生理のたびにナプキンから経血が漏れてしまう。頻繁にナプキンを替える。毎月の生理が不安。
でも、「生理だから仕方がない」と思っている人も多いのではないでしょうか?
しかしながら、経血量が通常より多い状態は「過多月経」と呼ばれ、その要因として婦人科疾患の可能性もあります。
「経血量が多い」は婦人科疾患の可能性も。まずは病院で検査を(産婦人科医インタビュー)
経血量の多さは我慢せず、まずは一度婦人科で自分の体の状況を知ることが大切です。
過多月経に関するアンケートや、先日実施した過多月経について語る座談会では、次のような声が寄せられました。
「経血量の悩みだけでクリニックに検査に行ってもいいのかわからない」
「婦人科の検診は、何をされるかわからないから不安」
「量は多いけど痛みはないし、まあいいかなと思っていた…」
婦人科で経血量の多さを相談すると、どのような診察があるのでしょうか?診察の流れや処置方法について、丸の内の森レディースクリニック院長 宋美玄先生に聞きました。
「経血量が多い」は普通じゃない。貧血の可能性も
—— 経血量の悩みを抱えている人は多いですが、経血量の悩みで婦人科を受診する人は増えていますか?
生理痛などの「痛み」が症状としてある場合は受診する方が増えている印象があります。ですが、経血量の悩みだけでの受診数が増えているとは言い難いですね。
そもそも経血量が多いかどうかを比較することが難しい。だから今回の企画で監修させてもらった「過多月経チェックシート」は簡単にチェックしやすいのでいいですよね。
SNSでチェックシートをシェアしたら 、「全部当てはまる」「昼も夜用でしょ?昼用ナプキンは小さすぎるし何に使うの?」というようなコメントが多くついて、私自身もすごく衝撃でした。
経血量が多くても、ご自身は普通の量だと思っていて、検診にも行っていない。このような潜在的な患者さんが多くいるんだと改めて気付かされました。
生理痛も普通のことだと我慢している人も多いですが、経血量に関しては、個性の一つくらいに思ってしまうのかもしれません。
—— 仕方がないことだと思っている方も多そうです。痛みがなくても婦人科疾患の可能性はあるのでしょうか?
もちろんです。経血量が多い場合、痛みが全くなくても子宮筋腫や婦人科疾患の可能性はあります。
それに、経血量が多いということは、知らない間に貧血になっている可能性もあります。急に大量の血液を失ってしまったら貧血だと感じる人も多いかもしれませんが、毎月の経血量で徐々に貧血になっていく場合、症状に気づいていないことも多いです。
みなさんがイメージする貧血は、急にフラッとしてバタリと倒れてしまうようなものかと思いますが、あれは脳貧血です。鉄分が不足することによる貧血は、階段を登ったり、小走りをした際に、心臓がバクバクしたりする頻脈(ひんみゃく)の症状が出るものです。
—— 生活に支障がないと感じていても、貧血を放置するのはよくないのでしょうか?
貧血も「私、貧血とよく言われるんです」と、症状を軽く捉えている方もいますが、貧血は放置していると代謝が悪くなったり、心不全になったりすることもあります。
「よくあること」として放置はしない方がいいですね。
あとは、貧血の状態だと、急な出血があった際に余力がなくなってしまうことがあります。筋腫等で極端に経血量が増えた際に血液の余裕がなくて、バイタルが保てず急遽輸血が必要になってしまうこともあります。
婦人科検診の流れとは?
—— 「どのようなことをされるのかがわからないから、怖い」という声も聞かれます。経血量の多さで受診した際の、検診の流れについて教えてください。
まずは問診をします。経血量が多いという場合には、生理の日数や普段使用している生理用品、ナプキンの種類やサイズ、一番多い日には、どんなナプキンをどの頻度で取り替えるのか、夜寝る時はどんなものをつかっているのかなどを聞きます。
あとは、経血量が昔から多かったのか、最近増えてきたのかも聞きますね。例えば30歳前後で急に増えてきたという場合には進行性の病気の可能性も出てきます。
10代後半、20歳頃までは、疾患がなくてもホルモンの影響で経血量が増えたりもします。
そのほかには、フォン・ビリブランド病という血が止まりにくくなる出血性の疾患の方もいます。この病気の場合は、鼻血が出やすかったり、歯磨きで血が出たり、あざができやすい症状もあるので、そのような情報があった際は、貧血の検査で、止血機能についても調べ、疾患を見逃さないようにします。
—— 経血量の多さで受診した場合は必ず貧血の検査もするのでしょうか?
会社の定期検診などで貧血と診断されているかをお聞きしたり、貧血の症状があったりするかどうかをまずは確認します。先ほどもお伝えしたように、ゆっくり貧血になる場合は症状がわからない場合もあるので疑いがある場合は血液検査をします。
—— 問診を経てから検査。どのような検査をするのか教えてください。
① 内診台に座る
内診をするために内診台に座っていただきます。内診台は電動で上がり、股が開くようになっています。また内診台には患者と医師の間にカーテンがついていますが、私たちのクリニックでは、カーテンを開けたままが良いひとはそのままにしておいてもらい、カーテンを閉じたい人は閉じていただきます。
②経膣検査
経膣検査をする際は、このクスコ※を使用します。私たちのクリニックでは3種類の太さを揃えているので、患者さんが膣内への挿入に怖さや痛みを感じる場合は細いものを使用します。
※クスコ(膣鏡)とは、産婦人科で使用される医療機器で、主に膣内部や子宮頚部を観察するために使います。
クスコで膣口を広げた上で、視診や細胞の採取をしていきます。
③経膣超音波検査
採取後はこちらの経膣超音波(経膣エコー)を使って、子宮や卵巣の様子を確認します。こちらも、細いものと通常のものがあります。
④内診
医師が膣の中に指を1、2本いれて触診します。同時に、もう一方の手でお腹を押すことで子宮の位置や大きさ、硬さ、卵巣の腫れがないかも確認します。
内診台や経膣検査が怖い…どうしたらいい?
