前編では、Cindyさんが立ち上げた、日常のセックス動画を投稿できるプラットフォーム「MakeLoveNotPorn」の現状と、新たにスタートする性教育プラットフォーム「Make Love Not Porn Academy」の構想について伺いました。
後編では、Cindyが新たな性教育プラットフォームを作る理由、そして、アメリカにおける性教育の現状や、私たちが制作している外陰部の構造を正しく伝えるパペット「Ba-Vulva(ばあばるば)」についてお聞きしました。
セクシュアルウェルネスや性教育のビジネスが難しい理由
Cindy Gallop:現時点で、性教育でお金を稼ぐことは難しいです。
私には世界中に素晴らしい性教育者の友人達がいますが、みんなビジネスをする上で私と同じ問題に直面しています。彼らのコンテンツはFacebook、Instagram、TikTokでブロックされ、アカウントは凍結され、広告も禁止されています。
彼らはこの仕事で生計を立てることすらできず、他の仕事をしなければならないのです。
だから私はそれを変えたいと思っています。なぜなら、これは価値のある仕事であり、彼らにはお金を稼ぐ権利があるからです。
さて、私はアカデミーに関して3つの新しい取り組みを計画しています。1つ目は、この教育プログラムを大きくすることによって、Make Love Not Pornのイメージを刷新し、より多くの人に受け入れられ、社会的にも認められる存在にすることです。
次に、私は自分のビジネス上での課題を解決するために、具体的な解決策を作り上げることが大切だと考えています。
現状、Make Love Not PornはFacebookやInstagram、TikTok、Snapchatなどで広告を出すことができません。これは私たちだけでなく、女性主導の性健康やウェルネス関連のビジネス全体に影響しています。
しかし一方で、男性向けの性健康関連事業は問題なく広告を出すことができ、勃起不全の解決策などの広告は至る所で見られます。
そのため、私はAcademyをMake Love Not Pornのコアビジネスを成長させるための強力なサーチエンジンとして設計しました。
18歳以上になったユーザーは、Make Love Not Pornに移行して、現実世界での実例を通した性教育を受けられます。また、保護者や教師、大人たちにもコアビジネスを紹介できるようになります。
そして3つ目の目標は非常に大切で、Academyを通じて新たなコンセプトを証明することです。
15年間、多くの方から「シンディ、このプロジェクトは学校で展開するべきです。Make Love Not Pornをカリキュラムに加えるべきだ」と言われ続けてきましたが、「それはするべきではないと思う」と答えてきました。
なぜなら、性教育を学校に持ち込もうとすると、保護者と教師の協会(PTA)が道徳的な問題だとしてパニックになるからです。
性教育を学校で教えることに反対する人たちは、実際に取り入れた場合のメリットを知らず、ただ「悪」だと決めつけているのです。
世界中で、質の高い性教育コンテンツが一堂に集まる場所は存在しません。しかし、私たちのAcademyが持つコンテンツが、どれほど優れたもので、情報が豊富で、教育的で、健康的で、抵抗感を与えないものであることを知ってもらうことができれば、年齢や文化に応じて必要な情報を検索できるようになります。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教など、各宗教に対応した性教育も提供する予定です。そして、特に重要なのは、保護者が自分たちの価値観や快適さに合わせてコンテンツを選べること。家族やクラス、学校に合ったものを選択できるのです。
そうして初めて、私は性教育を学校に取り入れることができるようになると考えます。
まずは学校の外でこのプログラムを構築し、それを学校に自然に統合していきたいと考えているのです。
MISA:日本でもAcademyは利用できますか?
Cindy Gallop:Make Love Not Pornの活動はすべてグローバルに展開していますが、資金面や投資家のサポートが足りないため、翻訳の自動化や翻訳者との協力がまだ実現できていないのが現状です。
日本の皆さんにお願いしたいのは、WeFunderのキャンペーンを広め、日本からも投資を募っていただくことです。その資金はAcademyの日本語版の翻訳に活用させていただきます。
たとえば、ある投資家の方から「Academyはとても重要なので資金を投じたい」という声をいただいたことがあります。
WeFunderから投資をする際に「Academyのために使ってほしい」と投資時に私たちに伝えていただければ、その資金をそうした目的で使います。日本の投資家の方の場合は「日本語版のAcademyを立ち上げるために投資したい」と伝えていただければ、そのために活用します。
性的快感(プレジャー)はないものとされる。日本のセクシュアルウェルネスの現状
MISA:ありがとうございます、私たちの読者にも投資を呼びかけますね!
