私は摂食障害になった経験から、極端なダイエットに関する反省談をSNSやコラムなどでよく発信しています。
そのなかで「極端なダイエット」を辞めた人から、こんなお話をよく聞きます。
「ダイエット思考や健康志向が癖になり、食べることを心から楽しめない」
というものです。
食事は、毎日繰り返す大切な習慣。「ダイエットだから◯◯」という思考の癖で不自由になってしまうとつらいですよね。
今回は「ダイエット思考の手放しかた」について、お話していきたいと思います。
偏った「ルール思考」になるワケ
毎年さまざまなダイエット方法が話題になり、「◯◯はNG!」「◯◯すると太る!」「絶対に痩せる◯◯!」などギョッとするようなタイトルで目を引くダイエット法が世の中に溢れています。
基本的にダイエット情報は、自分の気持ちよりも「ルール」を優先させるものがほとんど。極端なものでは、毎日毎食何を食べるか事細かく指示があったり、そのために特別な食材を手に入れなくてはいけないものもあります。
また、あるダイエット方法では否定されていた食材などが、別の方法では肯定されていたりして、何を信じればいいのかわからなくなってくるほど。
多くの人が偏ったダイエットに夢中になりがちな理由の1つは、はっきりと断定表現されている「ルール」があると、なんとなく安心できるからではないかと私は思っています。特に、現状に対して不満があったり、不安な状況に陥っているときほど、自分の思考や選択に自信がないため「ルール」を信じやすい状態になっているのでしょう。
「今のままじゃダメだ」と悩んでいるときに、「こうすれば解決できますよ」といわれると思わず惹かれてしまいますよね。本当に参考になるものも確かにありますが、ダイエットは自分の体と生活に深く関わるもの。
ルールに対してのこだわりが行き過ぎると食事内容や行動に柔軟さがなくなり、ほかの人と一緒に行動しづらくなったり、日常生活に支障をきたすこともあります。場合によっては、摂食障害や強迫性障害のような症状になっていく可能性も。
「最近ちょっとやりすぎているかも」と気づけたら、ダイエット思考から少し距離を置くことをおすすめします。
自分の状況を見直してみよう
「ダイエットを辞めたら食べすぎてしまうのでは」と思う人もいるかもしれません。
でも私は、ダイエットを意識していたときの方が食べ物に対する執着が強く、美味しそうな食べ物の写真を見ては我慢し、またそれがストレスになって過食につながっていました。ダイエットをしていないときよりも、食べ物について考えることが生活の中心になっていたのです。
苦しいダイエットが、本当に自分のためになっているのかどうか、そしてダイエット思考が体調や精神面、交友関係、生活スタイルなどで自分に無理を強いていないか見直すことも大事なポイントです。
食べすぎてしまうということは、たくさん食べることで満たされない気持ちや我慢を誤魔化そうとしているかものしれません。そんなときは、心の中だけで今の自分の気持ちをうやむやにせず、紙に書き出してみましょう。自分が何を思い、感じているのかをアウトプットしてみると、意外な本音が出てくることもあります。
自分にとってちょうどいい生き方って?
今の私にとって、食べることは生活の一部としてフラットな存在になりました。同じ物事でも、判断する基準が以前のように「太るかどうか」という動機ではなくなったので、気持ちが楽です。
例えば、こんなふうに思考が変わりました。
・「お菓子やジャンクフードは太るからNG」
→「食べすぎると気分が悪くなったり肌荒れが起きるから控えめにしよう」
罪悪感なく美味しく食べれば、心が満足して必要以上に食べなくなる。
・「寝る前に食べると太るから食べちゃダメ」
→「寝てる間に食べ物を消化すると体が休まらない、起きたときに体が怠くなるから控えよう」
どうしてもお腹が空きすぎて眠れないときなどは、体に優しいものを我慢せず食べよう。
・「運動しなきゃ太る」
→「楽しさを感じられる運動をしよう」
体を動かしたほうが気分がスッキリ。体力があれば疲れにくくなる。
このように、同じような行動でも「◯◯でなければ太る」というAll or Nothingな思考ルールから「◯◯した方が気分がいいな、体に優しいな」という前向きな考え方に変化しています。
もしできなくても、自責することもなくなりました。
自分の気持ちに寄り添って生きていく
誰かや何かの情報を元にして物事を判断することは、ある意味で楽かもしれません。でもそれは、自分の体で体感することや、そのときの状況によって臨機応変に行動することを疎かにしてしまいがち。そして、ルールからはみ出してしまったときに自己嫌悪に陥りやすくなっていくのではないでしょうか。
ダイエット思考に限らず、「〜しなきゃ」「〜でなければ」と思う癖で苦しさを感じているなら、なぜそんなに自分を追い詰めているのか、そのやり方は自分に合っているのかどうか立ち止まって見直すことが大切です。
1人でどうにもならない、不安がどうしても拭えない、また摂食障害を疑われる場合などは、カウンセリングや医療機関を受診してみることもおすすめです。
ルールに合わせて無理に我慢するのではなく、自分の気持ちに寄り添って生きていく方が「ちょうどいい生き方」に近づくのだと私は思っています。