月経や妊活、セルフプレジャーなど、女性のあらゆるライフステージで生活の心地よさをサポートするフェムテック。スマホアプリと連動し、自宅にいながら健康状態を計測できるデバイスや多様なジェンダーに向けたプロダクトなど、世界中で進展をみせています。そんな進化し続けるフェムテックプロダクトを一挙に集めたFermata(フェルマータ)主催のイベント「Femtech Fes! 2021」が、10月22・23・24日に六本木アカデミーヒルズで開催されました。

「あなたのタブーがワクワクに変わる3日間」をテーマに、世界約30カ国から集まった150社以上のプロダクトが六本木に集結。「月経」「妊活・不妊」「更年期」「女性特有疾患」「妊娠・産後」「セクシャルウェルネス」「その他/メンタルヘルス」の7つのブースに分かれて、プロダクトが紹介されていました。
各分野の専門家が登壇するカンファレンスでは、実態や最新動向、おすすめアイテムを紹介しながら、生理やセルフプレジャー 、更年期との向き合い方などにアプローチ。リアルタイムで寄せられた聴講者の質問・感想を読み上げながら、ウェルネスに関する疑問や悩みのソリューションをみんなで探っていくような時間でした。

世界30カ国から150社を超えるフェムテックプロダクトが集結!
日本未上陸のプロダクトも、実際に手にとれる貴重な機会。気になったプロダクトをピックアップしてご紹介します。
乳房の健康状態を計測するウェアラブルなパッチ「iTBra」

香港発の「iTBra(アイティーブラ)」は、乳がんの早期発見を手助けするウェアラブルなプロダクトです。衣服の下にパッチを装着し、乳房組織の温度変化を計測。計測したデータはデバイスを通してCyrcadia社に送信され、数分以内に結果が送られてくるという仕組み。画像解析では見落とされてしまうがんの発見や、不要な生検の防止に期待できます。見た目だけではわからない乳房の健康を、手軽にモニタリングできるでしょう。
LGBTQ+向けに医療を提供するオンラインプラットホーム「Folx Health」

「Folx Health(フォークスヘルス)」は、LGBTQ+の方をターゲットにしたヘルスケアプラットホームです。医療現場で疎外されがtいなクィアコミュニティ向けにカスタマイズしたオンライン医療データベースを提供や、患者に合わせたホルモン療法、勃起不全治療、PReP、STI検査などのサービスに対応しています。あらゆるジェンダーへ、自身に合った医療情報へのアクセスを手助けするサービスです。
毎朝の体温チェックで妊娠しやすい日をお知らせ「Daysy」

妊娠や、月経サイクル、健康状態を管理する「Daysy(デイジー)」。毎朝起きてすぐにデバイスの細い方のキャップを外し、先端を舌に触れるように口に含んで体温を計測。妊娠しやすい・しにくい日、生理日の予測をライトで知らせてくれます。アプリにつなぐとすべての記録がチェックでき、かかりつけ医やパートナーなどに状態をシェアすることも可能です。
自宅で継続的に女性ホルモン値を計測「The Inne minicab」

「Inne minicab(イネ ミニラボ)」は、スマホアプリと連携して、唾液から女性ホルモン値を正確に計測するデバイスです。通常、ホルモンバランスを計測するために唾液検査を受けるとなると、採取した唾液をラボへ送り、結果が出るのに数日要します。イネ ミニラボであれば、煩わしい検査のステップを追うことなく、自宅にいながら継続的にモニタリング可能です。
呼気を分析して妊娠しやすい時期を特定「breathe ilo」

「breathe ilo(ブリーズアイロ)」は、呼吸で妊娠しやすい時期を通知するというもの。デバイスに息を吐いて、呼吸に含まれるCO2濃度を計測します。同期したアプリで排卵パターンや月経のサイクルを記録し、妊娠可能な時期を特定。
自宅で人工授精を行えるシリンジ「The Mosie Kit」

ポップなモチーフがひときわ目を惹く「The Mosie Kit(ザ モージーキット)」は、自宅にいながら人工授精を行えるキットです。子宮頸管に精液を注入する方法が採用されていて、子宮膣内に注入する方法と同じレベルの成功率であることが証明されています。2016年には、世界で初めてモージーキットで生まれた赤ちゃんを創設者が出産しました。
タンポンとパンティーライナーが一緒になった生理用品「Tampliner」

タンポンとパンティーライナーが一体となった、その名も「Tampliner(タンプライナー)」。一緒に使うことが多いタンポンとパンティーライナーがひとつになることで、廃棄物の削減に貢献します。オーガニックコットンを使用し、体だけでなく地球にも優しいプロダクトです。ビニールのアプリケーターが備わっていて、手の汚れを気にすることもありません。
カラフルな月経ディスク「MENSTRUAL DISC」

月経カップの進化版と言われる月経ディスク。SHE社による「MENSTRUAL DISC(月経ディスク)」は、眺めているだけでもハッピーになれるカラフルな月経ディスクです。月経カップは鐘のような形で、膣の中でしっかり開くようにある程度の硬さがありますが、月経ディスクは平たいお椀のような形をした柔らかなシリコンが特徴。12時間の連続着用を可能で、タンポン4本分の経血を受け止めます。
神経を刺激して生理痛を脳に伝える信号をブロック「Noha」

