「処女膜強靭症(しょじょまくきょうじんしょう)」という症状を耳にしたことはありますか?
「タンポンが入らない」「セックスで挿入が上手くいかない」「挿入に痛みをともなう」という方は、処女膜が通常より硬い、処女膜強靭症の可能性があります。
処女膜とは
そもそも「処女膜」とは何なのでしょうか?
処女膜とは膣の入口にあるギザギザ状の粘膜のことで、厚みは1~3ミリ程度と言われています。
「膜」とは言いつつも、膣全体を覆っているわけではありません。月経の際の経血やおりものが排出されるための小さな穴があいています。穴の大きさや数は個人差があります。
初めての性交渉では痛みや出血を伴うというのをよく耳にしますが、処女膜は性行為だけではなく、スポーツや激しい運動、タンポンの挿入、自慰行為などでも破れることがあります。そのため、初めての性交渉で出血が出ない人もいます。
処女膜強靭症とは
「処女膜強靭症」とは、通常は柔らかいはずの処女膜が硬くなってしまっている状態のことを指します。生理の経血やおりものを排出する穴はあいているものの、その大きさが非常に小さく、膜が硬いため広がりにくくなっている状態です。
生理では問題ないことが多いため、性交渉の際にはじめて処女膜強靭症であることに気づく人も少なくありません。しかし、婦人科に行っても異常がないと診断されるケースもあるため、対応方法がわからず我慢している方も多いのです。
「経験不足だから」と誤った認識を持っている人や、「こういう体質だから」と諦めて、性行為や妊娠・出産の希望を断ってしまう人もいます。
処女膜強靭症は、自力で解決するのは簡単ではありませんが、手術やトレーニング(膣を広げるダイレーターなどを使ったもの)をすることで治療できます。
参考:セックスが痛い、怖いを助ける「ダイレーター」の使い方。婦人科医に聞きました
処女膜強靭症の治療法は?
処女膜強靭症の治療として、手術を行い処女膜に少し切り込みを入れ、膣を開きやすくする方法があります。
処女膜を切開、または切除することで、男性器やタンポンの挿入をスムーズにすることが可能です。
ただし、処女膜強靭症と思われている人の中に、それ以外の病気が隠れていることがあり、
その場合は手術ではよくなりません。
たとえば、以下のような病気は性行為痛の原因になります
・性感染症:性器カンジダ、性器ヘルペス、帯状疱疹など
・子宮・卵巣の病気:子宮内膜症・卵巣腫瘍
・女性ホルモンの低下:低用量ピル、産後、更年期障害、萎縮性膣炎
・膣痙攣・性交疼痛障害
そのため、まずは下記に当てはまる人には産婦人科や性機能障害の専門家での診察をおすすめします。
- 痛みが強すぎて性交渉ができない
- 挿入はできるが、痛みがあり苦痛
- タンポンや指すら入らない
- 性交時、痛みと共に出血をともなうことがある
処女膜強靭症の症状は性交渉のときにしか現れないものも多く、健康に害があるとは言い切れません。そのため、基本的には自由診療での治療になります。
症状次第では保険がきくケースもあるため、気になる方は一度産婦人科を受診してみるのがおすすめです。
処女膜強靭症にともなう悩み
処女膜強靭症は、健康への害はないものの、パートナーとの関係性や精神的な面で悪影響をもたらすことがあります。
挿入ができないことでパートナーとの関係に溝ができたり、性交渉に対して不安や恐怖心を抱いてしまったり、自分自身に罪悪感を感じてしまう人も。
こうしたセックスに関する悩みは人に相談しにくいと感じる場合も多いため、1人で悩みを抱えこんでしまうのも問題といえるでしょう。
性交痛を含め、セックスに関する悩みを打ち明けることは恥ずかしいことではありません。セックスレスなど他の問題に発展する可能性もあるため、勇気を出してパートナーや医師に話してみることをおすすめします。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。
参考資料:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/38/5/38_KJ00002386584/_pdf