結婚前は「まだ結婚しないの?」。結婚したら「子どもはまだ?」「どうして子どもを作らないの?」と言われる。
世間はなぜ、そんなに他人の人生が気になるのでしょう。1つクリアすれば、また1つ、また1つ…と、まるで次々と課題を突きつけられているよう。自分のことなんて放っておいてくれればいいのですが、もはや他人の干渉は社会で生きる定め…なのかもしれません。
また、見ず知らずの人とも交流も気軽にできるSNSでは、楽しいこともある反面、ときには攻撃的な言葉を目にしたり、はたまた直接言われたりすることもありますよね。
自分にとってストレスを感じる言葉を投げかけてくる人や、SNSから距離を置くことはもちろん大切でしょう。しかし、この方法がいつでも万能なわけではありません(だれしも、自分とは合わない人がいるコミュニティ、職場や家庭、学校などに属しているはず)。
そこで今回お話ししたいのは、「他人の言葉に少しでもストレスを感じないようにするためのセルフケア」についてです。
あなたを傷つける言葉はたくさんあるけれど、どこかに絶対出口がある
だれかからの「よかれと思って発言」。元気がないときや、自分に自信がなくなっているときはより一層、この言葉に傷つけられることが多いと思います。
私自身、不妊を経験した身としては、この「よかれと思って発言」が1番厄介だと思ってきました(笑)。
「子どもはまだ?」「どうして子ども作らないの?」「子どもは早い方がいいよ」「老後が寂しいんじゃない?」
はい、努力しています、あなたの知らないところで…。
あまりの質問攻撃にヘトヘトになっていた当時の私は、「どうして相手の事情も知らずにプライベートなことを聞いてくるんだろう。持病がある人や、病気で子どもを諦めざるを得ない人だっているんですよ!」と心の中で叫び、いつもプンプンしてました。そして、「この世を変えたい」「全世界からそんな不謹慎な発言をなくしたい…!」とまで意気込んでいたのです。
でも今は、少し考えが変わりました。
もちろん、今でも不謹慎な発言がなくなってほしい気持ちは変わっていません。また、不妊当事者として、つらいことや苦しいこと、支えになったことを多くの人に知ってもらうためにこうしてメディアなどで発信もしていく。小さな積み重ねが、社会を変えると信じています。
けれど、すぐそばにいる他者を変えるのってすごく難しいし、他人からの言葉もなかなか止められないですよね。
ならば、「私自身の行動をまず最初に変えていこう」という考えにたどり着いたのです。
ではどのように自分を変えてきたか。次にお話しするのは、無礼な言葉やあなたを傷つける言葉を言われたときにおすすめしたい、ちょっとしたセルフケアについて。ポイントは、相手に何を言われたかよりも、誰に言われたのかということです。
目の前の人を、3つのタイプに分けてみよう
私が以前、心理学の講座で教えてもらったセルフケアの方法を少しアレンジしたものをご紹介します。心の中で、目の前の人を以下の1、2、3番のどれかに仕分けしてみましょう。
1. あなたにとって1番大切な人
2. 大切な人、信頼している人、支えになる人
3. 通りすがりの人、どうでもいい人、その他
1、2、3に分類させてもらうんです。心の中でこっそりと。
例えば、私の場合だとパートナーは1番。ボランティアで一緒の仲間や、心の内を話せる不妊カウンセラーの仲間は2番。そして、会うたびに「子どもはまだ?ちゃんと親孝行しないとね」と嫌味を言ってきた親戚は申し訳ないけれど、どうでもいいので3番に。
全く知らない隣の席のご老人に「あなたたち子どもはいるの?ぜひ子どもを産んでね」と言われたこともありましたが、通りすがりの人なので3番。
ネット上で適当なことを言われても、3番です。
世の中は“3番だらけ”。周囲の言葉を受け入れるか入れないかは、あなたが決めていい
この仕分けはあなたが自由に決めていいんです。
まさか自分が「どうでもいい人」に仕分けされているなんて、ご本人は思ってもいないでしょう。あなただけが知っていて、あなただけに決定権があります。どうでもいい3番の人に腹を立てるのはもうやめて大丈夫なんです。だって、その人は「どうでもいい人」なんだから!
試しに、自分の周りにいる人を1・2・3に当てはめてみてください。お気づきかもしれませんが、ほとんどは3番です。そう、世の中は3番だらけなのです。
また、「2番だった人が3番に…」など、この分類は流動的に変化していってもいいと思っています。
私自身、以前このような経験をしました。
あるとき、不妊仲間が妊娠した途端に「次はあなたね!早く子どもを作ってね」とこちらを見下ろすかのように言ってきたことがありました。その人からの言葉は、不妊治療中の私たちが1番言われたくない言葉だったのではないでしょうか。不妊当事者であったことをすっかり忘れて、こんな発言もできるんだな、と思った記憶があります。
これまで私には、距離を置いて3番になってしまった人が数人います。一方で、私が死産を経験したときに親身になってくれた友人が2番になったりしました。相手との関係性ってどんどん変化していくんですよね。それでいいんです。
また、もうひとつ大切なのが、1と2に分類された人との関係を強めることです。
怒るとパワーが消耗して疲れますよね、その分のパワーを、あなたの大切な人たちとの関係を強固することに使いましょう。
特に、1番に当てはまる「もっとも大切な人」(私の場合はパートナー)との絆を強固することは重要だと思っています。
たとえ社会が冷たく味方してくれないときでも、「私には理解者がいる。そして私はその人を信頼しているし、相手も同じだ」と思うと、心がぐんと穏やかになるからです。また、1番の人の存在は、私の心に影を落とす3番の人たちへのバリアだとも思っています。
パートナーの力ってそれだけ効果があるんです。だからこそ、前回のコラムで書いた「パートナーへの気持ちの伝え方」を参考にしてもらえたら嬉しいです。
そして最後に。
2番に分類された人は応援団です。2番の人たちは、流動的なポジションだと思うので、複数いると安心ですよね。
私が以前養子縁組を考えたとき、2番の人たちは「きっと賛成してくれるだろう」「養子を歓迎してくれるだろう」と心の励みになっていました。だから、2番の人たちは新しい道に進むときに背中を押してくれる存在だと思っています。
私も、だれかにとって2番でいられるよう、心がけていきたいです。