「性的同意」が重要なことはわかっていても、「初めてのセックスのときに確認すればいい」「長い付き合いの夫婦には必要ない」と思っていませんか?
夫婦間でも、毎回したいタイミングがぴったりと合うとは限らないので、性的同意は必要です。
ただ、身近な存在である夫婦間のコミュニケーションで、今はしたくないことをどう伝えればいいのでしょうか?
性的同意の具体例を考える「HOW TO 性的同意」。今回はケース②を潮英子先生に聞きました。
お話を聞いた方
公認心理師
潮英子
大学卒業後、商社勤務や台湾での日本語教師、航空会社勤務を経て、お茶の水女子大学大学院人間で夫婦問題を研究。自らの国際結婚・離婚、転職経験を活かし、セクシュアリティ、夫婦関係、女性のキャリア等の相談活動を行っている。過去20年間に携わった相談は2万件以上。著書「女性カウンセラーが教える50代からのhow to SEX」(光文社)等。
*4つのケースは順次公開予定です
ケース①:付き合いたてカップルのお泊まりデート
ケース②:産後の夫婦間のセックス
ケース③:彼女が「やめて〜」と言っている場合
ケース④:性に淡白な男性が、彼女から毎週求められる
ケース①:付き合いたてカップルのお泊まりデートを考えた際には、性的同意の問題点として下記の3つを挙げていました。
①男性が同意に気を遣っている対象は、職場、友人、第三者に限られる
②女性は「男性の同意をとる」意識が低い
③建前と本音は違う、とどこかで思っている
くわしくは、下記の記事で解説しています。
彼氏とお泊まりデートでセックスの雰囲気に。したくないときはどうやって伝えれば?【HOW TO性的同意Vol.1】
これらを踏まえて、本記事ではケース②を考えていきます。
産後のセックスに仕方なく応じている。どうすれば?
ケース②:産後の夫婦間のセックス
結婚して5年。子どもが生まれて私は子育て、夫は仕事に忙しい毎日。私は産後ということもあるのか、今はセックスはしたくない気持ちだけど、夫は毎週末に求めてきます。夫がしたがっているので、仕方なく応じることもあります。
夫婦間のセックスカウンセリングではこのパターンが一番多いです。「本当はしたくないが拒否したら夫の機嫌が悪くなり、それをフォローするほうがもっと大変なので、30分我慢したほうがマシ」と妻側はなかば諦めています。
このようなケースでは、妻が嫌々応じていることに男性が気づいていないわけではありません。妻のテンションが低くつらそうな表情を見れば義務感でしていることは当然わかります。それなのに、自分の欲求発散を優先させる自己中心的な習慣がついてしまっているのです。
そこでこういうケースでは夫の認識を変容させることが必要になります。夫婦間で話し合うと喧嘩になるから言いにくいという場合は、ぜひ夫にカウンセリングを受けていただきたいと思います。
基本的には、夫は頻繁にセックスがしたいくらい妻を愛しているのです。しかしつい自分の欲求を優先してしまい、「セックスは夫婦の務めだ」「以前の妻はあんなに性行為が好きだったのだし、そのうちまた性欲が湧いてくるだろう」などと自分に言い聞かせ、妻の抵抗に目を背けている状態になっています。
それがひとりよがりであることを、まずは自覚しなければなりません。
ひとりよがりの夫に伝えたい、3つのこと
カウンセリングでは夫に以下のような話をします。
①女性の心身の変化を理解する
産後はホルモンバランスが変化するため性欲が低下するもの。個人差はあるが時間の経過で復活することが多いので、今は性行為をお休みする時期だと理解してほしい。「昔は積極的だったのに」と過去と較べて不満を抱く男性が多いが、ライフステージによって性欲は変化します。今現在の妻の状態を思いやってあげましょう。
②妻がどんな気持ちで応じているか想像する
「妻は応じているときにどんな様子か」「我慢している様子なら、なぜ我慢しているのか」「妻はどんな気持ちでいるだろうか」「どうなったら妻を安心させることができるだろうか」と妻の立場で考えてもらうと、妻に負担をかけていたことを自覚し反省する気持ちが湧いてきます。
③夫自身の気持ちも尊重し、同意を求める方法を検討する
スキンシップしたいのは自然な欲求だし、それがすべて否定されるわけではありません。妻の体調によっては快く応じてくれるときもあると思います。大切なのは妻の同意を確認すること。
求めたときにいつも応じる妻の場合、遠慮していることもあります。「しようよ」と直接誘うよりも、お互いの合図を決めておく、または妻のほうから「今日はしていいよ」「ごめんね、来週でいい?」などと言ってもらうようにするなど、2人で意思を伝えやすい方法を決めておくことがおすすめです。
妻が夫に対して、上記を冷静に伝えられるのがベストですが、現実には難しいようです。だからこそカウンセラーのような第三者に頼るという選択肢もあります。
男性優位の価値観になっていないか
また、妻にセックスを強要する夫の特徴として、男性優位の価値観がある人が多いように思います。
「自分はこれだけ稼いでいる。生活に不自由はさせていない。だからたまのセックスくらい従ってくれてもいいだろう」
「仕事で疲れているんだから、ストレス解消としてセックスは必要だ」
「男は射精したら満足する単純な生き物。週1回させてくれれば済むんだから簡単なことでしょ?」
といった発言をしばしば聞きます。
その歪んだ認知を修正し、妻を尊重できる男性になってもらうのがカウンセリングの目標です。
今回は妻側のお悩み事例でしたが、夫婦間の性的同意に関しては当然、逆のパターンもあります。「夫婦間でも、毎回したいタイミングがぴったりと合うとは限らない」という認識をお互いに持つことが大切です。
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「わたしのカラダは誰のもの?」
私のカラダは私のものに違いないのに、自分を大切する気持ちが、パートナーや誰が決めたかもわからない社会の声にかき消されてしまうことがあります。
ランドリーボックスでは、「〜らしさ」といった、世の中の当たり前に囚われずに、自分の人生とカラダの自己決定ができる社会を目指し、本特集をお届けします。
自らのカラダとココロをしっかりと自分の手で抱きしめられるように。
そして、私たちと、私たちを取り巻く愛すべき人たちが健やかに過ごせるように。
本特集に際して、「性的同意」にまつわる実態を把握するためのアンケートを実施しています。
みなさんのご意見や体験談をお寄せいただけますと幸いです。アンケートへの回答はコチラから。