前回の記事の通り、無理なダイエットを機に心身のバランスを崩してしまった私が生理以外に長年悩んでいたもの。それが「摂食障害」でした。連載第3回はその頃の状態について、詳しく綴っていきたいと思います。
身体や食べ物にネガティブなイメージを抱いてしまう
まず、摂食障害は簡単にいうと「普通に食べること」が難しくなってしまう心の病です。きっかけはさまざまですが、私のようにダイエットから摂食障害に陥る女性は多いと言われています。
あなたはこれまで、ダイエットをした経験はあるでしょうか?そしてダイエットを意識し始めてから、より身体や食べ物に対してネガティブなイメージを抱いてしまったという経験はあるでしょうか?
もしそうなってしまっても、大抵の場合は時間が経てば「ふつうの感覚」に戻せます。しかし、摂食障害に陥ってしまうと、食べることや身体イメージに対して、極端で歪んだ思い込みを抱くようになり、日常生活を送ることや生きることさえもつらくなってきてしまいます。
摂食障害は、人によって症状が異なります。ざっくり3つに分けると、
- 食べることを極端に避けるようになる
- 異常な量を食べたあと、吐いたり下剤の乱用などで帳消しにしようとする
- 帳消し行為は無いけれど、自分でコントロールできないほど異常な量の食べ物を食べすぎてしまう
などが続くことです。
体重計に乗り、数字に一喜一憂する毎日
私の場合、さまざまなダイエット情報を追ううちに「あれは食べてはいけない」「これを食べてはいけない」という食べ物に対するルールを増やしていったのですが、それはすなわち、常に「食べ物を意識しないといけない」ということでもありました。
このため、頭の中ではいつも痩せることと、食べ物のことを考えていたのです。
ダイエットを始めた最初のうちは「炭水化物や甘いものを抜く」ことがマイルールでした。それが段々とエスカレートし、野菜ジュース、豆乳、ところてん、カロリーゼロのゼリーなど、出来るだけカロリーの低い食べ物で耐えしのいだり、いつの頃からか固形物を食べることに対しても嫌悪感を抱くようになり、断食をまねて食事を抜くことも増えていったのです。
極端なカロリー不足と栄養不足、いわゆる栄養失調の状態になり体重が減ったのですが、このとき私は「食べなければ痩せるんだ!」とポジティブに思い込んでしまいました。
この頃は朝晩2回、体重計に乗り一喜一憂していました。体重が減るとその日1日は嬉しく、体重が少しでも増えると自己嫌悪感にとらわれ「私の何がいけなかったのか」と反省し、どんどん体重が中心の生活になっていきました。
食べないことで、実は「太りやすい身体」を作り出していた
通常であれば、「食べる」ことは、太るためにあるものではなく、心身の健康を保ち生きるために必ず必要なこと。そして、ときには周りの人たちと楽しみを共有できるコミュニケーションのひとつでもあるのですが、当時の私からは、そのような感覚がすっぽり抜け落ちてしまっていました。
そして「食べない」ことは、自分の中では「食欲を我慢できて偉いこと」だと思い込んでいました。でも、実はこのときの私は、本来の意図とは真逆の行為をしていました。
必要最低限のカロリーと栄養を無視し、極端に食べ物を減らして身体の代謝を落とし、いざ食べたものの栄養を蓄えやすい身体(太りやすい身体)を作り出していたのです。
「心の隙間を埋める」ように食べる
気づくと「普通の食事」というものが分からなくなっていました。例えばレストランのメニューにあるセットものや、定食のメニューを見ると「こんなに食べたら食べすぎだ」と思っていたのです。会食などで食べざるをえないシーンがあると、そのあとはひどい罪悪感にさいなまれ、イライラして落ち着きませんでした。
今思うと定食などは栄養バランスのとれた食事だったのですが、当時は「食べないことこそ正義」だと思い込んでいたので、受け入れがたい感覚になってしまっていました。
30キロという大幅な減量をして、どちらかというと拒食気味の状態だったのですが、あるときそれが爆発し、今度は極度な過食に陥りました。自分でコントロールできないほどの異常な食欲で、何を食べても、お腹いっぱいになっても、満足できなくなってしまったのです。
「お腹が空いて食べる」ではなく「心の隙間を埋めるために食べる」というような感覚でした。
また、過食といっても、大量に食べれば何でもいいわけではなく、菓子パンやお菓子などの甘いものや加工品、大量の炭水化物を欲していました。それらは、それまで自分の中で禁止していた食べ物たちでした。
イライラからくる過食で負のループに
私は吐かないタイプだったので、体重はどんどん増えていきました。食べた後の罪悪感も苦しかったですし、太っていく自分が昔よりもっと醜く思え、自己嫌悪する毎日。耐え難いつらさを感じていました。
「これはおかしい」と感じてから、クリニックへ行ったり摂食障害に関する本を読んだりして回復に向かう情報を探しましたが、治るように思えず、痩せたい気持ちを諦められない自分もいて、どうすればいいのか、全くわからなかったのです。
いつの間にか、ストレスやイライラ、表現できないモヤモヤとした感情を抱えた時に過食をすることが日常のサイクルにできてしまいました。
「ネガティブなことは言ってはいけない」
「自分はなんてダメな人間なんだろう」
「痩せて綺麗になりたい」
そう思えば思うほどネガティブな感情がループし、過食症はひどくなっていきました。
そして必死に「食べること」「食べないこと」をコントロールしようとしていましたが、それは枯れた木の枝先を見ているようなものでした。
今だからわかることですが、実は過食をしてしまうことは、当時の自分には『必要なこと』でした。自分にとってつらいことなのに、それをしたくなるほど心に負担がかかっていたのです。
私がそんなループから抜け出せたのは、まさに木の根っこである、『根本の問題』に自分で気づいたことでした。そのお話については、また次回お話しますね。