みなさんは、SRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights /性と⽣殖に関する健康と権利)についてご存じですか?

日本では、SRHRの浸透率が低く、SRHRが十分に保障されていないという現状にあります。

国際NGOプラン・インターナショナルは、日本におけるSRHRの実現を目指して、多様な専門家と連携し、「SRHR for JAPAN #一億人のためのSRHR」キャンペーンを2025年7月30日(水)より開始しました。

その取り組みの一環として、全国の15〜64歳の男女1万人を対象に、SRHRに関する意識調査を実施。今回は、その調査結果をご紹介します。

SRHRとは?

SRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights /性と⽣殖に関する健康と権利)とは、自分の心や身体、人生や人間関係について、正しい情報をもとに自分の意志で選び、決めることができる権利のこと。

たとえば、性や身体について正しい知識を得ること、望まない妊娠や性暴力から守られること、恋愛や生き方を自分で選べること、妊娠・出産・避妊について安心して選べることなどが含まれます。

SRHRは「選ぶ自由」と「尊重される権利」を大切にしています。

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プランインターナショナルのプレスリリースによると、国内のSRHRの課題には以下があります。

現在の日本社会では、SRHRが十分に実現されておらず、その結果として多くの深刻な問題が生じています。具体的には、性に関する正しい知識が広まっていないことや、性と生殖の選択に関わる権利が制限されることで、性別や性的指向を理由とした差別や不平等が根強く存在しています。女性やLGBTQ+の人々が自身の身体や生き方に関する自由な選択を行うことが困難である状況や、社会的偏見による孤立などの問題が依然として解消されていません。

また、性暴力は重大な社会問題でありながら、十分な対策が講じられていない現状があります。被害者が声を上げにくい環境もあり、性的同意の重要性も十分に認識されていません。

さらに、医療サービスへのアクセスが不十分なことも深刻な課題です。安全な避妊方法や緊急避妊薬(アフターピル)、性感染症の予防や治療、人工妊娠中絶 や妊娠・子育てに関するサポートを受けるための医療が、経済的・地理的な制約によって利用しにくい状況が続いています。

適切な性教育や医療を受けられないことから、特に弱い立場に置かれた人々の予期しない妊娠や性感染症のリスクが増加し、教育機会や雇用の不安定化に繋がりやすいという悪循環が生まれています。

SRHRが実現されていないことは、差別や不平等から貧困まで、複雑かつ多岐にわたる社会問題を生み出しており、根本的な対策と認識の向上が求められています。

このような背景をふまえ、日本におけるSRHRの現状を把握するために、今回の調査が行われました。

若年層ほど、SRHR認知率・理解率が高い結果に

日本のSRHRの浸透状況に関する調査の結果、認知率は25%、理解率は9%で、世代別でみると若年層への浸透率が高いということが分かりました。

その理由としては、近年の学校教育における性教育カリキュラムが充実してきていることや、SNSが重要な役割を果たしていることが考えられます。

一方、上の世代はSRHRに関する認知や理解が若い世代に比べて低く、テレビやインターネットが主な情報源であることが分かります。

若い頃に包括的な性教育を受ける機会がほとんどなかったうえ、現在も学び直す場が限られているため情報格差が大きく、若者の知識に追いつけていない現状があきらかに。

SRHRの重要意識と尊重意識の間には、大きなギャップも

SRHR重視意識・尊重意識に関しては、SRHRに関する以下の13の項目それぞれについて「どの程度大切だと思いますか」「普段の生活でどの程度尊重されていますか」を調査。

1. からだのプライバシー権

2. どのような性を生き、表現するかの自由

3. ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと

4. 安全で喜びのある性経験を持つこと

5. 性的な行為をするか、しないかの自由・選択権

6. 性的な行為の相手を選ぶ自由

7. 結婚の自由・選択権

8. 子どもを持つ、持たない自由

9. 恋愛の自由・選択権

10. 避妊の自由・選択権

11. 妊娠等での医療ケアへのアクセス

12. 性感染症等の医療ケアへのアクセス

13. 性と生殖に関する情報へのアクセス

SRHRを「大切だと思う気持ち」と「尊重されている実感」の間に生まれるギャップ

調査の結果、「大切だと思っている気持ち」と、実際に「尊重されている実感」の間には大きな隔たりがあることが明らかに。

特に、「病気・妊娠・出産・不妊治療に必要な医療」や「正しい情報へのアクセス」では約20%とギャップが大きく、社会的・制度的フォローの不足が背景にあると考えられるとのこと。

