生理の後に倦怠感や眠気を感じたことはありませんか?
実はそれ、「貧血・潜在性鉄欠乏」かもしれません。
月経前に起こる不調、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)は認知が広がってきました。
<参考記事>生理前の不調はなぜ起こる?「PMS」の基礎知識(医師監修)PMSとPMDDの違いとは?生理前に強い絶望感や不安を感じるのはPMDDのせいかも(医師監修)
しかし人によっては生理前よりも生理後のほうが身体がだるい、眠気が強い、不安になりやすいという人もいます。
そこで今回は、月経後の症状について解説します。
月経後に起こる症状
「月経後症候群」とは、倦怠感や体調不良・憂うつやイライラが月経の終わりかけから終わった後に現れることですが、正式な病名や医学用語ではありません。いろいろな原因がありますが、「貧血・潜在性鉄欠乏」が隠れていることも多いです。
月経のあとに起こることがある症状
- 倦怠感
- 眠気
- 頭痛やめまい
- 不安になる
- イライラする
- 憂うつになる
- 集中力、注意力が欠ける
月経のあとに出てくる症状は、貧血やホルモンバランスの乱れ、月経中の睡眠不足や食生活の乱れなどが原因となっていることがあります。くわしく見ていきましょう。
原因1:貧血・潜在性鉄欠乏
生理中は経血とともに鉄分が失われてしまうため、生理が終わる頃に貧血になってしまうことがあります。特に、出血量が多い人は注意が必要です。
貧血は、血液検査でヘモグロビンの値が低い状態です。潜在性鉄欠乏ではヘモグロビンの値は正常で、フェリチンという「貯蔵鉄」が低くなっている状態のため「隠れ貧血」ともいわれています。
月経後の症状の原因が貧血である場合、経血量が多い「過多月経」である可能性があります。
しかし、自分の経血量が多いか少ないかは、周りの人と比べる機会もないので判断しにくく、自分が過多月経であることに気づいていない人も少なくありません。
生理の量の1つの目安として、こちらのチェックリストを参考にしてみてください。
<過多月経かも?チェックリスト>
- 普通のナプキン1枚を1時間以内に交換する
- 昼間に夜用ナプキンを使う日が3日以上ある
- 以前より生理の量が増え、8日以上つづく
- 経血にレバーのような塊が混じっている
- 健康診断で貧血を指摘されたことがある
過多月経は、女性ホルモンの状態や、子宮のサイズが大きいこと、子宮筋腫や子宮腺筋症などの婦人科疾患が原因になっていることがあります。
<参考記事>「経血量が多い」は婦人科疾患の可能性も。まずは病院で検査を(産婦人科医インタビュー)
原因2:更年期やホルモンの乱れ
月経周期によって起こる女性ホルモンの変動で、体調に影響が出ることがあります。
また、更年期に入って月経が不規則になるころから女性ホルモンは徐々に減少し始め、年齢とともにさまざまな不調が現れます。若いころはPMS(月経前症候群)に悩まされていた人も、更年期に近づいて生理後の倦怠感の方に悩む方もいます。
また、女性は甲状腺ホルモンの異常も起こりやすいです。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)は20~30代に多く、動悸・息切れ・情緒不安定などの症状がおこります。
橋本病(甲状腺機能低下症)は30~40代に多く、肌の乾燥、むくみ、便秘、気力低下などが起こります。
生理後の症状が続く場合は、「更年期障害」や「甲状腺ホルモン異常」の症状が現れている可能性もあります。
原因3:生理中の睡眠不足や食生活の乱れ
生理前から生理中にかけて食欲が減退して栄養が不足しがちになったり、逆に食欲が旺盛になりすぎてしまうことで食生活が乱れがちになります。生理中の食生活の乱れや偏りが、生理後に体調不良となって現れることがあります。
また生理中は眠りが浅くなり、眠りの浅い日が続くことで、強い眠気や倦怠感などが現れる原因になります。
<参考記事>生理前や生理中に眠くなるのはなぜ? 眠気の原因と対処法(医師監修)
症状を改善するには
なるべくストレスの少ない生活を意識して、栄養のある食事とたっぷりの睡眠をとることを心がけましょう。
生理後の症状に不安を感じる人は、婦人科医に相談してみてください。
貧血、更年期、ホルモン、生活習慣の乱れなどそれぞれの原因によって、低用量ピルや漢方薬、経口鉄剤、ホルモン剤などを使うことで症状がよくなることがあります。
月経前後の症状の確認のために、まずは月経と一緒に前後に現れる症状がどのようなものか記録しておくことが大切です。
<参考>一般財団法人 女性労働協会内(厚生労働省委託事業)「働く女性の心とからだの応援サイト」
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。