなじみのおむつブランド、パンパースから、「Lumi」という商品群を発表しました。

Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box
Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box

Lumiは、おむつの中央部分に取り付けるセンサー+ベビーベッドに取り付けるHDカメラモニター+スマートフォンアプリの3つがセットになったベビー・ケアシステムです。

パンパースには、赤ちゃんの尿の量に応じて、ラインの色が変わる仕組みが導入されていますが、それを活用し、センサーでおむつ替えのタイミングを読み取り、アプリに通知。いち早く気づくことで、赤ちゃんの不快感をすぐに解消できるというもの。

赤ちゃんが眠ったら、ベビーベッドに備え付けたカメラで、どこからでも、我が子の様子を、見守ることができるシステムです。

室温や湿度も管理できるため、両親も、安心して家事に取り組めます。ベビーシッターを依頼しているときでも、見守りモニターとして遠隔で様子を見ることができます。

続いては、4moms社のスマートベビーベッド、sleep bassinet。

Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box
Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box

縦軸・横軸の両方に動く、3Dの電動バウンサーで、自然な揺れを起こし、赤ちゃんを眠りに誘います。ベッドとバウンサー、そして見守りカメラという組み合わせはトレンドになっており、さまざまな会社の商品が展示されていました。

適温のミルクが自動で作れる「Baby Breeza Formula」

こちらは、既に実用品として、Amazonなどで購入できるミルクメーカー「Baby Breeza Formula」。

Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box

上部に粉ミルクを入れると、希望通りの温度のミルクがコーヒーメーカーのように抽出されるというものですが、今回は新型を発表。

スマートフォンと連携し、アプリで細かい操作ができるWi-Fi版が登場しました。適温になるとスマートフォンに通知してくれるので、ほかの家事の途中でも、ミルクをスムーズに用意できるのが嬉しいポイントです。

ウェルビーイングの視点から、SexTechも充実

最後はちょっと違うジャンルのフェムテックを。今年は精神的な幸福も含めたウェルビーイングの観点から、SexTech、つまり大人向けトイを扱うブースが大きく出展していたのが印象的でした。

セックストイを展開するCRAVEのブース(Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box)

それも、ファミリーテック、ベビーテックなどが並ぶエリアに、さりげなく混ざっており、一見カフェのようにお洒落な雰囲気。本体はアクセサリーのような外観で、アプリと連携するものも数多く用意されていました。

CRAVEのバイブはおしゃれなネックレスタイプ (Photo by Yuzuki Hiromi / Laundry Box)

今後本格的に一般家庭への普及が進みそうな、フェムテック&ファミリーテック。残念ながら日本には未上陸なものばかりですが、P&Gが参入してきたことで、大きな変化が訪れるかもしれません。

今後さらなるテクノロジーの進歩によって、女性とその家族の日常が、より豊かになることを期待したいです。

写真・文:弓月ひろみ

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