妊娠線とは、妊娠した時に皮膚に現れる赤いひび割れのような線のことです。ストレッチマークとよばれたりもします。妊娠線は、早いものだと妊娠14週前後から出現し妊娠後期(妊娠28週ごろ)から増え始めます。
妊娠線ができやすいところや原因
妊娠線ができやすいのは、以下のような脂肪のつきやすいところです。
- お腹
- 二の腕
- 胸
- 太もも
- おしり
妊娠線ができる原因は完全に解明されていません。妊娠によるホルモンの増加と妊娠による急激な体型変化に、皮膚の下にある真皮や皮下組織の伸縮性がついていけず、裂けてしまって妊娠線ができるといわれています。
妊娠線ができる前のサインとして、皮膚が伸びて薄くなっている部分に痒みを感じることがあります。妊娠線はできたばかりのときはピンクや赤紫などの色をしていますが、時間と共に白色になり、目立たなくなります。しかし、一度できた妊娠線がなくなることはないとされています。すべての人に妊娠線ができるわけではなく、体質や皮膚のタイプなどによる個人差が大きいです。
妊娠線と正中線の違い
妊娠線と間違えやすいものに「正中線」があります。 正中線とは、身体の中央にある線のことで、すべての人に生まれつきあるものです。正中線は妊娠するとホルモンバランスの変化により色素が濃くなって目立ってきます。
正中線は妊娠線と違って一時的なものなので、出産後にうすくなり、徐々に目立たなくなります。
妊娠線を予防する方法
妊娠線は若い方(30歳未満)、色白の方にできやすく、飲酒習慣や妊娠中の体重増加が大きいことも発症リスクだといわれています。
妊娠線を予防する方法は医学的に証明されていませんが、推奨されている予防法は以下の通りです。
- 保湿ケア
妊娠線ができやすい箇所に、保湿力の高いクリームやオイルなどをこまめに塗るようにしましょう。お腹が大きくなり始める前からしっかり保湿してあげてください。とくに乾燥肌の人は早めにケアを始めておくといいでしょう。
成分としてはツボクサ(セリ科植物CentellaでTrofolastinを多く含む)、ヒアルロン酸などが研究されており、エビデンスは弱いながら効果が報告されています (参考文献参照)。
保湿クリームやオイルを塗りながら軽くマッサージを行うことも効果的ですが、強くこすると皮膚が荒れて逆効果なので注意してください。
妊娠線の予防クリームやオイルは、さまざまな商品があります。テクスチャーや香りなどを試してみて、自分の好きなものを選ぶようにしましょう。毎日のように使うものなのでお気に入りのものを探してみてください。
- 急激に体重が増えないように気をつける
急に体重が増加すると、急に皮膚が引っ張られることになり、妊娠線ができる可能性が高まります。妊娠中の体重増加のめやすは、2021年3月に以下のように新しくなりましたので参考にしてください。
妊娠線が消えないとき
できてしまった妊娠線の治療としては、産後にトレチノイン(ビタミン A 誘導体)クリームやレーザー治療をする方法があります。ビタミンAは妊娠中に取りすぎないほうがよいので、トレチノインを含むクリームは、妊娠中は使用しないようにしてください。
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妊娠線を防ぐ方法として推奨されているのは、保湿をする、急激に体重が増えないように気をつけるなどです。妊娠中は体調の変化も激しいので、しっかりと身体をケアしてあげましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。
参考文献
https://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2027.42/110856/bjd13426.pdf