「生理前は体重が増える」と感じたことがある人もいるでしょう。生理前はエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが増えることにより、水分を溜めこみやすくなると言われています。そして、健康のために減量したい場合は、月経が終わった直後の卵胞期が、減量に適した期間とされています。
生理前に体重が増える原因とは?
生理前に体重が増える原因といわれているのが、生理前に分泌が増えるエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンです。エストロゲンは女性らしい体つきにしたり、子宮内膜を厚くしたり、排卵をうながす働きがあります。プロゲステロンは妊娠していた場合に備えて子宮内膜を厚く維持する働きがあります。
これらの女性ホルモンによって以下のような現象が起き、結果的に体重が増えてしまうと考えられています。
水分を溜めこみやすくなる
女性ホルモンには水分を溜めこみやすくなる働きがあり、便秘やむくみが起こりやすくなります。
甘いものを食べ過ぎてしまう
生理前になると甘いものを食べたくなり、体重が増えてしまうという人もいるでしょう。生理前に増えるプロゲステロンは、脳の視床下部に影響し、食欲を増加させる働きがあることが分かっています。また、プロゲステロンはインスリンの働きを悪くする作用もあります。
インスリンは食後に上昇する血糖値を下げる働きがありますが、プロゲステロンの影響を受けて血糖値が下がりにくくなります。その結果、脳は「インスリンの分泌量が足りていない」と判断し、さらにインスリンを分泌するのです。
そして、過剰にインスリンが分泌されると、今度は血糖値が下がりすぎてしまいます。すると、血糖値を上げるために糖に変化するのが早い甘いものを食べたくなってしまうという仮説がたてられています。
生理前に甘いものを食べたくなったときの対処法については、「生理前に甘いものを食べたくなる理由は?原因や対策、おすすめ食材」の記事を参考にしてください。
健康のために体重を減らしたい時は生理周期がポイント
生理前はどうしても体重が増えやすい時期です。では、健康のために体重を減らしたいときはいつが適した時期なのでしょうか。
生理周期について
月経が終わってから次の月経が起きるまでは、以下のように4つの周期に分かれます。
・卵胞期
卵巣の中にある原始卵胞が成熟します。成熟卵胞からエストロゲンという女性ホルモンが分泌され、子宮内膜が徐々に厚くなります。
・排卵期
脳からの指令で排卵がおこります。精子を迎える準備で子宮頸管粘液が変化して、おりものは水っぽく糸を引きます。
・黄体期
排卵後の卵胞が黄体化します。この黄体からプロゲステロンという女性ホルモンが分泌されて、子宮内膜がより厚くなります。PMSといわれる胸のはりや痛み、むくみやイライラなどの心身の不調を感じる人も。
・月経期
黄体は14日前後で役割が終わり、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が少しずつ減りなります。女性ホルモンが少なくなると、厚くなった子宮内膜が剥がれます。これが生理の経血です。
4つの時期のうち、卵胞期はためこんでいた水分が排出されやすく、腸の動きも活発になります。月経期までのイライラやむくみが取れ、体が軽く感じ気持ちも前向きになりますので運動にも取り組みやすいです。
注意点として、どんな時期でも過度なダイエットは避けましょう。急激に体重が減ると脳にある視床下部の働きが乱れ、女性ホルモンのバランスがくずれて、生理がこなくなってしまうこともあるからです。
生理前に体重が増えても一喜一憂しなくて大丈夫
生理前は、どうしても体重が増えやすい時期です。健康のために体重を減らしたい時は、生理が終わってから排卵がくるまでに調整してみましょう。生理周期と体重の関係を知って、体重の増減に一喜一憂しすぎないようにしましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。