人生に決められたルールはないと思う。それでも、ああ、きっとこうした方がいいんだろうなと思うことは数多く存在する。その中の一つが結婚、そして出産である。

Advertising Week New Yorkの「Advertising Woman of the Year」に選出されるなど広告業界で「NYの女王」とも呼ばれ第一線を走り続けながら、リアルなセックス動画を投稿、視聴できるサービス「MakeLoveNotPorn」創設者でもあるシンディ・ギャロップ62才。

彼女は今日も1人であることを謳歌している。

さまざまなインタビューで、20代の男性とデートを楽しみ、一人でいることを楽しんでいると語っている彼女に、画面越しに「私は結婚願望がなく、子どもが欲しいと思ったことがありません」と話しかけてみた。

そうすると、彼女は、両手の親指を立てて「いいわね」と微笑み、そして、一人を楽しむ幸せと周囲との葛藤について語ってくれた。

彼女が立ち上げたMakeLoveNotPornについてのインタビューはこちら

自問自答し、選択肢について考える勇気を

ーーー 様々なメディアで一人を謳歌しているとお話されていますが、昔から、結婚願望がなかったのですか?

いいえ。私も他の人と同様、女の子らしく生きてほしいという環境の中で育ち、いつかは結婚し、子どもを持つと思っていました。 

でも歳を取るにつれて、私は結婚することを望んでいないんだと気づいたんです。

それ以来、結婚が私のゴールになったことは一度もありません。そして、私には母親になりたいといった欲求が一切なく、若い男性とのデートを大いに楽しんでいるということに早い段階で気付きました。

私はこうしたことを意図的にオープンに話すようにしています。

なぜなら、女性も男性も、社会が期待している方法とは異なる方法で生きても、幸せであるということを示してくれるロールモデルがいないからです。

社会から、そうあることを期待されているから、多くの人がなぜか決められた行動で生活しています。

あまりにも多くの人が、結婚すべきでなくとも特定の人と結婚します。みんなすることだからです。

実際には子どもがいない方が幸せになるかもしれませんが、みんながしているという理由で子どもを持つ人もいるのです。

ただ、それを考える機会がないのです。だから私は、誰もが立ち止まり、重要な人生の選択肢について考えるよう勇気づけたい。

自問自答してみてほしいのです。家族が望むもの、周りのみんなが望んでいるように思えるものではなく、本当に自分が望んでいるものを考えてみる。

そこから自立できれば、大きな幸せを得ることができます。

MakeLoveNotPornを立ち上げたときもそうでしたが、最大の障壁となるのは社会のダイナミクス、つまり他人にどう思われるかという恐怖です。

私の人生にとって最高の瞬間は、他人が私についてどう思おうと、どうでもいいと気づいたときでした。それこそが、自分の人生を生き、本当に幸せに生きることができる唯一の方法だからです。

いい?ママ、パパ、これだけは、はっきりさせておきたいの

ーーー とはいえ、その選択ができる人はまだ少ないようにも感じています。シンディさんのご両親も同じような考えだったんですか?

いいえ、両親とは真逆かもしれません。父はイギリス人でとても古風で厳粛な人で母は中国人。両親はセックスについて話したことはありませんし、性についてオープンではありませんでした。

私の62年間の人生で、年を取るほど、より多くの問題に突き当たり、そのたびに自分についての理解が深まってきました。

そして、周りが自分をどう思おうとも、その期待に対して自分自身ができることは少ないということを知るのです。

数年前、私は周りの期待、両親の期待に応えることにしました。私は3人姉妹の長女で、その3人は結婚していて、2人に子どもがいます。

中国人の母は明らかに、私たちが皆結婚し子どもを持つよう切望していました。妹の一人は私と同じく、結婚していますが決して子どもを望んでいませんでした。

妹に子どもが生まれ、彼女の住む街に行ったある夜のことです。私は子どもを産みたいと思っていませんが、赤ちゃんは大好きです。

そのときも、妹の子を抱っこし、なんてかわいいんだろうと見ていました。けれど、両親が私の様子を見ていることに気づいたとき、これだけは言っておかないといけないと思い、顔を上げて両親に言いました。