私たちが作りはじめた、外陰部の構造を理解するためのパペット「Ba-Vulva(ばあばるば)」は、おばあちゃんたちが作っています。日本語の「ばあば Ba-ba」と「外陰部 Vulva」を組み合わせて「Ba-Vulva」です。
Cindy Gallop:とても素敵です!!
MISA:私たちは現在、国内外のセクシュアルウェルネス業界のリーダーとのインタビューを通じて、日本のセクシュアルウェルネス課題にアプローチする方法を探りたいと考えています。
そして、日本で性にまつわる会話がオープンに出来る場所やサポートできるサービスを作りたいと考えています。
日本の現状としては、「フェムテック」という言葉とともに、セックストイが商業施設で販売されることも増えてきました。これは良い変化なのですが、根本的な部分は依然としてタブー視されています。
先ほどの性教育の話においても、日本の性教育は包括的ではなく遅れていると言えます。そして、リアルな情報と教育で大きなギャップが存在しています。
大人においても、セックスカウンセリングのような相談場所や、エビデンスベースで性科学について学ぶ場が少ない状況です。
私たちは、まずは「Ba-Vulva(ばあばるば)」を通じて、カラダについて楽しく学び、性にまつわるトピックについてオープンな会話を促進し、世代間の性教育のギャップを埋められればと思っています。
世代によって受けてきた性教育も違うと思うので、それぞれ性にまつわる異なる経験や悩みを抱えているはずです。なので、年齢を超えて会話を促進したいと考えています。
Cindy Gallop:そうなのですね。性に関する意識については、アメリカも日本とそれほど変わらないと言えます。だからこそ、Make Love Not Porn Academyを立ち上げるタイミングが重要だと思っています。
健全な性教育はあらゆる場所でブロックされ、検閲され、プラットフォームから排除されています。グローバルな社会として、私たちは逆行しています。現在、アメリカの性教育の状況は政治的な風潮のために非常に悪化しています。
最近、私のAcademyチームと私はWoodhull Freedom Foundationという素晴らしい性的自由を擁護する非営利団体が開催したZoomウェビナーに参加しました。
そのウェビナーは「検閲された国での性教育」と題され、アメリカ全土で、道徳的なパニックにより性教育がどのように規制されているかについて議論されました。
人々は否定的な意見や論争を避けるため、あらかじめ自己検閲を行っています。ですから、ランドリーボックスの取り組みは非常に価値があり、あらゆる場所で必要とされていると思います。
日本だけが遅れているのではなく、世界中が性教育において同様の課題に直面しています。
最近、オーストラリアの女性とポッドキャストでインタビューを行いましたが、彼女は女性のVulva(外陰部)を撮影し、それをまとめて「Flip Through My Flaps」という本にするプロジェクトを立ち上げました。
このタイトルはユーモアがありながらも論争を引き起こしており、彼女はオーストラリアでこのプロジェクトを進めていますが、オーストラリアも日本と同じくこのようなトピックに関しては遅れています。
このプロジェクトも「Ba-Vulva」同様にVulva(外陰部)についての会話を自然にするもので、オープンなコミュニケーションを促進しようとしています。
つまり、あなた方は、この問題の最前線に立ち、世界中の同じ考えを持つ人々と一緒に戦っているということを、私は保証したいです。
アメリカの性教育・生殖器の構造について知ることの大切さ
MISA:ありがとうございます。世界中で同じ課題に直面していますね。アメリカでは、若者は学校で女性の生殖器の構造や解剖学について学びますか?
Cindy Gallop:全くありません。現在のアメリカの多くの州、特に共和党が強い州では、性教育に対する風潮は良くありません。一部の州では、禁欲のみを教える性教育以外は禁止されています。
結婚前にセックスをしないことに焦点が当てられており、女性の生殖器の解剖学については教えられません。なぜなら、結婚するまでにはその部分を見ることはないと考えられているからです。
性教育が許可されている州でも、非常に議論が多く、PTAや学校の管理者はこのトピックを公然と議論することを避ける傾向があります。
MISA:アメリカでも性教育は不十分と感じられているのですね。具体的に、何が欠けていると思いますか?
