画像=Laundry Box

こんにちは。uni’que若宮です。

『「ちがい」を活かすチームマネジメント術』連載も第4回目。前回まで、異なる性質の2人が近い距離にいることで生じるチームマネジメント上の問題について書いてきました。

今回も、とくに身近な人とこじれがちなコミュニケーションについて書いてみます。

テーマは「希望」。

家計とセックスを例にしてみましょう。

「希望」がなぜか「否定」に聞こえる

「希望」という言葉の意味は、goo国語辞書によると、

1 あることの実現をのぞみ願うこと。また、その願い。「みんなの希望を入れる」「入社を希望する」

2 将来に対する期待。また、明るい見通し。「希望に燃える」「希望を見失う」

とあります。

「希望」とは願いであり、「将来」に向かう「期待」や「明るい見通し」というポジティブなものであることがわかります。

しかしパートナーとの関係では「希望」を必ずしも素直には受け入れられないことがあります。

たとえば、同居中の交際相手や配偶者に、

「もっと広いお家に住みたいなー」

と言われたとします。先程述べたように「将来」へ向けた「期待」や「明るい見通し」なのですが、言われた側がなぜか「否定」されたような気になり、ケンカの火種になってしまうことがあります。

その「否定」には2つあり、1つは、未来への希望を「現状の否定」と捉えてしまう場合です。

「それって、今の家が狭くて不満っていうわけ?」という感じに。

純粋に、2人の「期待」や「明るい見通し」だと捉えられれば、「そうだね、いつか住みたいね!」だけでいいはずですが、それをネガティブに捉えて防衛してしまう(未来への希望を現在の否定と捉える反動的な傾向は、改善案に対し現任者や前任者が反発する、などの形で企業でもよく見られ、改善の足を引っ張ります)。

Photo by taylor hernandez on Unsplash

勝手に否定的に脳内変換し、怒ってしまったことも…

そして2つ目に、「安い男性のプライド」から「価値の否定」と取ってしまうケースもあります。「それっておれが甲斐性なしって言いたいわけ?」みたいに。

女性側には否定の意図はないのに、そう取るのには随分な論理の飛躍があるわけですが、こうした防衛が起こってしまう背景には社会的に男性が負わされていた役割や重圧もあります。

たとえば僕らの世代(1976年生まれ)においては、「一家の大黒柱」として家計を支えるのは男性の役割と教えられ、食事や旅行の会計は男性が持つのが当たり前であり美徳とされていました。

三高(「高学歴」、「高収入」、「高身長」)が理想の男性像としてメディアで喧伝され、「高い」のが男性の価値と刷り込まれました。

僕らは必死にお金があるフリをし、食べるお金がなくてもデートでは「背伸び」して雰囲気のいい飲食店を探し、相手のトイレ中にあたふたとお会計を済ませたものです。

「高い」とか「背伸び」という言葉に見るように、20世紀は高さが競われた時代でした。「高」度経済成長、「高」級ブランド、「高」層マンションなどなど…。職場では「昇進」を目指したレースが行われ、友人にまで「マウント」したりします。
徐々にこのバイアスは薄まってきていますが、40代以上の男性ではいまだにこの刷り込みに囚われている人が多い気がします。そして、旧来の価値観に囚われている男性ほど、相手の「希望」を自分への不満や否定と取ってしまうことがあります。

とくに、仕事を必死に頑張っていて、しかしなかなか思い通りにいかないフラストレーションを抱えているときに家庭内でそう言われると平静に受け取れません。

大企業で出世を目指していたときの僕がまさにそうでした。「もっと広いお家に住みたいなー」は明るい希望であるはずなのですが、それを

「今の部屋は狭いなー」

「それはあなたの稼ぎが足りないからだよー」

と勝手に、否定的であると脳内変換してしまい、怒ってしまった経験があります。

セックスにおける希望

Photo by Becca Tapert on Unsplash

「男のプライド」のもうひとつのあるあるとして、セックスに関しても同様の傾向があるかもしれません。

日本の男性はセックスについての女性の希望や要望をほとんどポジティブに受け止められないように思います。

たとえばセックスのときに「もっとこうしてほしい」とか「痛い」と言われただけで「あなたはテクニック不足だ」と否定されるように感じプライドが傷ついてしまったりするのです。

これは男性の自信のなさの裏返しのせいもありますが、女性の希望を過剰に「ダメ出し」だと感じてしまうのです(日本の不自然なまでの処女信仰もこうした防衛の裏返しかもしれません)。

セックスにおける「男のプライド」を変質させている原因として、男性がAVでしかセックスについて学んでいない問題もあります。AVで描かれるのは、男性主体の「女性を悦ばせる」図式だけで、女性の希望を聞きはしません(女性の言葉は「もっと激しく」とか男性の欲望を投影して「言わされている」ものばかりで、本来の女性の希望ではないことが多い)。

いろんな女性から話を聞くと、こうした「男のプライド」に気を遣って、女性側が希望を言えなかったり、我慢をさせていたり、抑圧となっているようです。とくに海外と日本の性教育を比べたとき、女性側がセックスに対して意見できるかどうかはかなり違う気がします。

しかし、セックスは当たり前ですが男性のためのものではなく、2人のものですし、2人で協働するものです。そしてその最適な形もペアによってちがいます。相手がどうしたいか希望を聞き、その上でお互いにできることを考え、工夫する。

それはチームマネジメントではごく普通のことですし、そういう意識がなければ協働ではなく一方的な押しつけや搾取になってしまいかねません。

「家計」や「セックス」はその一端ですが、こうした「男のプライド」のせいで女性の「希望」を素直に聞けず衝突したり抑圧したりする、ということがまだ結構あるのではないでしょうか。

[今月のやってみよう]

女性からの「希望」を否定と取ってしまい軋轢やすれ違いが起こってしまうのには世代や社会の刷り込みによる「男のプライド」の無意識バイアスのせいもあります。しかし、こうした認知のゆがみを自覚し気をつけることはできます。

女性の「希望」を受け止めて未来のための「明るい見通し」へと繋げるために、以下の3つのことを気をつけてみてはいかがでしょうか。

[STEP1] 認知のゆがみを振り返る

女性からの希望を自分への不満や否定として受け取ってしまったことはないか、振り返ってみましょう。それは「男のプライド」という無意識バイアスのせいではありませんか。まずはそれに気づくことが第一歩です。

[STEP2] 「2人の希望」と考える

女性の希望は必ずしもあなたへの一方的な批判ではありません。2人の将来への「期待」や「明るい見通し」として2人の真ん中に置いてみて「そうなりたいね」と一緒に考えてみましょう。

[STEP3] 後で話し合う時間をもつ

家計やセックスのことはなかなか話しにくいことでもあります。言われたそのときにはムッとしてしまって、まともには話せません。そういうときはまた時間をとって冷静なときにお互いの希望について話してみましょう。バトルではなく、お互い何ができるか、というスタンスで話し合えるといいですね。

繰り返しになりますが、「希望」とは本来、「将来」に向かう「期待」や「明るい見通し」であり、未来をつくるための言葉です。それを「否定」と受け取って衝突したり、抑圧してしまうのはもったいないですよね。

「男のプライド」は無意識のバイアスであり、男性自身を苦しくしてしまっているところもあります。その思い込みと「肩の荷」をおろし、2人で背負えるようになると女性の希望をポジティブに受け取れるようになるはずです。「希望」を本来の意味の、「未来への明るい希望」にしていけたらいいですね。

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