生理周期や骨盤底筋のトレーニングなどの女性特有の課題を解決し、健康のための運動を習慣化しやすくするフェムテックをご紹介します。
コロナ禍で健康意識が向上傾向に
定期的な運動が病気の予防や、メンタルヘルスの安定に良いことづくめなのはよく知られています。ですが、忙しい生活の中で、意識的に時間を作り運動を継続して習慣化するのは簡単ではありません。
ここ数年のコロナ禍は、在宅勤務や外出を控えることによる運動不足、ストレスなど、「健康維持」をイヤでも意識させられる機会となりました。
消費者の位置情報を元に分析する企業Placer.aiによると、繁忙期にジムに足を運ぶ人の割合はコロナ禍以前の2020年に比べて2022年は増加しているそうです。
運動することが身体に良いのはわかっているけど、なかなか気力が出なかったり、億劫になりがちです。
女性の場合、生理やPMSなどは運動する意欲を妨げてしまうこともあります。今回は、運動にまつわる女性の身体特有の課題を解決する企業をご紹介します。
生理周期に合わせたフィットネス
生理周期の影響で体重が増えるのは、ホルモンバランスの影響で水分を溜めこみやすかったり、生理前に食べ過ぎてしまったりすることが原因と言われています。
生理周期に合わせたフィットネスを行えるアプリ「28」は、自分の生理に関する情報を登録することで、生理周期の卵胞期・排卵期・黄体期・月経期に合わせた約15~35分のプログラムを提案してくれます。各プログラムのトレーニングは特別な機器なしで行えます。
他にも生理周期ごとにあった栄養のヒントやレシピのコンテンツがあります。
以下のように生理周期の4つの期間に合わせた提案がされています。
- 卵胞期にはエストロゲンの分泌量が増えるため、筋肉の成長を促すプログラムを行い、排卵に備えて卵胞の成長を促す全粒粉、果物、野菜から栄養をとること。
- 排卵期はエネルギーに満ちた時期なので負荷の高いワークアウトをして、アボカド、ナッツなどで良質な脂質をとること。
- 黄体期はPMSのストレス緩和に効果的なリストラティブピラティスのプログラムとPMS症状に対して鶏、魚、バナナなどでビタミンB6をとること。
- 月経期はホルモンとエネルギーのレベルが低い時期なので身体を労わるためにセルフケアを行い、失った血液を補うために鉄分を多く含む食材をとること。
参考記事:生理前に体重が増えるのはなぜ?原因やダイエットに適したタイミング (医師監修)
共同創設者のBrittany Hugoboom氏は周囲の女性たちが低用量ピルの副作用で苦しんだり、婦人科で不快な思いをしたり、性教育の不足でホルモンと生理の関係に無知であることから、起業を志したと言います。
ただし、「28」では運動習慣と食生活でホルモンバランスを整えることを目的としているため、低用量ピルなど医学的なアプローチに否定的な主張があり、批判の声もあります。
また、Brittany Hugoboom氏はモデルとして活躍していた頃、男性たちが行うような負荷の高いワークアウトを続けて慢性疲労になる「オーバートレーニング」と言われる状態になった経験もあり、生理周期にあったプログラムが必要だと主張しています。
こうした主張を考えると、コンテンツのすべてを信用して取り入れるのは躊躇してしまいますが、生理周期に合った運動や栄養の観点は生活のヒントになりそうです。
女性特有の課題に着目したレギンス
OYA Femtech Apparelは、膣炎などを防ぐスポーツウェアを開発し販売しています。
CEOのMitchella Gilbert氏は、カンジダ症に感染し、医師から「再発させないためにレギンスの着用を控えるように」と言われたことがあるそうです。その経験から、スポーツウェアで見落とされている課題に着目し、通気性に優れた交換できるパッドを付けたレギンスの開発を行っています。
OYA Femtech Apparelの特許出願中の機能と生地は、カンジダ症や尿路結石、細菌性膣炎などのスポーツウェアが引き起こす問題を解決しようとしています。
参考記事:OYA FEMTECH FOUNDER RAISES $1.3M FOR WOMEN’S LEGGINGS THAT PREVENT VAGINAL INFECTIONS
骨盤底筋トレーニング
女性の運動習慣の中で最近注目が集まっているものに、骨盤底筋トレーニングがあります。
子宮や膣、膀胱、直腸などを支える骨盤底筋が衰えると、尿もれや性的な満足感を感じにくい場合があるなどの問題が起こると言われています。
参考記事:骨盤底筋が弱まると尿もれしやすい?弱まる原因とトレーニング(医師監修)
出産や更年期などの女性のライフステージの変化は骨盤底筋にも変化をもたらします。
しかし、語りにくい悩みであることで情報が不足し、困っている当事者が解決方法を見つけられないのが骨盤底筋にまつわる課題です。
排泄や性的な問題は隠してしまいがちですが、「恥」にまつわる課題は人権にかかわる重要なものです。
大げさに感じるかもしれませんが、高齢者介護の現場では排泄の介助で恥をかかせることは人権問題として捉えられていますし、性的なことはSRHR(セクシュアルリプロダクティブヘルスアンドライツ)としてWHO(世界保健機関)が身体を自己決定する権利として掲げています。
最近は「膣トレ」というキーワードで女性向けのメディアでたびたび取り上げられるようになりましたが、トレーニング自体が地味で効果を実感しにくいことから継続が難しいと言われています。
重要だけれど解決しづらい骨盤底筋トレーニングの分野では、数々の新製品・サービスが生まれています。
Perifit
パリ発のPerifitは、退屈になりがちな骨盤底筋トレーニングをスマホアプリのゲームを通じてやる気を起こさせる創意工夫をした製品です。
身体に当てたり挿入したりするデバイスを用いてトレーニングする場合は、Perifitのように医療用シリコンやFDA(アメリカの承認機関)の認可を受けているものかどうかチェックして選ぶことが重要です。
医療用シリコンは誤って食べたとしても体内には吸収されず、人体には無害でアレルギー反応も少ないと考えられています。
Leva Pelvic Health System
Leva Pelvic Health Systemは、テクノロジーとコーチングを組み合わせた非薬物・非外科的な方法で骨盤トレーニングができるサービスです。
センサー付きデバイスとスマホアプリが連携しており、自宅で1日2回、2.5分のプログラムを継続できるように、コーチが目標の設定や日々の進捗をサポートしてくれます。
ELITONE
ELITONEは、骨盤底筋トレーニングを行うデバイスですが、膣に挿入せずにできる画期的なものです。
挿入するデバイスを清潔に保って、毎日使い続けることは難しいものですが、ELITONEは下着の内側に装着するだけでできるので継続しやすくなっています。
骨盤底筋トレーニングのレビューはコチラから。【最新フェムテック】ゲーム感覚で「膣トレ」体験。スマホ連携で膣圧を可視化するElvie Trainerをレビューします
フェムテックによる健康への気づき
健康を維持するための運動も、女性特有の身体の課題を認識しておくことが重要です。
ホルモンバランスに合わせたプログラム、身体に合わないスポーツウェアに気を付けること、トレーニングを怠りがちな骨盤底筋について知ることなどさまざまです。
運動習慣が続かなかったり、調子が悪くなってしまうのは生理周期に合っていない可能性もあるかもしれません。
骨盤底筋トレーニングが大事なのは分かっているけど習慣化できないものとして、世界中の女性の課題だからこそ、新しいテクノロジーを駆使したものがいくつも作られています。
これまで見過ごしていたことを、フェムテック起業家の女性たちが悩みを抱えた当事者として課題に取り組み、解決しようとしています。