Cindy Gallop:根本的に欠けているのは、性にまつわることを話す環境の「快適さ」です。
何を教えるかを話す前に、教師、校長、教育当局が性にまつわるトピックに対して感じている「不快感」に対処する必要があると思っています。
もう一つの問題は、性教育を教えたがる人がいないことです。多くの学校では、外部の専門家に外注するか、ときには質の悪い専門家に依頼したり、古い教え方に頼ったりします。
教育は否定的な側面に焦点を当てており、結婚前にセックスしないこと、性感染症を避けること、コンドームを使うことなどが強調されます。
誰もが性欲を持っているという認識はないものとされているのです。
MISA:私たちも日本の性教育には快楽の観点が欠けているという話をよくしています。病気を避けることに焦点をあてていますが、普通の性的欲求については触れられていないんです。
Cindy Gallop:その通りです。そして根本的に欠けているのは、恥ずかしがることなく性について話す快適さです。そして、それは変える必要があります。
なぜなら、プレジャーを健康的に理解することは、自分の体やセクシュアリティとの良い関係を持つために重要だからです。
プレジャーを理解しない限り、性に関する話は純粋に臨床的で否定的なものにとどまり、親密さや自尊心に対するヘルシーな態度の形成には役立ちません。
MISA:解剖学を理解することは、コミュニケーションの向上に繋がると思いますか?
Cindy Gallop:それは間違いなく大事だと思っています。女性の解剖学を理解することは、女性だけでなく、すべての人にとって重要です。
それは何が気持ち良いのかをオープンに話し、同意を理解し、自分の体やパートナーの要求に応えることに繋がります。この理解の欠如は、多くの誤解や、ベッドでの悪い経験につながる可能性があります。
男性にとっても、女性の解剖学を知り、尊重することは、両者にとってより満足のいく性的な経験をもたらします。
MISA:日本の多くの男女も、女性器の構造を理解することの重要性を認識していないかもしれません。だからこそ、Ba-Vulvaを使ってこうした会話を始められるようにしたいんです。
Cindy Gallop:それは素晴らしいことです!
Ba-Vulvaは、性、解剖学、プレジャーについてのオープンな議論を促進し、その障壁を打ち破るための素晴らしいツールになると思います。
これらの会話を親しみやすく、不快感を感じさせず、楽しく始めることは、性に対する態度を変え、人々が自分の体に対して快適に感じることに大きな影響を与えることができると思います。
MISA:ご意見をいただき、本当にありがとうございます!Cindyさんのアドバイスを活動に活かしていきたいと思います。
Cindy Gallop:どういたしまして!Ba-Vulvaを使った取り組みについてお聞きできてとてもうれしいです。性教育や快楽に関するナラティブを変えるきっかけとなる取り組みであり、ぜひサポートやアドバイスが必要な場合はお知らせください。お手伝いできることがあれば、喜んでお引き受けします。
MISA:ぜひそうさせてください。今後コラボレーションもさせてもらえたら嬉しいです。
Cindy Gallop:私の方こそ、お礼を申し上げます。Ba-Vulvaが日本だけでなく世界中で影響を与えるのを楽しみにしています!
ぜひ連絡を取り合いましょう。Make Love Not Porn AcademyでBa-Vulvaを取り上げ、そのプロモーションを日本や世界中でサポートできればうれしいです。
このプラットフォームはあなたたちのような取り組みをサポートし、紹介するために構築しているものでもありますから。
MISA:とても嬉しいです!ありがとうございます!
前編「日常のセックス動画サイトから0歳からの性教育プラットフォーム開始へ シンディ・ギャロップさん」
<プロフィール>
Cindy Gallop(シンディ・ギャロップ)
広告業界で成功を収めたビジネスリーダーであり、社会改革家としても知られている。2003年「アドバタイジング・ウーマン・オブ・ニューヨーク」に選ばれ、「ニューヨークの女王」と称される2009年に「MakeLoveNotPorn」を立ち上げ、性教育と多様性に関する対話を促進。社会変革に尽力している。
本記事はランドリーボックスが制作している性教育パペット「Ba-Vulva(ばあばるば)」の公式サイトの記事を一部編集の上、転載しています。