収入が少ないために生理用品が買えない「生理の貧困(period poverty)」に取り組む国・地域が増えてきている。日本では生理用品が軽減税率適用の対象外となっている一方で、隣の韓国では「生理の貧困」への取り組みが既に始まっている。

「中敷き生理ナプキン」事件がもたらした衝撃と社会の変化

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近年、韓国国内での生理に対する関心が高まっている。韓国の生理用ナプキン広告の歴史上初めて「あの日」や「魔法」という慣例的表現を使わず、「生理」とストレートに表現した広告が2018年に放映されると、その話題は日本にまで波及しTwitterでも話題となった

2019年には青色ではなく、経血のような赤い液体をナプキンに吸収させる広告を生理用品の国内シェア1位の柳韓キンバリー(ユーハン・キンバリー)が放映した。

関心の火種となったのは2016年、低所得層の女子学生たちが生理用品を買えず、靴の中敷きをナプキン代わりに使用しているという、衝撃的なニュースだ。前述の柳韓キンバリーが生理用品の値上げを発表した際に、SNS上で「中敷き生理ナプキン」をはじめとした生理の貧困に関するツイートが拡散されたことから話題となった。BBCによると人権の観点からも話題となり、生理をタブー視する社会的認識に対する指摘も出始めたという。

行政機関が青少年の生理用品購入費サポート事業を開始

この「中敷き生理ナプキン」事件を受け、国家行政機関である女性家族部は2016年「保健衛生物品」サポート事業を開始した。対象は基礎生活保障受給者(極貧層)、法廷次上位階層(低所得階層)、ひとり親家族支援対象者のうち、満11~18歳の女性青少年。1人当たり年間13万2千ウォン(約1万2千円)を生理用品購入費として支援している。

資格基準を満たした人は、生理用品の購入が可能なバウチャーポイントが支援される。住民センターや事務所へ訪問し申請することもできるが、オンラインでも申請が可能だ。国民幸福カードを発行し、加盟店の店舗やオンラインショップで販売している生理用品(ナプキン、タンポン、月経カップ、布ナプキン)がバウチャー利用によって購入できる。また、バウチャーは1度申請すれば、18歳まで継続して支援を受けられるシステムになっている。

女性家族部の公式YouTubeでは、女優のキム・アジュンを起用し、韓国国内の生理の貧困、バウチャーの申請方法、バウチャーを利用した生理用品の購入方法を説明した映像が公開されている。キム・アジュンは2006年の韓国映画『カンナさん大成功です!』で有名な韓国のトップ女優だ。

京畿道はすべての女性青少年に生理用品の費用支援を開始

韓国で最も人口の多い広域自治体の京畿道(キョンギド)は、2021年から満11~18歳の女性青少年を対象として、1人当たり年13万2千ウォン(約1万2千円)ずつ生理用品の購入費を支援すると2020年9月に発表した。広域団体ですべての女性青少年に生理用品を支援するのは韓国で初めてのことで、京畿道在住の女性青少年51万人のうち、政府の生理用品購入費支援対象者2万4千人を除外した48万6千人が対象となる。

京畿道知事の李在明(イ・ジェミョン)氏はこれに関して自身のSNSで「中敷き生理ナプキン」事件に言及しながら「今は多くの基礎地方政府が低所得の女性青少年の生理用品を支援しているが、対象となった貧困層の青少年が支援対象だという烙印を押されて傷つくことも多いと聞き、この事業を推進することとなった(意訳)」と明らかにした。

女性青少年の生理用品購入費用を支援するための条例をつくる自治団体は増えている。2019年にソウル市医会、2020年6月には光州市医会がそれぞれ「女性青少年生理用品支援条例」を制定し、事業を推進中だ。基礎自治体の驪州市は2019年4月「女性青少年衛生用品支援条例」を制定し、2020年1月から韓国国内の自治体で唯一すべての女性青少年を対象に事業を拡げている。

名称の変更、対象範囲の拡大を訴える声も

Photo by Sava Bobov on Unsplash

生理の貧困に対する取り組みが進む一方で、不満の声も大きくなっている。女性家族部の「保健衛生物品」サポート事業というあいまいな名称が、生理に対する否定的認識を誘発するとして「名称を変更すべきだ」とする声もあれば、「10歳以下で初潮を経験する人のために対象年齢を1歳以上下げるべきだ」との声も上がっている。

2019年には正義党のヨ・ヨングク議員が国会の女性家族委員会で、女性家族部の生理用品支援事業の対象を拡大すべきだと主張した。低所得層に限定することで前述のイ・ジェミョン京畿道知事の懸念のように、「支援対象」の烙印を恐れて申請率が低くなる可能性があるという指摘だ。

これまでにランドリーボックスでは「生理の貧困」に取り組む海外の事例を紹介してきた。日本の隣国である韓国でも「生理の貧困」への取り組みが、政府主導の市町村単位で始まっている。日本が「生理の貧困」に公的に取り組むのはいつになるだろうか。

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