1984年6月10日、都内の産院で私は生まれた。

その日の夜、産後間もない女性たちが休む4人部屋で、私の母の元にだけ看護師さんが来てこう言ったらしい。「今日この病院で生まれた赤ちゃんの中で、女の子は竹中さんのおうちだけです。妊娠、出産は母親のケースによく似ることが多いです。いつかもし娘さんが子どもを産む選択をした際には、今日までの経験をよく覚えておいて、ぜひお母さんから教えてあげてください」 

女性が女性の身体と向き合うことになるのはせいぜい初潮を迎えた頃だろう、とそれまでは思っていた。でもこの話を聞いてからは、実はこの世に生を授かった瞬間から自分たちには女性特有の健康課題がついてまわるのだなぁ、とハッとした。

調べれば私たちが保有する将来卵子になる原始卵胞の数がいちばん多いのはなんと胎内にいるとき。初潮を迎える頃にはすでにその1/3ほどに減っているという。

これくらい知っていてもよかったはずだけど、ちっとも知らなかったよ。それだけ私は自分たちの身体についてぼんやりと学び、生理の痛みも騙し騙し我慢することばかり、選んできた気がする。

写真=本人提供/産まれて数年。こんなに小さくてもすでに胎児の頃より原始卵胞の数が減っているとは…。

ダンサー・アイドル・アーティストの、生理によるストレスを少しでも軽減したい

10代の頃から生理痛が重くて、満員電車で貧血になり、しゃがみ込むことも何度かあった。5才から続けてきたバレエやダンスも、初潮を迎えてから生理期間は当たり前に動きが制限された。

そんなの耐えるほかないんだろ?と思い込み、学生時代を過ごしてきた。でも20代半ばで社会に出てからはそうもいかなくなってくる。

望んで始めた仕事はよりにもよって振付師。身体、使いまくり。さらに女性ダンサーやアーティスト、アイドルと密に接するようになって、私のほかにも自分の身体との向き合い方について思い悩む子はたくさんいるんだなぁということを知った。

私自身もだけれど、教え子たちになんとかストレスを軽減させてパフォーマンスしてもらいたい。そしてそれはもちろん、ステージに立たずともすべての女性たちや、性自認が女性ではなくとも月経のあるすべての人たちへ願うことでもある。

写真=本人提供/踊りを始めた頃。20年後振付師になります。

フェムテック商品=高級品というイメージ

「フェムテック」という言葉はここ数年、日本でもだいぶ浸透してきた印象がある一方で、私の周りでは未だにピルですら「なんだか使い方が分からなくて怖い」「服用することをお母さんに心配された」というような相談も多い。

「Femtech」は女性(Female)の抱える健康課題を技術(Technology)の力で解決する。この連載はフィジカルのみならず心までが躍る(かもしれない)ツールを私自身が試しまくってみる、日々の記録だ。

フェムテック商品というと、まだまだ「高級品」というイメージも強いかもしれない。実際、私の主な教え子世代である10〜20代からしてみればいくら便利といわれても1枚5,000円する吸水ショーツや、使いこなせるかも分からない月経カップに4,000円近く出すのはなかなか勇気がいることなのではないかな。

これらの商品は使い捨てじゃなく繰り返し何度も使用できるから、結果的にはかなりコスパがいいし、ついでにゴミも出ないため環境にも優しいのだけれど…。特に若いうちってそういう問題でもなかったりする。頭金がないんだよな。わかる。

あなたのせいじゃない。ホルモン、あいつだよ

そんな人たちにもおすすめしたい、無料ですぐに使えるものがある。生理管理アプリだ。日頃から自分の身体に自然とアンテナを張っていれば「なんだ、そんなのとっくに使ってるよ」と拍子抜けされそうだけど、意外と使っていない人は多い。

「生理管理アプリって妊活のために排卵日を把握したい人向けじゃないの?」という認識もまだまだ強い。

だけど例えばPMS(月経前症候群)に悩まされる人にとって、自分がいま黄体期で生理前のさまざまな不調が起こる時期、と把握しているのといないのとでは心持ちが大きく変わってくる。

