忙しい日々の中で、できれば湯船につかって疲れを落としたいけれど「面倒だな…」と感じることはないだろうか?
実際に、シャワーでサッと済ませているという人は多い。
本当は、夏場でも冷房で冷えたからだをしっかり温めたいのに、仕事や家事、育児に追われなかなかゆっくり入浴できない。また生理中はなんとなく湯船につかりたくないという人もいるかもしれない。
そんな中「湯をまとう」という発想で企画・開発されたのがU字型シャワーヘッド「SHIN-ON」(しんおん)。
SHIN-ONは、U字型のヘッド部分の前後左右からお湯が出て、360度身体がお湯に包まれる。これによって、まるで湯船に浸かったかのように芯まで温まることができるという。通常のシャワーのみ使用した時よりも、上半身全体が温まり、浴びた後も温かさが持続する。
価格は29,800円(税込32,780円)で、公式オンラインストアから購入できる。
工事なしで、賃貸でも設置可能
通常のシャワーとSHIN-ONを切り替える水流切替器が同梱されているので、通常のシャワーとの併用が可能(同時に水を出すことはできない)。説明書を見ながら1人でも設置ができる。くわしい設置方法は公式オンラインストアで動画を公開中だ。
高さ調節が可能な、マグネットタイプのSHIN-ON専用シャワーホルダーが同梱されていて、マグネットがつくタイプの壁であれば、好みの位置に設置できる。
クラウドファンディングで大きな反響
2022年3月にクラウドファンディングを実施し、2023年4月から正式販売を開始した。
「3カ月で達成を目指していたんですけど、1カ月ほどで目標を達成しました。反響は大きかったです」と話すのは、LIXILの新規事業推進部の稲田ゆか理さん。
発案から約2年で発売に至ったというSHIN-ONの、開発の裏側を聞いた。
「アイデアコンペをきっかけに、もともとはリング型のシャワーとして発案された企画です。自分たちでフラフープに穴を開けて試作してみると、水が真ん中に集まって『これは面白いね』と。ただ、リングだと入ったり出たりするのが大変だったので、前方を開けようとか、吐水方法はどうする?とか工夫しながらこの形になりました」
単身でわざわざお湯を張って入浴しない人を想定して開発した本商品だが、販売してみると意外なユーザー層が見えてきたと話す。
「ご高齢の方でもシャワー浴で済ませているという人は意外と多いことがわかりました。ご夫婦ふたり住まいで、お湯を張るには高熱費もかかるし、浴槽を洗う負担もあるためシャワーで済ませたいという声。そして価格帯も3万円台であれば購入しやすいとのお声がありました」
「お湯を使いすぎるのではと気にされる方は多いのですが、節水シャワーを使ったシャワー浴とほとんど変わらないぐらいの湯量で、たっぷり浴びれる感覚があります。空気を含んだ大粒のシャワーになっているので、ミスト効果もあり、上半身が効率よく温まるんです」
「湯船につかりたくない生理中」や「ゆっくりつかれない育児中」にも体を芯から温める
女性特有の健康課題解決へ向けたテクノロジーやサービスの展示会「Femtech Japan 2023/Femcare Japan 2023」に出展してみると、また違う良い反応があったという。
「生理中で湯船につかりたくないときや、湯船につかれない出産後の方も、しっかり体を温めて癒されたいといった声です。また、なかなかゆっくり入浴できない育児中の方など、いろいろなニーズがわかってきました」
Femtech Japanで「産婦人科や産後ケアセンターにおいていただきたい」という声があり、2024年7月から期間限定で産婦人科での体験導入も始まった。
そのほかランニングステーション、グランピング施設、ホテル、ホットヨガスタジオなどにも順次導入を開始している。
「LIXILでは開発に通常3〜5年ほどかかるのですが、新規事業推進部では独自のスピード感で素早く商品を出していくというミッションがあります」
「私たちは、SHIN-ONを“第三の入浴”と考えていて、これをきっかけに新しいお風呂の入り方が広がっていくといいなと考えています。今はターゲットを狭めずに、いろんな方に使っていただき、ご意見をいただきながらブラッシュアップしていけたらと思っています」(稲田さん)