性交痛の悩みは人に相談しづらいだけでなく、適切な治療法も人によって異なるため、自分にとって最適な治療が見つけづらい状況があります。

私は、約10年にわたり性交痛に苦しんでいました。性交痛があることで、20代の頃は恋愛を楽しむ勇気が持てませんでした。今も完治はしておらず、服薬しながら生活をしています。

性交痛の治療を始めて10年、結婚へ

この10年、性交痛を少しでも改善させるため、文字通り東奔西走し、様々な治療に取り組んできました。

そして、今は、痛みはあるもののセックスはできています。治療当初と比べたら考えられない進歩、いや、飛躍です。

そして、2024年6月に結婚をしました。これは本当に運が良かったとも言えます。

というのも、結婚するためには、その前に男性とお付き合いしなければなりませんし、お付き合いという場面において、私は性交痛という大きな障害を抱えていました。

この連載では、私が受けた性交痛治療の一部を紹介しつつ、パートナーに対しての性交痛の伝え方などもお伝えできればと思っています。

ただ、性交痛の原因は人それぞれで、合う治療も人によって違います。もし、性交痛に悩んでいる方がこの記事を読まれているとしたら、こういうケースもあるんだなと、あくまでも1つの例として参考にしていただけたら嬉しいです。

セックスが痛いのは当たり前だと思っていた。最初のクリニックで言われたこと

大学1年生の冬に、当時のボーイフレンドと初めて試みたその時からずっと、私にとってセックスは痛みを伴うものでした。何回試しても、痛すぎて膣に何も入れられないか、無理やり挿入して脂汗をかくかのどちらか。だから、セックスは痛いものだと思っていました。

周りの友達は「痛くない」と言うけれど、きっと彼女たちは私よりずっと痛みに強いか、私が彼女たちよりずっと痛みに弱いか、そのどちらかだろうと思っていました。

周りの人が、特別なことを何もしなくてもできているセックスができないなんて、私は病気ではないかと不安に思い、婦人科で相談することに。

当時生理不順で大学病院にかかっていたので、同じ病院へ行きました。多くの症例が集まる大学病院なら、きっと何か解決策が見つかるはずだと考えたのです。

ところが、医師は、私の話を聞くと「性器に異常がないか診るので内診台へどうぞ」と言いました。そして私は、膣にクスコ(膣内部を診察するための医療器具)を突っ込まれて絶叫したのです。

医師は、私に膣があるか、そしてそれが正しく子宮に繋がっているかを診察したようでした。診察後、医師から「性器には問題がない」と告げられ、「こういうのは彼女の方がわかると思うから」と女性看護師を紹介されました。

看護師は、痛くて挿入ができないのは気持ちの問題であること、彼氏に優しくしてもらえばうまくいくと思う、と言いました。当時のボーイフレンドは十分優しかったので、私は、これは私の気持ちの問題であり、セックスができない自分は人間として何かが欠けているのだ、と思ってしまいました。

「未完成婚コミュニティ」との出会い

大学生がお酒を片手に集まれば、夜も深まったタイミングでセックスや性の話になることはよくありますが、私はその話題に入れずにいました。

その場の軽いノリで「セックスが痛い」と話してみても、怪訝な顔をされるだけ。挙句の果てには「他の人と試してみればいいんじゃない?」と言われました。

私はメスの哺乳類として何かが欠落しているに違いない。いっそ、性転換して男性として生きた方が楽なのではないか、とすら思いました。

そんな中、たまたまネットサーフィンをしていたら、SNSで「未完成婚」女性のコミュニティを見つけたのです。

未完成婚とは、婚姻関係にあるけれども性交を行っていない男女のことを言うらしい。このコミュニティでは、性交痛や挿入障害のある女性たちが集まり、性交痛治療が受けられる病院や、治療に役立つツールの情報交換が行われていました。

真っ暗闇の中に、一筋の光が差したようでした。

クリニックを探す日々。まずはレーザー治療に

この頃はコロナ禍でしたが、行動制限が緩和されたタイミングで、SNSの情報をもとに、婦人科や女性泌尿器科、心療内科などを受診しました。カウンセリングや骨盤底リハビリテーション、鍼灸院も含めると10弱の施設にお世話になりました。

治療方針や診断は、医師によって全く異なっていて戸惑ったものの、その中でも納得度の高い説明をしてくださった病院にお世話になることに。

具体的には、主にレーザー治療とペインクリニックでの治療に長く取り組みました。

性交痛の治療をしているクリニックを見つけるのはハードルが高いし、クリニックの数も少ない。そのためレーザー治療を受けられる病院には、新幹線で通うことになりました。

新幹線で通うことになったクリニックの医師から、「あなたの腟前庭は赤く過敏な状態になっている。これが痛みの原因」と伝えられました。

前庭部痛―。前庭部痛とは、前庭部の粘膜が弱って、痛みを生じる症状のこと。

その医師の診察が、それまで聞いた説明の中でもっとも納得のいくものだったため、私はレーザー治療を受ける決心をしました。

ですが、通院費や治療費の負担が重すぎるため、親の援助を受けることにしました。このタイミングで、仕方なく自分の症状について母親に話しました。

今でも、母親に自分の性事情を把握されていることが、叫び出したくなるほど嫌に思うときがあります。

レーザー治療では、そもそも触るだけで痛い部分に、(もちろん麻酔はするが)レーザーを当てる。痛かったし怖かったけれど、明るい医師と看護師さんに励まされて、楽しく通うことができました。