職場や家族、パートナーにイライラしてつい当たってしまう、その後は自己嫌悪に陥る……。そのループにハマってしまう人ってたくさんいると思うんだけど、それ、あなたのせいじゃないよ。ホルモン、あいつだよ。生理管理アプリはそれを可視化して教えてくれる。

闇雲に無差別に襲ってきた痛みを、把握できるようになった 

私の場合、精神的な変化はほとんどないのだけれど、その代わり毎回信じられないほどの頭痛に襲われる。たとえるならこめかみを竹串でぶっ刺されて貫通させたような痛みだ。これが月の1/3近くを占めている。

ということは年の1/3、初潮が来てから閉経するまでの約40年間の1/3を支配していることになる。まじで勘弁してほしい。だけど、この痛みがいつ頃やってくるのかを把握しているだけでだいぶ違うことが分かってきた。

私が使っているのは日本のフェムテックサービスとしては先駆けの『ルナルナ』なのだけど、カレンダーに生理が来たらチェックを入れるだけで、自分の次の排卵日や生理開始日がおおよそわかる。さらにその日の体調やメモも記せるので頭痛がひどかった日は書き残すようにした。

するとだんだん①生理開始1〜2日前、②生理期間の後半〜終わってからの数日間、③排卵日前日〜当日、に「こめかみ串刺し」が来ることを掴んできた。生理直前以外の日であれば、頭痛薬でしのげるレベルの痛みだということも。

管理する前に、闇雲で無差別に痛みが襲ってくると思い込んでいた頃にくらべれば、前々から「この時期は大丈夫」「この辺りは頭痛がひどそうだから無理はしないでおこう」と予定が組みやすくなった。

画像=Laundry Box

さらに、妊活を考えている人は関連アプリの『ルナルナ体温ノート』と指定の電子女性体温計を連携させれば数日分のデータを手軽に記録することができる。妊活の予定がない人でもコロナ禍のいま、毎朝体温を記録しておくのはおすすめだ。

写真=本人提供/ルナルナと連携できるTDK基礎体温計。Amazonで3,000円弱で購入。

そして実際に妊娠をすると、妊娠中〜育児をサポートしてくれる『ルナルナベビー』まで用意されている。これから迎える更年期に備えても、自分の生理周期や体調は記録しておきたい。

身体の不調も、たとえば不妊治療をしたいと思ったときにだってアプリのデータを病院に持っていけば話が早い。つまり生理管理アプリは長い人生のうち40年近く寄り添い続けてくれる、私たちの相棒なのだと思う。

【ほかにも色々あるよ、生理管理アプリ】

《まるでティーン誌を読んでる感覚・ソフィガール》

画像=Laundry Box
  • 10代の学生向けに特化している
  • オリジナルの4コマ漫画で生理の基礎知識を学べる
  • 生理用品選びのアドバイスをしてくれる
  • パスコードロック機能がある
  • デザインを自由に着せ替えられてカラバリも豊富♡
  • 広告がない

※大人向けアプリ「ソフィ」ではデータを記録していくと24の体質タイプから自分のタイプを診断。体調に合わせてべストコンディションに導くコラムを配信してくれる

《ドイツ生まれの生理アプリ・Clue》

画像=Laundry Box
  • 「なぜ出血するのか」「平均的な健康である状態とは」「卵胞期とは身体で何が起こっているのか」などを生物学的な観点で解説してくれる
  • 生理周期のパターンを分析し、生理痛や頭痛などの症状を予測してくれる
  • 日本製のアプリとは一線を画すデザイン性
  • 広告がない

《妊活カップルのコミュニケーションツールに・コウノトリ》

画像=Laundry Box
  • パートナーとのシェア機能は珍しくなくなった中で、特にコミュニケーションをスムーズにしてくれる 
  • 排卵日や妊娠しやすい日をカップル間で共有できる
  • 「帰るよ」「待ってるよ」のワンタップメッセージ機能があるので大事な日を取りこぼしにくい

次回は、教え子からも最も質問が多い「ピル」とそれに関するフェムテックサービスや商品について。世代によっては今も「身体を不自然にコントロールするもの」というイメージの強いピル。だけど服用してから私の生活はまちがいなく救われたよ、というお話をしたいと思う。

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