子宮や膣を温める「子宮温活」という言葉を見聞きしたことがある人もいるかもしれません。
最近ショーツに貼り付けるタイプの温熱シートや、よもぎ蒸しなどを自宅で手軽にできる「温活グッズ」が注目されています。つらい冷えに悩んでいる人にとって魅力的なアイテムなのではないでしょうか。
それらの中には「生理痛の改善」や「妊活のため」などを謳っている商品も見かけます。実際に商品のクチコミをみると「生理痛が楽になった」、「妊活中なのでリピートしています」といった書き込みも見られます。
はたして、膣を温めることで妊活や生理痛に対する効果はあるのでしょうか?
産婦人科医の柴田綾子先生に、膣を温めることによる効果の有無や、温活グッズ使用時の注意点を聞きました。
生理痛の改善・妊活効果の科学的根拠はない
— よもぎ蒸しパットなど、膣まわりを温める「温活グッズ」が増えています。「膣を温める」こと自体は問題ないのでしょうか?
柴田先生:温めること自体は問題ありません。温めることで生活が過ごしやすくなるなら、温活グッズなどを使用して大丈夫です。
ただそれによって妊娠しやすくなったり、生理痛の原因が改善するというエビデンスや根拠はありません。体が温まることでリラックスできて、少し痛みが「和らぐ」ことはあるかもしれませんが、それ以外の効果はとくにありません。
— 妊娠しやすい体作りや生理痛の改善のための「子宮温活」が話題になることがありますが、実際には効果はないんですね。
柴田先生:子宮を温めることが生理痛や不妊症などの症状に効果があるという科学的根拠はありません。
もし「温かさ」で生理痛や妊娠率が変わるのであれば、寒い地域(北海道や北国など)では生理痛や不妊症が多く、暖かい地域(沖縄や南国)では生理痛や不妊症が少なくなるはずですが、そのようなことはありません。
子宮はお腹の中にあるので、子宮が冷えるということもありません。
手足やお腹を温めて「冷えの症状」を和らげるという目的であれば、おこなっていただいて大丈夫です。
ただし温めたからといって、妊娠しやすくなったり、生理痛の原因が改善するという根拠はありません。
肌トラブルや火傷に注意して使用しましょう
— 膣を温める際の注意点はありますでしょうか?
柴田先生:まず、膣は粘膜でおおわれたデリケートな部位です。火傷(低温火傷)には十分注意してください。また、使用するパッドやグッズが清潔でなかったり、膣内を洗浄しすぎると膣内の良い菌が減ってしまい、カンジダや細菌性膣症になりやすくなります。
デリケートゾーンに炎症や肌トラブルがあるときは温めるアイテムを使用しないでください。温めることで症状がさらに悪化してしまうことがあります。
そして、アレルギーや蒸れなどで肌荒れしてしまうこともありますので、肌に合わないと感じたときは使用を中止するようにしてください。そのほか、製品のパッケージなどに記載されている注意事項は必ず守りましょう。
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生理痛の改善や妊娠への効果は、医学的なエビデンスがないということがわかりました。
もちろん体を温めることで冷え性の改善や、心が安らぎリラックスできることは利点だと思います。よもぎやボタニカルの香りに癒されるという方も多いのではないでしょうか。
寒い季節の癒しグッズとして、火傷や肌トラブルに気をつけながら温活グッズを楽しむようにしましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。