通院のモチベーションを上げるために、現地に住んでいる友人と飲みに行ったり、1人で遊園地に行ったりしたこともあります。

レーザー治療の結果、これまで10あった痛みが7程度にはなったので、私にとってはある程度効果があったと思います。

ただ、痛みが気にならない程度までの最善を目指していたので、その目標には到達できませんでした。

性交痛で、ペインクリニックという選択肢

その後は、さまざまな治療に手当たり次第トライする時期が続きました。

クリニックだけでなく、膣ダイレーターを購入し挿入の練習をしました。実家暮らしのため、両親の寝静まった夜中に、下半身裸で挿入の練習をします。両親が寝たのを確認した午前1時過ぎから練習を始め、終わるのは午前3時頃。冬の寒い日も、睡眠を削りながら練習を続けた結果、体調を崩したこともありました。

そんな日々が続く中で、痛みの根本かもしれない箇所を取り除いたらいいのではないか?と思い、膣前庭部の痛む部分を切り取る手術も検討しました。

手術の相談をしに病院へ行くと、医師から「あなたの症状は手術に適応する。ただ、手術で完した人はおらず、手術を受けた人は皆ペインクリニックにも通っている」と言われました。

そこで、私は、手術後にどうせ通うことになるなら、性交痛を診てくれそうなペインクリニックのアタリをつけておこうと考えました。

これまでの経験上、婦人科でも性交痛を診てくれる病院は少ないことを知っていました。ましてや、ペインクリニックの中から性交痛を診てくれるクリニックを探すのは、もっと難しいように思いました。治療に臨む時間を、1秒でも無駄にしたくなかったのです。

そうして、診療内容に陰部神経痛を掲げるペインクリニックを見つけて、受診しました。

医師によると、「手術は痛みを改善する効果がある可能性もあるが、神経を傷つけてしまい逆に悪化する可能性もある」とのこと。そして、痛む部位の神経付近に麻酔薬を注射することで痛みを取る「ブロック注射」や、服薬での治療を提案されました。

前庭部の手術よりは、うんと低コストだったため試してみることにしました。

ブロック注射は、無痛分娩時の麻酔と同じように、背中を丸めて背骨の間に針を刺し、麻酔薬を入れます。注射の直後は、下半身の神経が鈍くなってふらつくのですが、今までの人生で経験したことのない感覚でちょっと面白かったのを覚えています。

私にはこの「ブロック注射+服薬」の方法が合っていたようで、ペインクリニックに通院するようになってからは、多少の痛みがありながらも、満足するセックスができました。

個人的にはさらに改善させたいし、どこまで改善するのか興味があるので、今でも服薬治療は続けています。これが、私の治療の経過です。

痛みを諦めずに治療できたのは、SNSで同じ悩みをもつ仲間に出会えたから

治療に取り組むにあたり、私はSNSで同じ症状の女性たちと繋がれたことが大きな支えになりました。

リアルではなかなか口にできない話題だからこそ、互いに知っている情報を伝え、励まし合う仲間がいたから頑張れたと思っています。

私が性交痛を自覚した10年前は、インターネットで検索しても、処女膜切開に関する記事しか見つけられなかったのですが、今は複数の治療方法がヒットします。

それでもまだ情報が少なく、あまり知られていない症状であることも実感しました。

ヒトの生殖に関わる重大な問題なのに、よく知られていないことや、治療の選択肢が限られること、治そうにもトライアンドエラーを繰り返すしかなくコストがかかることは、いち当事者として悲しく思うところです。

この過程のなかで、私は運良く今の夫と出会い結婚しました。

私と付き合うことを決めてくれたこと、セックスができない数カ月間を何も言わずに過ごしてくれたことに感謝しかありません。

でも、付き合った当初は、セックスのできない自分に引け目を感じていたことも事実です。今でも、彼と出会う前に治療していたかったとは思います。

この記事にたどり着いた、性交痛に苦しむ仲間へ

シンプルに辛いですよね。わかります、なんて軽々しく口にできませんが、あなたの身体的な、そして精神的な痛みに思いを馳せることを許してください。

私は、上に挙げたもの以外にも色々な治療法を試しましたし、お金も時間もたくさん使いました。

治療法のほとんどが自費でしたが、中には保険適用で治療が受けられたところもあります。

もしかしたら、今の世界にはあなたの痛みを治す方法は存在しないのかもしれません。でも、医療は日進月歩で進んでいます。明日には新しい方法が出てくるかもしれません。だから、どうか諦めないで。私も諦めずに治療を続けていきます。

性交痛に悩む女性がこの記事にたどり着き、治療を始めるきっかけになれば幸いです。

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