「離婚を考え始めたら、どう準備を進めたらいい?」
「別居したほうがいいタイミングは?」
離婚を現実的に考えたら、どう準備を進めたらいいか迷う人もいるでしょう。離婚専門弁護士である弁護士の水谷 真実(まこと)さんに、離婚準備の進め方についてお聞きしました。
お話を聞いた方
まこと法律事務所
水谷 真実(東京弁護士会所属)
離婚・男女トラブル問題の解決に注力しています。東京の新宿駅の近くの新大久保で、弁護士事務所開業。弁護士9年目の若手です。慶應大学法学部卒。仙台市出身。趣味は、旅行(バックパッカー)、登山、ブログです。
離婚を切り出す前にしておきたい4つの準備
以下のように、離婚したい理由やおかれている環境によって、離婚のための準備は異なります。
- 不貞が原因の場合は証拠をおさえる
- 離婚後の生活設計を考える
- 財産分与の対象となる財産を確認
- 身の危険を感じている場合は、配偶者暴力相談支援センターに相談
1. 相手側の不貞が原因の場合は、証拠をおさえる
相手側の不貞が原因で離婚をしたいと考えている場合、SNSやメールの履歴を写真に撮るなどして、不貞の証拠をおさえておきましょう。慰謝料を請求する際に必要となります。証拠がおさえられない場合、探偵を雇う人もいます。
2. 離婚後の生活設計を考える
離婚した後の生活設計について考えてみましょう。子どもがいる場合は、養育する側が養育費を受け取る権利があります。
養育費の金額は、裁判所が定める「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて算定されます。子どもの人数や年齢、義務者(養育費を支払う側)と権利者(養育費を受け取る側)の年収等で決まります。
例えば、親権が母親にあり、0~14歳の子どもが1人いる場合は以下の通りです。
夫の年収(給与所得者) | 妻の年収(給与所得者) | 養育費 |
年収500万円 | 年収200万円 | 月4~6万円 |
年収500万円 | 年収300万円 | 月約4万円 |
実際の養育費は、家庭ごとの状況によって異なるため、必ずしもこの金額が絶対ではありませんが、参考までに確認しておくといいでしょう。
また、ひとり親になると、国の制度である児童扶養手当や自治体の児童育成手当などを受け取ることができます。手当は自治体によって異なり、所得によって支給金額などが違うため、詳細は市区町村など自治体に確認してみましょう。
もし、収入が少なくて離婚後の生活に不安がある場合は、親族に相談しておくことも重要です。
3. 財産分与の対象となる財産を確認
離婚が成立すると、婚姻期間中に築いた共有財産の分与を行います。別居日までに築いた以下のような財産が対象です。
- 預貯金
- 株式
- 保険の解約返戻金
- マイホーム
- 自家用車、など
共有財産は、離婚を切り出した後に隠される可能性もあるため、離婚を切り出す前に可能な限り確認しておきましょう。
4. 身の危険を感じている場合は、配偶者暴力相談支援センターに相談
DVやパワハラ、モラハラなどが原因で離婚を考えている場合は、配偶者暴力相談支援センターに相談してみましょう。証拠となるので、医師に状況を話して診断書を書いてもらうことも必要です。
急を要する場合は、配偶者に隠して引っ越しをするなど身の安全を確保したほうがいい場合もあります。その際は自分の勤務先に、「夫から問い合わせが来ても住所を教えないでほしい」などの根回しをしておくといいでしょう。
別居する場合は「婚姻費用分担請求」が可能
離婚を申し出て同意が得られない場合、まずは別居したいと考える人も多いでしょう。妻の収入が低い場合は「婚姻費用分担請求」が可能です。婚姻費用分担請求は別居から離婚が成立するまで、請求できます。
養育費・婚姻費用算定表に基づいて、月に数万円ほどが生活費として支払われます。金額は双方の年収と子どもの人数・年齢によって異なります。子どもがいない場合でも、条件に該当すれば請求は可能です。
例えば、0~14歳の子どもが1人いる場合は以下の通りです。
夫の年収(給与所得者) | 妻の年収(給与所得者) | 婚姻費用分担請求 |
年収500万円 | 年収200万円 | 月約8万円 |