長年生理痛に悩まされていた創設者の実体験から生まれた、「Noha(ノハ)」。2つのパッチを下腹部に貼ってスイッチを押すと、生理痛に関連する神経を刺激し、脳に痛みの信号を伝達する能力を低下させるというメカニズムで、鎮痛剤やピルに依存しない新たな選択肢を提供します。コンパクトで、持ち運びも◎
少ない水で生理用品を簡単に洗濯「Looop Can」

「Looop Can(ループカン)」は、国を離れざるを得なかった難民女性が抱える「生理の貧困」を解消するために立ち上げられました。5年間洗って繰り返し使用できる竹素材のナプキンパット、洗濯用のコンテナ、重曹のセットで、500mlという少ない水できれいに洗濯できます。
難民女性は、経済的、宗教的な理由で使い捨てのナプキンやタンポンが使えなかったり、月経で汚れた衣類を洗濯するための移動で、性暴力を受ける脅威にさらされています。そういった状況下でループカンが使われることで、難民女性の衛生や健康といった基本的な人権を守るという使命を担っているのです。
健康状態をチェックできる生理用ナプキン「truelli」

「truelli(トゥルーリー)」は、経血やおりもののから健康状態をチェックできる生理用ナプキンです。アプリと連携してナプキン裏側のバーコードを読み取ると、ビタミン欠乏症、不妊症の可能性、性感テストなどを検知して、アプリ上ですぐに結果を知らせてくれます。
低用量ピルの飲み忘れをリマインド「Aavia」

決められた用法・用量を服用することで効果を発揮する低用量ピル。うっかり飲み忘れてしまった、なんて経験をしたことがある人もいるかもしれません。「Aavia(アービア)」にピルを設置すると、ケース内のセンサーと携帯アプリが連動。服用した時間を正確に記録し、飲み忘れてしまったときにリマインドが通知されます。
1日5分で尿もれを改善「Flyte」

1日5分の使用で骨盤底筋を鍛え、尿もれの改善に期待できる「Flyte(フライツ)」。医療用シリコンのアプリケーターを膣内に挿入して、筋肉を伸ばしたり、振動させて骨盤底筋に刺激を与えます。アメリカとノルウェーでの臨床試験を行ったところ、2〜12週間で効果が現れたそう。FDA(アメリカの承認機関)に承認されたデバイスで安全性も保証されています。
ふとしたときの尿もれに「Finess」

「Finess(フィネス)」は、くしゃみやあくび、運動時など、ふとした瞬間のお腹に力を入れたときの尿もれ(腹圧性尿失禁)を防ぐ製品です。尿道口を覆うように装着し、粘着性のハイフォロジェルが外に漏れ出ることをせき止めます。厚みのある素材で、衣類に染みてしまう不安も軽減してくれるでしょう。
中絶ケアを低コストで提供「Heyjane」

4人に1人の女性が中絶を経験すると言われているこの社会で、経済的な理由で中絶のアクセスが困難な人も。「Heyjane(ヘイジェイン)」は、オンラインで中絶ケアを提供するサービスです。テキストチャットによる医療従事者への相談や、合意の上で薬の処方、アフターフォローの訪問などに対応。プライバシーを守り、クリニックの約半分程度のコストで中絶できるよう設計されています。
サバイバーや専門家の協力のもと開発「Early Evidence Kits」

「Early Evidence Kits(アーリーエビデンスキット)」は、性的暴行を受けたときに、DNA採取を行うキットです。DNAの採取や性病テスト、モバイルアプリからチームへの相談などができます。サバイバーや看護師、弁護士の意見を参考に開発されました。性的暴行を受けても声を挙げにくく、ひとりで抱えている人も少なくありません。このキットが被害者と専門家の橋渡しとなり、心身の回復に働きかけるようなプロダクトになることを目指しています。
挿入がなくてもパートナーと楽しめる「nopole」

女性器を刺激する「nopole(ノーポール)」は、FTM、FTX、レズビアン、FTMゲイの方を対象に開発されたプロダクトです。5段階の振動機能が搭載されたほどよい重量感の球体で、ふたりで抱きしめ合って使う密着感を味わえます。パートナーと一緒に好きな使い方を見つけられる楽しさも。
世界が直面する課題のソリューションに向かう鍵となるフェムテック

各プロダクトの制作背景を見ていると、世界の現状や直面している課題が垣間見えました。今回紹介したようなプロダクトが浸透していくにつれて、タブー視されていた価値観が当たり前のものとして扱われるようになったり、公になっていない問題が明るみに出たりして、より多くの人がプロダクトや情報にアクセスしやすい状況を作り出すことができるのではないでしょうか。
また、フェムテックに関心を持っているという共通の認識のもと、会場に集まった人同士が情報をシェアしている姿が印象的で、新しいプロダクトだけでなく人や考え方との出会いが広がる空間でした。
同じ悩みを持っていたり、同じ情報に関心を持つ人が集まる環境なら、他の場所では恥ずかしくて話せなかった話題やちょっとしたモヤモヤも相談しやすいですよね。そういった心理的な安全が担保された場所で、少し勇気を出して声を出してみる行為も心身のモヤモヤの解消につながるののだと思います。
セクシャルウェルネスに関する悩みや不安が人それぞれあるということは、各々が自分らしく生きるために模索しているということ。あらゆるジェンダーや年齢層にエンパワーメントを与えるフェムテックに、今後も目が離せません。