「性的同意」について語るときの多くが女性が不快な思いをするケースであり、男性の視点、とくに「性に淡白でセックスをしたくない男性」の気持ちを想定したケースは見過ごされがちです。

しかし、性欲には個人差があり、女性から求められるけど応えることが難しい男性もいます。そんなカップルの場合は、どうすればいいのでしょうか?

性的同意の具体例を考える「HOW TO 性的同意」。今回はケース④:性に淡白な男性が、彼女から毎週求められる場合を潮英子先生に聞きました。

お話を聞いた方

公認心理師

潮英子

大学卒業後、商社勤務や台湾での日本語教師、航空会社勤務を経て、お茶の水女子大学大学院人間で夫婦問題を研究。自らの国際結婚・離婚、転職経験を活かし、セクシュアリティ、夫婦関係、女性のキャリア等の相談活動を行っている。過去20年間に携わった相談は2万件以上。著書「女性カウンセラーが教える50代からのhow to SEX」(光文社)等。

*4つのケースを順次公開しています

ケース①:付き合いたてカップルのお泊まりデート
ケース②:産後の夫婦間のセックス
ケース③:彼女が「やめて〜」と言っている場合
ケース④:性に淡白な男性が、彼女から毎週求められる

ケース①:付き合いたてカップルのお泊まりデートを考えた際には、性的同意の問題点として下記の3つを挙げていました。

①男性が同意に気を遣っている対象は、職場、友人、第三者に限られる
②女性は「男性の同意をとる」意識が低い
③建前と本音は違う、とどこかで思っている

くわしくは、下記の記事で解説しています。

彼氏とお泊まりデートでセックスの雰囲気に。したくないときはどうやって伝えれば?【HOW TO性的同意Vol.1】

これらを踏まえて、本記事ではケース④を考えていきます。

「性行為は男性から誘うべき」という価値観はプレッシャー

ケース④:性に淡白な男性が、彼女から毎週求められる

彼女は毎週のように求めてくるけど、自分は性に淡白なタイプです。仕事も忙しく、男性機能的にも難しい日もあるので彼女の要求に応えることを考えるとプレッシャーも感じています。求めてくる彼女に対して、セックスしたくないことを伝えるには?

実は性的同意が語られるときに、このケースのように「したくない男性」の視点が抜け落ちていることが多いと感じています。

性欲は個人差があり、毎日したい人もいれば、特にしなくてもいいという人までさまざまです。しかし「男性は女性より性欲が強いもの」「性行為は男性から誘うべき」というジェンダー観を持っている女性が若年層でも多いことに驚きます。

こういったケースでほとんどの男性が言うのが、元々自分は淡泊でそんなに頻度がなくてもいいこと、そして以前EDになったことがあり、またそうなったら相手に申し訳ないと思うとますます億劫になっている、ということです。

ただ、EDに関しては心理的に言いづらくデリケートな問題なので隠したい方も多いようです。

男性にも同意しない権利があるとはいっても、実際に男性から断るのは女性以上に難しい面があります。女性に恥をかかせて傷つけるのでは、と心配する男性もいるからです。

相手を傷つけないコミュニケーションの3つのポイント

そこで、できるだけ女性を傷つけないためには、①今日できない理由、②代替案、③愛情表現をしっかりしておく、ということが大切です。

「最近仕事が忙しくて疲れているんだ。明日は早く起きなきゃいけないから今日は早く寝ておきたいかな」「したい気持ちはあるんだけど疲れすぎちゃっててごめんね」「週末はちゃんと休めるから、土曜にたっぷりできたらいいな」

「君とセックスするのは大好きなんだよ。いつも触れ合っていたいから、ハグしたまま寝てもいい?」

このように伝えれば、女性も不安な気持ちになりづらいでしょう。

しかし一時的ではなく、長いスパンで考えてもあまり頻度を多くすることができそうにない場合は、機会を見てそのことを話しておくことも必要です。

「自分はあまり欲求が強いほうではないから頻繁にはできないかもしれない。でも回数が少なくても密度が濃い行為になれば素敵だと思っている」

「君が求めているときに応じられないこともあるかもしれないけど、傷つかないでほしい」

「僕がしたいときに君が断ってももちろん構わないから、お互い遠慮せず提案し合えたらいいなと思っている」

「なにより君とのスキンシップが好きだから、セックスがないときでも傍にいられた幸せだと思う」

こういった内容と伝え方であれば、女性も「愛されていない」と自分を不要に卑下することもなく、穏やかな気持ちでいられるでしょう。

女性も、男性に拒否されるのは惨めという思い込みをなくし、性行為においても男女対等であると考えたら楽になれると思います。

「わたしのカラダは誰のもの?」

私のカラダは私のものに違いないのに、自分を大切する気持ちが、パートナーや誰が決めたかもわからない社会の声にかき消されてしまうことがあります。

ランドリーボックスでは、「〜らしさ」といった、世の中の当たり前に囚われずに、自分の人生とカラダの自己決定ができる社会を目指し、本特集をお届けします。

自らのカラダとココロをしっかりと自分の手で抱きしめられるように。
そして、私たちと、私たちを取り巻く愛すべき人たちが健やかに過ごせるように。

本特集に際して、「性的同意」にまつわる実態を把握するためのアンケートを実施しています。

みなさんのご意見や体験談をお寄せいただけますと幸いです。アンケートへの回答はコチラから。

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