写真=本人提供/Laundry Box

前回のコラムでは、極端なダイエットを経て自分の体と食べ物との関係がおかしくなってしまったこと、そして「過食しないように我慢しなければ」「早く痩せたい」と焦ったりコントロールしようとしていたのは『枯れた木の枝先を見ているようなもの』だと表現しました。

でも実は、枝先ではなく、根っこに問題があったのです。それに気づいてから、過食症の症状が回復へ向かっていきました。

根っこの問題とは何か

私にとって本当に大事だったのはダイエットではなく、『自分で自分を否定し続けていたこと』、そして『自分の気持ちに蓋をしようとしていたこと』に気づくことでした。ヒントは意外な場所にありました。

25歳のとき。私はフルタイム勤務の会社を辞め、短期で働けるオフィスワークのアルバイトをしていました。その頃は過食症の症状がひどく、毎日に希望が見いだせないような日々を送っていました。

お金の余裕も無いのに過食するために食費がかさみ、自己嫌悪から人と接することを避けるように。心から喜怒哀楽の感情が薄れていき、何をやっても気持ちが晴れず、自分が自分ではないような状態でした。

そんな状態では、働くこともつらいです。でも仕事を辞めたら家賃が払えず生活が出来ない….。心療内科のカウンセリングにも行きたいけれど、勇気が出ない….。

自分にとっての適職が何か分からず、将来に対してひたすら不安がありました。当時の私にとっては、出口の無い絶望の縁を歩いているような感覚だったのです。

ある仕事をきっかけに思考が変化した

写真=本人提供

そんな中、仕事で何千もの人のプロフィールデータを扱うことになりました。

自分の体や過食症に対する悩みを抱えながら、毎日たくさんの人の顔写真や全身写真を見ているうちに、ふと「同じ容姿の人ってひとりもいないんだな」と当たり前のことに気がついたのです。

しかも、プロフィール写真なので、みんなポジティブなイメージで写っていました。私にとって、『ふくよかな女性=ダイエット広告やダイエット番組に出てくるネガティブなイメージ』だったのですが、そんなふくよかな女性も、プロフィール写真の中では、自信満々でにっこり笑顔で写っていました。

そこでハッとしました。

「あれ?もしかして、ふくよかな女性でも、幸せに生きている人もいるのかもしれない。それなのに私はこのまま、太ることや自分の体型を気にしながらおばあちゃんになるのだろうか?それって、損してる生き方なのではないだろうか?」と感じました。

食べ物が敵ではなくなった

メディアから発信される『ふくよか=ネガティブ。痩せなくてはいけない』というイメージをそのまま内面化していたこと。そして物心ついてから今まで、ずっと自分のことを否定し続けてきた人生だったことに気づいたのです。

すると、『容姿も体型も人それぞれ。小さい頃からぽっちゃりしてたなら、それが私の体質かもしれない。自己否定を辞めて、太っててもいいや!と思ったら、どうなるだろう?』

誰に教えられたわけでもなく、そんなひらめきが自分の中に生まれました。

それから私は、少しずつ『今の自分』に向き合うことを意識し始めました。

痩せたときに着ていた服は、見るたびに落ち込んだりプレッシャーを感じると思ったので一気に処分しました。体重を測るのをやめ、ネットでダイエット情報を追うのもやめました。

そしてカロリーを元に食べ物を『考えて選ぶ』のではなく、食べたいものを『自分の心に聞いて食べる』という食事方法に変えました。あらゆるダイエット思考をやめ、自分の素直な気持ちに従うことにしたのです。

写真=本人提供

ハンバーグが食べたいならハンバーグを。カレーが食べたいならカレーを、自分に食べさせてあげるようにしました。

「太るかも」と気にするよりも目の前の食事を美味しく味わうこと、「これが食べたい」という自分の欲求を満たすことで心も満足するようになり、「美味しい。お腹いっぱい、もういらない」という感覚が数年ぶりにわかるようになりました。

それまでずっと苦手意識のあった自炊にも取り組むようになり、料理が好きになりました。私にとって食べ物が敵ではなくなったのです。

ダイエット思考を手放したら、痩せた

半年ほど経つと、自分の中で『過食したい』という気持ちは起こらなくなっていました。過食のときに手当たり次第に食べていた大量のジャンクフードやお菓子も適量がわかるようになりました。

ダイエットを始めた思春期以来初めて、ダイエット以外のことに目を向けたり集中できるようになり「体型がどうあれ今の自分を大事にしよう」と毎日を楽しめるようになったのです。

すると驚くことがありました。温泉に行ったときだったでしょうか。数カ月ぶりにたまたま体重計に乗ってみたところ、以前よりも体重がガクンと減っていたのです。

痩せたいと思うほど過食がひどくなり体重が増えていたのに、『ダイエット思考を手放したら痩せた』という想像もしなかった現象が起きました。身も心も軽くなっていたのです。

つらい気持ちを、どう対処すればいいかわからない

しかし…あるとき、人間関係の悩みで、激しい怒りと悲しみを感じる出来事が起こりました。それまでの私なら過食することで自分の気持ちを紛らわせたり抑え込んでいましたが、つらい気持ちを抱えたときに、どうすればいいのかわからなくなってしまいました。

私にとって過食症という手段がなくなったときに、適切な感情の対処方法がわからないことに気がつきました。

話を聞いてくれる友達はいましたが、自分のネガティブな話が堂々巡りになり、迷惑をかけている気がしてさらに自己嫌悪。鬱々として情緒不安定になっていきました。

そこで私は、あらためて心療内科のカウンセリングに行ってみることにしました。

続きは、次回のコラムでお話していきます。

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