健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力のことを指す「ヘルスリテラシー」。
個人差の大きいヘルスリテラシーだが、それを高めることは、実際の健康状態や、仕事にどのような影響があるのか。
転職サービス「doda」などを提供するパーソルキャリア株式会社は、女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査を実施し、はたらく女性をヘルスリテラシーの度合いごとに4グループに分類し、最も高いグループと最も低いグループにおいて、「仕事への満足」や「自己決定感」などに影響があるかを明らかにした。
ヘルスリテラシーの高い女性グループの6割が「仕事に満足」
仕事に満足しているかの質問で、ヘルスリテラシー度によって満足している割合に大きく差が出ることが分かった。具体的に、ヘルスリテラシーが最も低いグループの「仕事に満足している」割合が37.5%に対し、ヘルスリテラシーが最も高いグループの割合が62.2%だった。
ヘルスリテラシーが高いほど「自己決定感を持つことができている
ヘルスリテラシーが最も高い女性グループの「仕事における自己決定感を持つことができている」割合は39.1%、最も低いグループの同割合は19.3%であった。
2018年神戸大学の調査によると、所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げることが分かっている。今回の調査においてもヘルスリテラシーが高いグループほど、仕事における自己決定感を持つことができている。
これは、ヘルスリテラシーを身につけることで、女性特有の不調に適切に対処できるなど、知識を元に行動・選択を行った結果、納得感のある選択ができ、仕事の満足度が高まっている可能性があると推察される。
所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査 (神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html
へルスリテラシーが高いほど「“はたらく”喜び・楽しみを感じている」
また、「“はたらく”喜び・楽しみを感じている」と回答した女性はヘルスリテラシーが最も高いグループで48.0%、最も低いグループで24.4%であった。
仕事満足度や自己決定感、”はたらく”喜び・楽しみを高めようと意識することが、ヘルスリテラシーの高まりに繋がると考えられる。
女性特有の症状があっても、「仕事満足度」は高められる
パーソルキャリア株式会社による女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査 vol.1 <https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/corporate/2022/20220310_01/ >において、女性特有の症状※1が理由で「働き方を変えたり、諦めたりしたことがある」女性が54.1%いることがわかった。
今回の調査結果では、女性特有の症状があっても、ヘルスリテラシーを身につけることで仕事に対する満足度や”はたらく”喜び・楽しみが高められる可能性があることが分かった。
※1 PMS(月経前症候群)、貧血、便秘や下痢などの胃腸障害、頭痛・片頭痛、冷えやのぼせなどの血流障害、メンタルヘルス、やせ・肥満・むくみ・ダイエットや栄養障害、不妊・妊活、妊娠・出産に関する症状・疾病、月経関連の症状や疾病、女性のがん・女性に多いがん、子宮内膜症や女性の良性腫瘍、甲状腺疾患や膠原病などの自己免疫疾患、骨盤底の症状・疾病、更年期症状と思われる不調、閉経後の女性ホルモン低下による症状・疾病 のうちいずれか
働く女性自身だけでなく、社会、企業、組織による双方の力が自分らしく働ける女性を増やす
医学博士/日本産科婦人科学会専門医/日本医師会認定産業医/イーク表参道 副院長の高尾 美穂氏は次のように指摘する。
「今回の明快な結果から、働く女性のヘルスリテラシーを高める、もしくは高く維持することで、仕事への満足度も高く、生活への満足度も高く、ひいては人生への満足度も高く過ごすことができる可能性を感じています」
「個としての働く女性がヘルスリテラシーを高く維持するため前向きに取り組むこと、女性を取り巻く社会、企業、組織が女性を支える仕組みを構築し、柔軟に対応できる環境を準備すること、双方の努力があってはじめて、『自分らしく働きながら、満足度の高い人生をすごす』ことができる女性を増やすことにつながると考えております」
今回の調査では、女性が前向きにはたらく上でヘルスリテラシーが大きく影響していることが分かった。女性自身がヘルスリテラシーを向上させるだけではなく、同時に組織のヘルスリテラシーレベルを上げることの必要性も高まっている。
■調査概要
調査期間:2022年1月6日
調査対象:20~59歳
会社役員、正社員、契約社員、公務員・団体職員いずれかの雇用形態で働く現職中の女性 3,200名
調査方法:インターネットによるアンケート回答方式 *2020年労働力調査結果に基づき、ウェイトバック集計を実施