—— 内診台に上がるのが怖いという方もいらっしゃいますよね。
通常、問診の後は、経膣検査をします。私のクリニックでは、性交経験がない場合は、基本的にはお腹の上から腹部超音波で見ています。
ただ、生理の経血量が多いという主訴で来院されている場合は、ポリープや筋腫が原因の場合もあるので、子宮口を目視で確認した方がいいと思います。
いろんな理由から嫌だという方を無理に経膣検査することはないですが、経膣で行う検査の方が取得できる情報量が多いです。
ご自身の健康のために受診されていると思うので、正確な診断と治療方針決定のためには内診台でクスコを使用して膣や子宮頸部の状態を目視する膣鏡診や、超音波検査の意義はとても大きいと思います。
我々も、決して無駄なことをしているわけではなく、それがベストな検査方法だと思い提案をしていますので、基本的には内診台での検査があると思ってお越しいただくのがいいかと思います。
ただ、診察に対して不安がある場合は、遠慮なく医師に相談してください。
—— 相談をした場合は、どのような対応をしていただけるのでしょうか?
まず、内診台でいうと、カーテンを閉めるか開けるかもご自身がリラックスできる方でいいですよと伝えたり、どのように椅子が動くのかを事前に説明したりします。
経膣検査においては、リラックスしてじっとしているのが一番痛みは少ないので、緊張して体が硬くなっていそうな場合は、「ふーふー」と息を吐いてみてくださいとお声掛けをすることもあります。呼吸をすることで体がリラックスしやすくなります。
—— 検査器具の挿入時の痛みが不安という方もいます。
挿入の痛みに不安があるという方には、細いサイズのクスコを使用します。
また、私のクリニックでは、痛みが強いという場合には膣口へ麻酔ジェルを塗布することもできます。クリニックによっては超音波検査の挿入時に潤滑剤などをつける場合もあります。あとは、なるべく短時間で診察できるように心がけますね。
性交渉の経験がない方で、お腹の上からの検査では見えないという方にはお尻から経直腸エコーをする場合もあります。
お尻の場合は痛みよりは気持ち悪いと感じるかもしれませんが、膣に何かをいれるのが怖いという方はお尻からの方がいいという方もいます。
ただ、経直腸エコーの場合は骨盤の底から検査していくことになるので、子宮の形状によっては見えづらい場合もあります。
経血量が多い場合の治療方針はどうやって決めるの?
—— 検査の後はどのような流れになるのでしょうか?
検査結果に応じて、患者さんと一緒に治療方針を決めていきます。
初見で、子宮内膜症や筋腫などがありそうなのか、何もないのか。結果によっては手術が必要な場合もありますし、ホルモン治療をする場合や生理後に再度検査が必要な場合など様々なパターンがあります。
何も疾患がない場合には、経血量の多さに対する治療として、低用量ピル、ミレーナ、ジェノゲストといったホルモン治療や、止血剤のトラネキサム酸、貧血の状態の場合には鉄剤の処方などがあります。
ただ、貧血に対して鉄剤などで血を補うよりも、ホルモン剤等を使用して、経血が出る量を調整する方が根本的な解消になります。
妊娠希望の状況など、ホルモン剤は使用したくないけれど経血量を軽減したい場合は、止血剤のトラネキサム酸を処方します。
*過多月経の要因や治療法についてはこちらの記事もご参考ください。
「経血量が多い」は婦人科疾患の可能性も。まずは病院で検査を(産婦人科医インタビュー)
—— 検査結果が何もなかった場合も、定期的な検診は必要でしょうか?
年に1度の検診が理想です。前回の検診ではなにもなかった方が、1年後の検診で筋腫が見つかることも多いです。
—— 婦人科検診にかかる費用はどれくらいなのでしょうか?
過多月経は医療保険の対象です。当院では、初診の場合は、初診料とお薬代を含めて5000円以内で収まるのではないでしょうか。もちろん、検査の幅をどこまで広げるかによっても異なります。
—— # お願いクリニクス #生理のサインを見過ごさないで プロジェクトでは、過多月経の不快感を少しでもやわらげられるような選択肢の提案とあわせて婦人科検診の啓発をしています。このような取り組みについてどのように感じますか?
エリス クリニクスのパッケージに「過多月経」という病名が書いてあることで、このナプキンが必要な私は、もしかして病院に行った方が良いのかな?と思いやすくなるのではないかと思っています。
過多月経や生理痛のせいで毎月1週間煩わされてしまうというのは損失だと思うんです。少しでも生理のことを気にせずに過ごしてもらいたいですよね。
「#お願いクリニクス」プロジェクトでは婦人科受診の大切さを伝えています
エリスでは、#お願いクリニクス #生理のサイン見過ごさないで プロジェクトにおいて、過多月経の対策と、婦人科検診の受診の大切さを伝えています。
このプロジェクトでは、個人差があり人と比較しづらい経血量について、定量的なデータを集めたいと考えています。ぜひこちらのアンケートにご協力をお願いします。 生理に悩みながらも前へ進む人たちの声を可視化し、全力でサポートしていきたいと考えています。