フェムテックという言葉が広がり、さまざまなメディアでアイテムを見る機会も増えた昨今。

ただ、その中で一筋縄では行かない分野があるとしたら、セクシャルウェルネスやセックステックの分野ではないだろうか。

プレジャートイをはじめとして、女性が自分の性を謳歌するためのグッズやサービスが誕生しはじめているが、ビジネスとしては「アダルトカテゴリ」というラベルによる社会的信用が担保されにくいなど、未だ課題が多い。

広告業界で長年活躍し、2009年に日常的なセックス動画を公開するサイト「MakeLoveNotPorn」を創業したシンディ・ギャロップ。

「アダルトは難しい」と資金調達や公の審査について失敗と挑戦を続けている彼女に話を聞いた。

シンディギャロップ氏は投資家らから20Mドルの資金調達をしている(2022年現在)

投資家が会いにくるまで発信し続ける以外になかった

ーーー 以前、私はプレジャートイなどを作ろうと起業を試みて、うまく行かなかったことがありました。このカテゴリの難しさを感じることはありますか?

ちょっとそれについて言いたいことがあります。

非常に苛立たしいのは、私たちの領域に投資したい人は確実にいるはずなのに、他のIT創業者ができるような方法で、投資家に関する調査やターゲットを絞ることができないということです。 

例えば、他の領域のスタートアップであれば、創業者は「ああ、この投資家が私のセクターに投資したいと公に述べている」と、調べて彼らにアプローチすることができます。

あるいは公的に閲覧可能な投資のポートフォリオを持っていることもある。

しかし、残念ながら「自分のところにセックステックを持ってきて」と自ら公言したり、手を差し伸べる投資家はいません。

そして、セックスの領域は、誰が何を目的として運営しているかが外からは分かりにくい領域でもあります。

だからこそ、私は常に自分がやっていることを外に発信し、誰かがその情報を基にして、自分の場所に会いに来てくれるのを待たざるを得ないのです。

つながりを作り続けて、自分で彼らを引き寄せるということです。この領域においては残念ながら逆はまだありません。

ですから、あきらめないでください。いいですか? 自分がやっていることを外に出せば出すほど、多くの投資家や支援者を惹きつけることができます。

私がこのことを理解したのは、ニューヨーク在住の日本人ジャーナリストの方に取材をしてもらったときのことです。

彼女は私が運営しているMakeLovenNotPornの大ファンで、私は彼女に「このインタビューに、私が日本の投資家を探していることを書き留めてください」と伝えました。

すると、数週間後、記事を見た日本のハイテク企業の男性からメールを受け取りました。 

「インタビューを読み、あなたとのパートナーシップを提案したいと思います。 私たちはMakeLovenNotPorn Japanの立ち上げに資金を提供し、その見返りとして50/50の割合で収入を折半することを提案します」と。

興奮して、彼と話をしたら、彼と彼のパートナーは、ハイテク企業の株を一部保有していて資本力もあった。当時その男性は86歳。

「彼女は非常に興味深いアイデアを持っていますが、日本人はまだ理解していません。 私は資金を供給して、それを実現させたいのです」

彼らは英語が話せるし、デジタルメディア会社だったため、私たちを助けてくれるインフラを持っていました。

私たちは東京にも行き、うまく進んでいるようにみえましたが、残念なことに、彼らが非常に大きな会社に買収されてしまったのです。

その状況下では、大企業が企業の適正評価を行う上で、“アダルト企業”に投資することは難しく、この話はこれ以上進展しませんでした。

ですが、私があなたたちにこの話を伝えているのは、そのような支援者が絶対に存在するからです。そして、いつか、私たちは彼らにたどり着くでしょう。だからあきらめないでください。

難しいということが諦める理由にはならない

ーーー サービス運営においてもこの領域ならではの苦難があったのでしょうか?

ビジネスを立ち上げ、作り上げるのは非常に困難でした。毎日、MakeLovenNotPornを創るために大規模な戦いに挑まなければなりませんでした。

基本的にあらゆるビジネスインフラ、他のテクノロジースタートアップ企業が当然できることができなかった。あらゆるインフラには常に「アダルトコンテンツ禁止」と記載されています。

銀行での口座開設や融資もそうです。アメリカで、MakeLovenNotPornのためのビジネス用口座を開設できる銀行を見つけるのに4年もかかりました。

とりわけ、我々の運営上の最大の課題は支払い処理です。

Paypalは成人向けコンテンツでは使えませんし、主要クレジットカード処理も行われません。

私はそうした企業のトップに会っては、彼らのサービスを使うことを許してもらえるよう説明しなければならなかった。

サービスを使わせてくれることもあれば、そうならないこともしばしば。非常に大きな労力を要しました。

結果的に、我々はビデオストリーミング、ビデオ共有プラットフォームを全て独自技術で、自分たちで構築せざるを得なかった。既存のストリーミングサービスはアダルトコンテンツは配信できませんからね。

しかし、そこまでして非常に困難なビデオビジネスを創ることを決めた理由があります。 

まず第一に、性教育として、ポルノが世界的に及ぼす影響力と対抗したかったからです。そのために、ポルノと同じ媒体であるオンラインビデオを選びました。

第二に、ビデオがコミュニケーション上、最も重要なメディアだと私が信じているということです。

インターネット初期はテキストベースのコミュニケーションから始まり、FlickrやInstagramなど、コミュニケーション手段が写真になりました。そして、その次はビデオがコミュニケーションの主軸になると当時から確信していたからです。

第三に、セックスについてのテキストや講演はあれど、人が実際にセックスをしているのを見ることほど教育的なものはないと思っているからです。

ーーー 最後に、今でも日本で同様に働きかけをしているのですか?

私は非常に長い間、日本の投資家を探し求めています。 私は何年もの間、日本でビジネスを続けてきました。

1996年から98年にかけて、私は広告代理店のバートル・ボーグル・ヘガーティ(BBH)で働き96年にはシンガポールに渡り、アジア太平洋オフィスの立ち上げを手助けしました。

有名ブランドの日本法人の代理店にも指名されていたので、2、3週間毎に東京まで通勤していました。

会社勤めから離れた後も、日本の広告代理店のコンサルタントとして数年間働きました。

だからこそ、日本がどれほどMakeLovenNotPornを必要としているかは分かっていたのです。いつか、MakeLovenNotPornJapanを作り、成功させることを望んでいます。

我々はグローバルなプラットフォームであり、グローバルな課題を持っています。

現在、ポルノは世界的にセックスを均質化していますが、我々は各国がその国特有の性的アイデンティティを取り戻すのを支援したいと考えています。

ーーー

シンディ・ギャロップ氏へのインタビューは全3回です。第1回、第2回もあわせて読んでみてください。

第1回

セックスに正解なんてない。MakeLoveNotPorn代表シンディ・ギャロップが語るソーシャルセックス

第2回

「一人で死んでいくのが楽しみ」社会が望む結婚と自分の違いに気づいたら人生を謳歌していた ー NYの女王シンディ・ギャロップ

Special thanks! Mari Hirata

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