妊活目的で婦人科に行ったら、卵巣が腫れていることがわかり腫瘍の摘出手術をしました。摘出した腫瘍を詳しく検査すると、卵巣がんになる可能性がある「境界悪性腫瘍」であることが判明。医師に、卵巣と子宮の全摘出をすすめられました(詳細は第1回をご覧ください)。
その後、大学病院へ転院。複数の医師によるグループ診療が行われ、現状は腫瘍がなく怪しい所見もないことから、「摘出せずに不妊治療する」選択を医師に了承してもらえたのです。
再び腫瘍ができる前に、1カ月でも早く妊娠できるようにと、不妊外来に通い始めました。
(第1回:28歳OL、子宮全摘出をすすめられる。子どもが欲しくて婦人科に行ったのに)
第2回となる今回は、疾患を抱えながらの不妊治療と妊娠・出産について、実体験をお届けします。
私の場合は医師から不妊治療を認めてもらえましたが、病状によっては治療方針が大きく変わってくるので、あくまで一個人の体験談であることをご了承ください。
とにかく通院が大変だった不妊治療
まず不妊治療を始めるにあたり、境界悪性腫瘍の経過観察(月1回の診察と採血、半年に1回のMRIもしくはCT検査)をしていた、同じ大学病院の不妊外来に通うことに。
ですが、私の場合はいつ腫瘍が再発するかわからない状況です。主治医からは「妊活はとりあえず期限を決めて、半年で授からなかったらまたそのときの状況を診て相談しましょう」とひと言。
腫瘍が再発することを考えてしまうと、気持ちが暗くなる一方なので、夫とは「今は妊活に集中しよう」と話して不妊治療に挑みました。
不妊外来は、大きな大学病院なので信頼がおけるだろうと思っていましたが、正直、懐疑的になることがしばしば。
当時の私の年齢が28歳と、不妊外来に通うには若い患者だったこともあり、担当する医師も若くやや不安でした。また、大学病院ということもあり研修医も多いためか“実験台”のように感じる場面も多々ありました。
必要な検査がされていなかったり、内診中にわからないことがあり他の医師を呼びに行く際にしばらく放置されたり……なんてことも。「ここで不妊治療するのは時間が掛かりそう」と感じました。
不妊治療は排卵の確認などで頻繁に通院する必要がありますが、この大学病院は家からアクセスも悪かったので難しいと感じる側面も。
そこで不妊治療による妊娠の実績が多く、自宅からも通いやすい不妊治療専門のクリニックへ転院することにしました。
こちらのクリニックに転院し、まず驚いたのが大学病院ではされなかった検査があったこと。不妊治療は最初にさまざまな検査をして、妊娠しづらい原因などを探りますが、このクリニックで初めて「子宮鏡検査」というものを受けました。
これは子宮の中を胃カメラのようなもので観察する内視鏡検査です。その結果、私の子宮には大きなポリープが3つあることがわかりました。ポリープは子宮内に大きな壁を作っている状態になるため、精子の通りを邪魔します。
私がこれまで妊娠できなかった理由はハッキリとはわかりませんが、原因のひとつになっているものがわかりホッとしました。ポリープの摘出は日帰り手術ができたので、術後1カ月してから妊活再開です。
もうひとつ、不妊治療中に知ったことは、「卵巣の腫瘍を取ると、卵巣年齢が一気に上がる」ということ。こちらのクリニックに転院してから、卵子の数をもとに卵巣年齢を算出する検査をしたところ、当時28歳だった私の卵巣年齢は、なんと42歳以上でした。
同年代よりも卵子の数が少なく、排卵しにくい——つまり「妊娠しにくい」と明確に告げられたのです。ちなみに、卵子は年齢とともに減っていくため、増えることはありません。
卵巣腫瘍の手術をすると、腫瘍の周りも切除するため、そこに卵子が含まれていて、健康な卵子も一緒に摘出してしまうとのこと。
腫瘍を摘出する際、医師からそんな説明は一切なかったため「聞いてないよー」と思いましたが、聞かされたところで「じゃあ手術やめます」とはならなかったので、これはもう仕方がありません。
やっと妊活スタートラインに。人工授精を開始
大学病院の不妊外来に通い始めたのが2019年3月で、クリニックに転院して子宮ポリープを摘出したのが同年9月。妊活を再開できたのが10月でした。主治医から「妊活はとりあえず半年」と言われていましたが、実際には半年経ってもスタートラインにすら立っていません。
