写真=本人提供/Laundry Box

女性の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテック市場は、ここ1〜2年で急速に拡大しつつある。「2021ユーキャン新語・流行語大賞」には「フェムテック」がノミネートされたほど。ぜひ一過性のトレンドとして消費されるのではなく、このムードが定着してほしい。

しかし、生物学的に女性に生まれた人間ならほとんどの人が経験する生理に比べて、妊娠・出産にまつわるフェムテックプロダクトやサービスはまだ少なく、使用レビューも目にする機会は少ない。そこで私は妊娠を機に、体験できるものはできるだけ試すことにした。

いいものが見つかりシェアできれば、未来の妊婦さんたちの負担を少しでも軽くできるかも知れない。

妊娠中に身体を支えるフェムテックプロダクト

その1 【骨盤ふんどし】

出産に向けて妊婦の骨盤は徐々に広がってくる。分娩時に赤ちゃんが産道を通りやすいよう、リラキシンというホルモンが分泌されるらしい。

しかし産むまでの数カ月、このゆるんだ骨盤は歩きづらさなど、何かと生活に支障をきたす。

それをサポートしてくれるのが骨盤ベルトなのだが、日本でシェア率の高い商品は広い幅のベルトにマジックテープが付いているだけのもの。

確かに歩行時は安定して楽なのだが座るたびに上にズレてくるし、素材が硬いので皮膚にめり込んで痛い。トイレ時は毎回外さなければならないのも、お腹が大きくなってくると非常に煩わしい。そんな時にフェムテック企業で働く友人が「アメリカで流通している骨盤ベルトを試してみて」と連絡をくれた。正しくは「Vスリング」というもので、ベルトよりも「骨盤ふんどし」と表現するほうがイメージに近い。

写真=本人提供

着用してみると、日本で購入した骨盤ベルトよりも幅が狭く素材が柔らかいため、座っても身体に食い込まない。2本のストラップがぶら下がっていて、それを下(Iライン)から通してヒップで留める。

つまりベルトを巻くというよりも穿く感覚に近い。

そのためずり上がってこないのだ。さらにストレッチ性のある素材なので、トイレ時もショーツと一緒に着脱できる。

妊娠中の歩きづらさや腰痛は個人差があるので、そもそもベルトを必要としない人もいると思う。しかし着用を考えている人には個人的にはこの「骨盤ふんどし」をおすすめしたい。最近日本でも取り扱いになったそうだ。

その2 【おなか専用枕】

妊娠中に欠かせないアイテムといえば抱き枕。

私も妊婦になるまで知らなかったが、お腹が大きくなってくるとおなか用の枕が手放せなくなる。うつ伏せはもちろんのこと、仰向けすら内臓が圧迫されてきついので妊婦は横向きでばかり寝る。おなか専用枕を抱くと一点に集中していた重心が分散されるので幾分か楽になるのだ。しかし大きくなり過ぎたお腹までを乗せることはできない。そんな時に試したのが骨盤ふんどしと同じアメリカのフェムテック企業「BELLY BANDIT」のお腹を乗せる専用枕だった。

写真=本人提供

妊娠中、私はとにかく眠かったので睡眠時間が増えた。昼寝も多い。ちょっと横になりたいとき、お腹の下にこの枕を敷くとかなり楽だった。座布団やクッションでも代用は利くかもしれないけれど、これは傾斜が付いているので肋骨付近を圧迫せずにお腹を支えてくれるのがよかった。

横から見ると滑り台のような形になっている。/写真=本人提供

その3 【妊娠線ケアパック】

興味本位で購入してみた、エスメラルダ「ボディケアパック」は、お腹に貼りつけて妊娠線を予防するというシートパックだ。

写真=本人提供

確かに自分を労っている気分にはなれるし、プレゼントで貰ったら嬉しいかもしれない。

ただ私の場合は結論から言うとシートを貼り付けた面とは別の骨盤周辺に妊娠線ができた。このパックだけではなく妊娠線予防のためのオイルも朝・晩毎日塗っていたものの、やはり腹部を中心にケアしていたからだと思う。

しかし臨月を待たずして紫色の線がくっきり浮き出てきた時に思ったのは、自分でも意外なことに「だから、なんだって言うんだ?」だった。

妊娠線はエモい

考えてみれば妊娠した瞬間から私の周りは「ストレッチマーク(妊娠線)に気をつけて」というメッセージで溢れていた。プレママ雑誌やサイトにもほぼ必ず書かれていたし、美容皮膚科の医師からも言われた。私もそれを特に疑問にも思わず、オイルやクリームをせっせと塗って予防していた。

だけど、妊娠線の何がそんなにいけないのだろうか。これだってつらい妊娠期間を乗り越えた自分がいたという証ではないか。汚くもないし、恥じることでもない。なんならエモい。

写真=本人提供

もちろん、「何としてでも妊娠線をつけたくない」と思うのも個人の自由。一度ついたら完全に消えることはないと言われているものだからこそ、本気で防ぎたい人だっていると思う。その気持ちを否定する気は毛頭ない。

ただ私が気になるのは、今のところ日本では「妊娠線を予防しよう」というムード一色のところだ。本当はその考えと同じだけ「ついたっていいよね」という価値観があってもいいはずなのに。

少なくとも私の妊娠中にはほとんど出会わなかった。だから代わりに言おうと思う。

もし妊娠線ができたら?これからの妊婦さんに伝えたいこと

つわりで気持ち悪い毎日を過ごして何も食べられなかったり、もしくは常に何か食べていないといられない人もいると思います。やっとその期間が落ち着いても医学的に「安定期」という時期は存在しないし、変わらず気が抜けないでしょう。お腹はどんどん大きくなって内臓を圧迫され、毎日胸やけしていませんか。

そんな頃に、もしかしたらお腹やお尻や二の腕などどこかに赤や紫色の線が浮き出るかもしれません。

でもそれはあなたの「失敗」では絶対にありません。皮膚が限界を越えるほど大きなお腹を支えてきたからこその、自然な変化です。健康上の問題があるわけでもないそうなので安心してください。

出産したらしたで今度は、「体型や体重を妊娠前に戻そう!」という情報が溢れてくるかもしれません。でもその発信源の多くはそれで商売をしている人たちなので、聞き流しても大丈夫です。

大切なのはあなたとお子さんが健やかでいられること。

プレッシャーで心が疲弊してしまわないこと。

妊娠線も黒ずんだ皮膚も伸びきったお腹の皮も、「美しい」と言うのはなんだか気恥ずかしいけど、でも、ちょっと格好よくないですか。

私は自分の産後の身体を見ると「地図みたいだな」と思います。ここで命を作ったのだ、と辿れる痕跡があるのはなかなか悪くないです。だからどうか、妊娠前の自分に戻れなくても悲観しないでいられますように。

産後の身体との付き合い方も人それぞれ

欧米もかつてはハリウッドスターや人気モデルが産後すぐにダイエットに励み、たった数カ月で元通り、なんてことがステータスになっていた。

「子どもを産んだとは思えない!」というのも褒め言葉として捉えられている時代が、つい最近まであった。

しかし近年では産後の身体の付き合い方にも多様性が生まれつつある

補正下着をつける姿をあえて公開したり、スリムな体型に戻せたとしてもそれは遺伝的な個人差が大きいことを理解し、あえてダイエット方法について触れない選択をする著名人も多い。

私も微力ながらこれから先も「妊娠線、ついても別に構わない」は言い続けたいと思う。

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