現在の避妊法は、女性の身体に行うものとしては、ホルモン系ピルやIUS、IUDなどがありますが、男性側の避妊方法はというと、上記と比べると確実性が下がってしまうコンドームの装着もしくはパイプカット、という2つの選択肢しかない状況です。
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しかし、2021年10月に開催されたダイソン財団主催のエンジニアリングアワード「JAMES DYSON AWARD2021」で、睾丸を超音波で温めることによって避妊を可能にする男性向け避妊具ガジェット「COSO」がドイツ国内最優秀賞を受賞しました。
使用方法
ステップ1
「充電する」。
ステップ2

「表示の線まで水を注ぐ」。
加熱式のCOSOは冷却機能のために水を使用する必要があります。
ステップ3

「ボタンを押して加熱する」。

加熱中は本体上部のライトが点滅してかわいい。
ステップ4

「睾丸を入れ、超音波ボタンを押す」。

数分間の超音波処理が始まります。

COSOのアプリと同期し、残り時間のチェック。
これですべてのステップが完了!あとはまた2カ月後に同じ処理を続けていきます。
ザ・ウルトラサウンド避妊。その仕組みは?
COSOは考案者・デザイナーのレベッカ・ヴァイス氏とミュンヘン工科大学との共同研究により生まれました。
COSOの公式ウェブサイトは独自の超音波を用いた男性用避妊法について、「精巣組織に深部の熱を発生させて既存の精子の動きを変化させることによって新しい精子の形成を一時的に抑制することができる」と説明しています。
この技術は2012年に発表された、ラットの睾丸に生理食塩水に漬からせた状態で、2日間隔で2回37℃に温めながら3MHzの超音波を15分間当てると、生殖細胞がほぼ0になり、2~6カ月間の避妊効果が得られたという研究結果を基に開発されました。
COSOは1回目の装着から2週間後に避妊効果が現れるとされ、2回目以降は2カ月の間隔をあけて使用します。また安全性確保のため、初回は医師の立ち会いのもと使用することが推奨されています。
きっかけは、病気でホルモン系ピルが服用できなくなったこと
COSOは考案者・デザイナーのレベッカ・ヴァイス氏とミュンヘン工科大学との共同研究により生まれました。開発のきっかけは、ヴァイス氏自身が子宮頸がんを患ったことで、ホルモン系の避妊用ピルを服用できなくなったこと。
避妊の機能としては必ずしも完全ではないコンドームの装着、また痛みを伴うパイプカットという2つの避妊法のみが男性に提示されている現状に直面したヴァイス氏は、男性にとっても痛みや副作用のない避妊法として、超音波を利用する避妊法を採用したと述べています。
まだ購入はできないけれど

カラーはホワイト、グレー、ブラックの3色。
現時点ではCOSOはまだ製品化に至っておらず、技術的な実現可能性を示すためのプロトタイプが作られているのみ。
また公式サイトでは動物モデルで成功したこの技術を人間の身体に応用する効果はいまだ解き明かされておらず、COSOの技術もあくまで仮説段階にすぎないとしています。
COSOが避妊器具として承認を受けて製品化するためには、さらなる研究のためのリソースや臨床試験によるデータの向上、公的機関からの資金調達、また社会的な受容の拡大が必要だとヴァイス氏は考えています。
現在ドイツのNGOであるBetterBirthControl社は、男性用避妊具の研究強化をドイツ政府に提唱するキャンペーンをおこなっています。
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女性だけでなく男性も選択できる安全で簡単な避妊方法が実現し日常の風景となれば、男女間でより平等かつ対等な意思決定ができるようになるでしょう。
コンドーム使用と同じように※、男性の超音波による避妊が「エチケット」になる日も、そう遠くないかもしれません。
※性感染症予防のためには、コンドームの装着が依然として欠かせません。