幸運にも、このとき卵巣は腫瘍の再発の疑いがなく、問題がないとの医師の判断で、妊活を続けることを了承してもらえました。
ここであらためて不妊治療の方法を選択することになりました。疾患を抱えながらということで、1カ月でも早く妊娠したかった私たちは、確率を上げるために人工授精を行うことにしました。
人工授精よりも確率が高い体外受精は、大学病院の主治医からNGを出されていました。体外受精は採卵する際に、卵巣に針を刺すため、境界悪性腫瘍の細胞が残っている場合、卵巣外に細胞を散らす危険性があるからとのことでした。
できることが限られ、卵巣年齢も高いと言われ、このまま子どもがいない人生を送るのかな、と夫と話すこともありました。不妊治療をしていると、妊娠への期待が高まるので、生理が来るだけでかなり落ち込みます。
また人工授精の場合は、排卵のタイミングを正確に診るために3日連続で通院しなければならないこともあります。いくら通いやすい場所を選んだとはいえ、仕事の都合をつけて通うのはなかなか大変なことでした。
人気のクリニックだったこともあり待ち時間は長く、最後の1人になるまで名前を呼ばれなかったときは、自分の存在を忘れられていないか心配になりました。
私が通っていたクリニックでは、人工授精は1回約3万円。自治体から補助金が出たので最終的には負担は軽くなりましたが、1回の通院で支払う額が大きかった印象です。2022年4月からは人工授精も保険適用になるということで、今後不妊治療をする方の負担が軽減されるのは喜ばしいことだと思います。
不妊治療中は気が滅入ることが多いですが、病院にいるとき以外はそのことを考えず、なるべく仕事と趣味に時間を割くようにしました。
また、夫と一緒にクリニックの近くにある美味しいお店を探して、ランチをして、通院が嫌にならないように楽しみを見つけるようにしました。いま振り返っても、これはやって良かったなと思います。
子宮ポリープを取って3カ月、ついに……!
クリニックで人工授精をすること3回、2019年12月に妊娠しました。子宮ポリープを取って本格的に妊活をスタートしてから、妊娠までに掛かった期間は3カ月と短く、転院して本当に良かったと思いました。
もちろん、出産まで油断はできません。妊娠は女性ホルモンの分泌が増えるため、境界悪性腫瘍の進行を早めるリスクがあります。妊娠がわかってからは元の大学病院の産科に通院・分娩予約をし、卵巣の経過を診てもらう婦人科とあわせて通いました。
幸い妊娠期間中のMRIや診察でも、怪しいものが見つかることはなく、無事に出産予定日を迎えました。
陣痛はこの世のものとは思えないほど痛かったけれど、出産自体は問題なく、母子ともに体調も安定していました。現在、子どもは1歳になり、すくすく育っています。
産後1年2カ月で再び、腫瘍らしきもの
子どもが生まれてからも月1回の通院を欠かさずに、半年に1回はMRIかCT検査を受けていました。しばらくは何も問題なく、通院しても主治医と雑談をして終わるくらい経過は良好。
大学病院なので診察時間よりも待ち時間の方がはるかに長く、症状も特にないのになぁと思いつつ通院していました。
出産から1年2カ月が経ったある日、再び、MRI検査で右の卵巣に腫瘍が見つかります。サイズはかなり小さいものの、この頻度で再発するのは境界悪性の可能性が高いとの診断で、腫瘍とともに、子宮と卵巣の全摘出をすすめられました。
最初に病名がついたときから覚悟はしていました。でも、いざそのときが近くなるとやはり動揺がありました。「全摘出」という言葉が重くのしかかります。
手術には2週間の入院生活が必要で、その間、子どもはどうするのか……など、夫といろいろ相談しました。
次回は、再び全摘出をすすめられてから手術に至るまで何を考えたか、そして実際に子宮と卵巣を全摘出した2022年1月から、現在までの経過をお伝えできればと思います。
第三回はこちら
『31歳で「子宮・卵巣全摘出」。決断の理由と、術後の今思うこと』
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