「いい?ママ、パパ、はっきりさせておきたいの。 私はこの子を抱いて、あやしていて、愛らしいと思うわ。

そして、二人は私のことを『かわいそうなシンディ、本当は自分の赤ちゃんが欲しいんじゃないの?』と考えているんでしょうけど、全くそんなことはない。

妹の赤ちゃんを抱いている私をそんな風に見ないように気をつけて!私は欲しくないのよ!!」ってね。

私が一人で生きていて幸せだということに両親が気づくには時間がかかりましたが、今は、私が両親とは全く異なるライフスタイルを選び、そしてとても幸せであるということを理解してくれています。

ーー 人の価値観は異なるからこそ、環境を変えていくのは難しいですよね。

親に限らず、私の周りでは、子どもがいないと言うと二通りの反応があります。

 「子どもはいるの、いないの? 」と聞かれ、「いいえ」と答えると、「彼女は結婚して子どもを授かりたいと思う男に出会ったことがないんだ」と大抵は同情や哀れみの対象として見られます。

でも、それは真実ではありません。結婚したいと思っていたなら、そうしていたからです。 

二つ目の反応は恐怖です。

「まあ、子どもを欲しがらない女性だなんて、なんて不自然なことでしょう!」と。 こうしたことを経験してきたので、私は、結婚や子どもを望まない私たちみんなのためにも、そうした反応を根絶したいと思っています。

両親は50年以上素晴らしい結婚生活をおくっているし、結婚はとても素敵なことです。ただ、私には結婚が向いていなかっただけです。

結婚や子どもだけでなく、そもそも付き合うことさえ望んでいない。私は、シングルでいることがとても幸せですし、一人で死ぬのが待ち遠しいのです。 

日本の女性は行動する準備ができていると信じています

ーーー 「一人で死ぬのが待ち遠しい」と言い切れるのはすごいです。

もちろん私も、当初は社会の価値観に囚われて生きてきました。社会文化が作った筋書きが、私たちの考え方や物の見方にどれほど浸透しているのかを私自身も実体験を通じて気付かされました。

10代、20代、いずれは結婚して子どもを持つものだと思っていたし、女性として生まれた瞬間から、自分たちの全人生をかけて伴侶を探すのが望ましいと信じるように育てられました。

なので当時は、そんな男性に出会うためにドレスアップし、たくさんの時間を費やし社交場に出かけていました。そして、嘆かわしくも、他の女性と競い合い、「今夜は出会えなかったけど、次ね!」を繰り返していた。

だけど、30代前半に「もういいや!探すのやめた」と思えたら、気持ちがホッとしたんです。

そして、私は一人で社交場にいき、ただ楽しむことができるようになった。ほんと、なんというか…もう、クソくらえ!ってね(笑)それ以来、私はただただ幸せです。

ーーー 社会的な期待に合わせて生きている方が楽な部分もあったり、自立が難しいと思っている人も多い。日本の女性にメッセージがあれば。

私は日本で働く機会もあり、ずっと日本が好きです。日本を訪れるたびに日本人女性と会話をすればするほど、彼女たちは今の社会での立ち位置に留まることを望んではいないと気づきます。

非常に長い時間がかかっていますが、これらの変化は静かに起こりつつあります。

数年前、沖縄の広告業界会議で広告とマーケティングの将来について講演しました。聴衆は日本人男性が圧倒的に多く、2日間の講演の全ラインナップの中で、私が唯一の女性スピーカーでした。

昼食の休憩時間に、その聴衆の中にいた若い日本人女性が近づいてきました。そして彼女は私にこう言ったのです。

「私はあなたになりたい。どうすればあなたになれるか教えてください」と。私は非常に感動しました。

日本でも多くの女性が本当にやりたいことに取り組むことができるよう、自分の人生の中で自分の道を見つけられるよう、励ましたいです。

そして、それらは自分だけでなく周りの女性をも鼓舞し、他の女性のために立ち上がる人の周りに結集していくのだと思います。

今、日本の女性は行動する準備ができていると信じています。

ーーー

シンディ・ギャロップ氏へのインタビューは全3回です。第1回、第3回もあわせて読んでみてください。

第1回

セックスに正解なんてない。MakeLoveNotPorn代表シンディ・ギャロップが語るソーシャルセックス

第3回

セックステックに携わりたいと思っているあなたへ。いいですか、決してあきらめないでください。

Special Thanks! Mari Hirata

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