年収500万円 | 年収300万円 | 月約6~8万円 |
どう離婚するか?離婚の3つの方法
離婚は身分に関わる行為なので、双方が同意しない限り、離婚できません。離婚が成立する際は、以下いずれかの段階を踏むことになります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
1. 協議離婚
協議離婚とは、話し合いによって離婚の条件を決めて離婚することを指します。夫婦のみで話す場合もあれば、交渉を弁護士に依頼するケースもあります。
2. 調停離婚
調停離婚とは、家庭裁判所に申し立てをして離婚調停をした上で離婚することです。当事者だけで話し合いが進まない場合、モラハラやパワハラなどで直接交渉したくない場合は、調停離婚をする人が多いです。
家庭裁判所の2人の調停委員が担当につき、1カ月に1回ほどのペースで裁判所に行きます。自分と相手の言い分を交互に調停委員が聞きます。それぞれ約30分ずつの聞き取りが2回ずつ行われ、2時間ほどかかります。
離婚調停では、離婚に関わる以下の条件を調整します。
- 親権はどちらがもつか
- 面会交流の頻度
- 養育費の決定
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割、など
親権は妻が子どもと同居しているなら、ほぼ妻が親権をもつことが多いです。双方が離婚に同意して条件が決まれば、調停は終わります。1、2回で調停が終わる人もいれば、長引いて1年かかる人もいます。
3. 裁判離婚
調停離婚で折り合いがつかず、どちらかが裁判を起こすと裁判離婚になります。裁判離婚の場合は、裁判官が法的に判断をくだすため、弁護士への依頼が必要です。
離婚で悩んだら、弁護士の無料相談を受けるという選択肢も
この記事で紹介した離婚準備は1人でも進められますが、弁護士に相談してアドバイスを受けることもできます。裁判離婚だけでなく、協議離婚や調停離婚でも弁護士に依頼する人もいます。
配偶者と冷静に話し合いを進めることが難しいと感じた場合は、弁護士に相談してみるのもひとつの方法です。
どんな弁護士に頼んだらいいかわからない場合は、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所である「法テラス」に相談するといいでしょう。法テラスでは3回まで無料相談が可能で、弁護士費用の分割払いも可能です。無料相談した上で、親身に寄り添ってくれる弁護士を探してみましょう。
法テラスを利用しない場合は、個別に弁護士に依頼することになります。事務所によって弁護士費用は異なりますが、多くの弁護士は弁護士会の従来の報酬基準を参考にしているため、大きな費用の差はないことがほとんどです。
弁護士費用の内訳は、着手金や報酬金、実費(郵便代、印紙代、交通費など)などです。参考までに、私の場合は、事務所の離婚に関わる弁護士費用は以下のとおりです。固定ではなく、相談者のお話を聞いて状況を踏まえて、金額を決定しています。
協議離婚 | 調停前の話し合いの段階です。 <着手金>11万円(税込)~ <報酬金>16万5000円(税込)~ |
調停離婚 | <着手金>27万5000円(税込)~ <報酬金>27万5000円(税込)~ ※親権の争いが絡む場合は、少し増額傾向です |
裁判離婚 | <着手金>状況により異なります <報酬金>27万5000円(税込)~ |
離婚における段階やサポート内容によって費用が違いますので、弁護士に正式に依頼する前に見積もりを取るなどして、費用を確認しておくといいでしょう。
ランドリーボックスでは、特集「#わたしたちの離婚」をはじめました。
「おめでとう」という言葉をもらって結婚した日。
「お疲れさま」という言葉を自分に投げかけて離婚した日。
どちらも私の人生の選択で、どちらも私の人生の通過点でしかない。
私が私らしく生きるため、貴方も貴方らしく生きるため、それぞれが決めた選択を労いたい。
ランドリーボックスでは、新たな一歩を踏み出したそれぞれの「離婚」をテーマに、個々人の生き方について考える特集「#わたしたちの離婚」を開始します。