子どもにからだのことを伝えるとき、親が迷うのが「性器をどう呼ぶか」という問題です。

「おちんちん」「おまた」といった親しみやすい呼び名が広く使われる一方で、「ペニス」「外陰部」などの正しい名称をあえて使う家庭も増えてきています。

どの呼び方を選ぶかは、子どもの年齢や、家庭や親の考え方次第。けれども、呼び方ひとつで子どものからだへの理解や安心感に違いが生まれるかもしれません。

プライベートゾーンという言葉の広がり

「プライベートゾーン」という言葉は、水着や下着で隠れる部分(胸、性器、お尻)と口など、他人に見せたり触らせたりしてはいけない自分だけの大切な場所として、近年日本でも浸透し、幼いうちから伝える必要性が広がってきました。

これは、文部科学省が推進する「生命の安全教育」でも幼児期から伝える重要性が記載されています。

では、プライベートゾーンのひとつでもある性器そのものを呼ぶときにはどうしているのでしょうか?
医学的には「外陰部(ヴァルヴァ)」「膣(ヴァギナ)」「陰茎(ペニス)」が正しい名称です。

しかし、小学校未就学児や低学年の子どもに伝えるときには、わかりやすさや親しみやすさを重視して「おちんちん」「おまた」といった言葉を選ぶ家庭も少なくありません。

人によっては「あそこ」といった直接伝えない表現を使ってきたという声もあります。 

体の大切な一部であるからこそ、適切な言葉を使いたい。だけど、子どもが理解しやすいか親しみを持てるかどうかも大切なこと。どう伝えたらいいのか、多くの親が悩むポイントではないでしょうか。

日本でよく使われている呼び方

日本では幼い子どもに対して、次のような呼び方がよく使われています。

女の子:おまた、ちっち、おしっこのところ
男の子:おちんちん、ちんちん、おしっこのところ

正しい名称である「外陰部」「膣」「陰茎」などは、小学校の教材や医療現場で出会うまで耳にする機会が少ないのが現状です。

世界での呼び方事情

それでは海外はどうなのでしょうか?ペニスやヴァギナなど正しい名称で子供の頃から伝えているのか?

実は、日本同様に俗称や家庭独自の呼び方が併用されています。

英語圏

  • 正式名称:penis(ペニス)/vulva(ヴァルヴァ)/vagina(ヴァギナ)
  • 俗称・子ども語の例
    • 男の子:wee-wee(ウィーウィー)、pee-pee(ピーピー)、willy(ウィリー)、wiener(ウィナー)など
    • 女の子:wee-wee(女児にも用いられることがある)、front bottom(フロント・ボトム/主にイギリスでの幼児表現の一例)
      ※「My Body Belongs to Me」(スコットランド公教育資料)では、こうした家庭語彙を紹介しつつ、正しい語(penis, vulva)を教える重要性を示しています。

フランス語圏

  • 正式名称:pénis(ペニス)/vulve(ヴルヴ)/vagin(ヴァジン)
  • 俗称・子ども語の例
    • 男の子:zizi(ズィズィ)
    • 女の子:zézette(ゼゼット)、minou(ミヌー/子猫の意味)

スペイン語圏

  • 正式名称:pene(ペネ)/vulva(ブルバ)/vagina(バヒナ)
  • 俗称・子ども語の例
    • 男の子:pajarito(パハリート/小鳥の意味を借りた婉曲表現)
    • 女の子:chichi(チチ)、conchita(コンチータ/「小さな貝」)、cosita(コシータ/「小さなもの」)

これらの呼び方は家庭で使われることがある一例ですが、家庭や地域、文化によって意味や使われ方が大きく異なります。

教育現場や医療機関では、年齢に応じて正確な用語(penis, vulva, vaginaなど)を教える流れが主流です。

正しい名称を使うほうがいいの?その理由は?

近年は「子どもの年齢に応じて正しい名称を使うことが性教育の第一歩」と考える流れもありますが、正しい言葉を使うとどのような効果があるとされているのでしょうか?

身体へのポジティブな自己理解

自分の体の一部を正しい言葉で説明できることは、体を「恥ずかしいもの」「隠すもの」と捉えにくくし、ポジティブな身体意識を育みます。

正しい名称を知っている子どもほど、自分のからだのパーツを「大切な自分の一部」として理解しやすい可能性がある、という調査報告もあります。

安全性の向上、被害を伝えやすくなる

正しい名称を知っていることは、万が一の性的被害を正確に伝える手段になるだけでなく、普段の医療の場でも役立ちます。

たとえば「おまたがかゆい」と言うよりも「外陰部がかゆい」と伝えられれば、医師や看護師は症状を正しく理解し、適切な診断やケアにつなげやすくなります。

子どもが自分のからだについて、正しい言葉を使えることは、性的被害の早期発見だけでなく、日常の検診や診察といった医療の安全性を高めることにもつながります。

また、UNESCO 等が発行する International Technical Guidance on Sexuality Educationでも、正しい名称を使うこと/身体を尊重する言語を使うこと」は、性教育が単なる知識伝達ではなく、ジェンダー平等・人権尊重と結びついているとされています。

みなさんはどう伝えていますか?

子どもの年齢にあわせてわかりやすく伝えたいけど、俗称に正解はありません。どう伝えたらきちんと伝わるのか、いつから呼び名を変えたらいいのか?

意外と教わる機会ってないですよね。

だからこそ、実際にどんなふうに伝えているのか、伝える際にどんな工夫をしているのか、悩んで点も含めてみなさんの声を寄せていただきたいです。

ぜひ、以下のアンケートフォームから教えてください。やさしい性教育のカタチを一緒に探るきっかけになれたら嬉しいです。

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