女性の30〜50代では、「性的な行為の決定権」が最も重要と考えられており、9割以上が重視していると回答。これは全体の中でも特に高い関心を集めた項目だそう。

 一方、男性の30〜40代では重視する人は8割にとどまり、関心度は他の項目に比べてやや低め。

また、「からだのプライバシー権」については、男女ともに10代と50〜60代で特に重視されている傾向が見られました。

尊重されていると感じる項目では、「恋愛・結婚の自由」と「からだのプライバシー権」が多くの世代・性別で上位に挙げられました。

一方で、「どのような性を生き、表現するかの自由」については、若年層では関心が高いものの、大人世代ではあまり重視されていないことが分かりました。

また、「性的な行為の相手を選ぶ自由」は、女性では上位に挙がった一方で、男性ではあまり重視されておらず、性別による意識の差も見られました。

尊重されていないと感じること1位は「ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと」

「ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと」は、全体の中で最も“尊重されていない”と感じられている項目でした。

特に20〜30代の男女でその意識が強く、仕事や日常生活の中でさまざまなジェンダー課題に直面している実態がうかがえます。

実際に、「女性であるだけで不利な扱いを受ける」「性的な視線にさらされる」といった女性の声や、「男らしさや甲斐性を求められ、声をあげにくい」といった男性の声も寄せられ、性別を問わず、固定的なジェンダー観への苦しさが浮き彫りになりました。

男性は女性よりSRHR認知10%高いが、重要意識・尊重実感は低い

男性のSRHR認知率・理解率は女性よりも高い一方、SRHRに対する重要意識は24%低く、尊重実感は13%ほど女性より低い結果に。

特に男性20-40代でその傾向が強いことが明らかになりました。

その背景には、男性はSRHRを知っていても「自分ごと」として捉えられていないケースが多く、当事者意識が育ちにくい現状が見えてきました。

また、SRHRやジェンダーに関する話題が、主に女性を対象とした文脈で語られることが多く、「男性にも関わる権利である」という視点が欠けがちであることが関係していると考えられます。

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「仕方なく応じていた」「自分の気持ちは後回し」尊重されていないSRHR

女性の回答では、「ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと」に加えて、「安全で喜びのある性経験をもつこと」も十分に尊重されていないと感じる人が多いという結果に。

「不機嫌になる相手に気を遣い、仕方なく応じていた」、「喜びを感じたことは一度もない」、「本当は性行為が苦手なのに、相手に合わせて無理をしている」といった声も寄せられ、性的な同意や尊重の不足が浮き彫りになっています。

一方、男性の回答では、2番目に多かったのが「性行為の相手を選ぶ自由が尊重されていない」というもの。

「妻のタイミングでしか性行為ができず、自分の気持ちは後回しにされがち」といった回答など、自分の望む性のあり方が実現できていないことがうかがえます。

ただし、SRHRは「したいときに性行為ができる権利」ではなく、「相手の意思を尊重すること」と同時に、「自分の気持ちをどう伝えるか」、「断られたときにどう受け止めるか」といった関係性の中でのコミュニケーションが重要です。

こうしたやりとりの力を育む機会が不足している現状が、男女それぞれの悩みにも表れていると考えられます。

性を学びたい10代は約7割、年齢が上がると学習意向が低減

若い世代ほど、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)への理解も、性に関する知識をもっと学びたいという意欲も高い結果に。

「学校では大事な部分がぼかされて教えられている」「女性ばかりがリスクを背負っている現状に対し、自分を守る術を学びたい」など、若年層からは性教育への不満や必要性を訴える声も。

性的同意については、認知率は85%と高いものの、具体的な理解を持っている人は全体の半数にとどまっています。「言葉は知っている」ことと、「本質を理解している」ことの差が可視化されています。

また、性的同意に関する学習経験は全体で18%と低く、特に50代以上では1割を下回る結果でした。

性的同意を重要だと考える人は約9割と高いですが、毎回同意が取れていると自信を持つ人は3割に満たず、認識と実際の行動には大きなギャップが。

「性的同意は大切」という理解は広まっていても、日常の実践に十分結びついていないことがわかりました。

誰もが自分の権利をしっかり理解し、尊重し合える環境作り

調査結果から、若い世代ほどSRHRへの関心が高く、もっと学びたいという声が多い一方で、性別や年代によって課題も多いことがわかりました。

だからこそ、教育や社会の仕組みを充実させ、誰もが自身の権利を理解し、尊重し合える環境を作ることが大切です。

一人ひとりがSRHRを自分ごととして考え、互いの「選ぶ自由」と「尊重される権利」を大切にできる社会になることを願っています。

<調査概要>
・調査期間:2025年 4月 25日(金)~ 4月 28日(月)
・調査方法:インターネット調査
・調査対象:男女×15-64歳、若年層(10-20代)に比重を置いて回収
・回答者数:10,000名

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