2019年、妊娠を希望しながらも卵巣の境界悪性腫瘍と診断され、子宮と卵巣の全摘出を勧められました。その後、猶予をもらって不妊治療に挑み、妊娠・出産。

しばらくは経過観察をしていましたが、卵巣腫瘍を摘出してから約3年後に再び腫瘍らしきものが見つかり、2022年1月に31歳で子宮と卵巣を全摘出しました。

境界悪性腫瘍と診断されたときのこと、不妊治療から出産に至るまでのことは第1回、第2回をご覧ください。

第1回:28歳OL、子宮全摘出をすすめられる。子どもが欲しくて婦人科に行ったのに

第2回:「子宮・卵巣全摘出」と言われるも、猶予をもらって挑んだ不妊治療

第3回となる今回は、再び腫瘍が発覚し全摘出を決断するまで、そして実際に子宮と卵巣を摘出して2カ月経った今についてお届けします。

再び全摘出を勧められる。漠然とした不安と葛藤

初めて境界悪性腫瘍と診断されたときには、既に腫瘍を手術で摘出した後で、再発もなく経過観察をするだけの状況でした。

妊娠中も出産後も、月に1回の診察と、半年に1回のMRI検査やCT検査を欠かさず受けていました。異常が見つかることなく、診察時には主治医との雑談だけで終わることもありました。

変化があったのは2021年10月、子どもが1歳になってしばらく経った頃。いつものように超音波エコー検査をしたとき、医師に「右の卵巣に小さい何かがある」と言われました。その後、検査の予定がどんどん入り、PET-CT、MRI検査などを受け「再発の疑いアリ」との結果に。

悪性ではなかったものの、良性か境界悪性かは腫瘍を摘出してみないとわからないとのこと。しかし医師からは「3年で再発するのは境界悪性の可能性が高く、子宮と卵巣の全摘出が望ましい」と言われました。

3年前に同じことを言われたときは、大きな衝撃を受けましたが、今回は「とうとうかぁ」と思ったのが正直なところ。また、現状では悪性の可能性は高くないものの摘出後の検査で悪性と診断される可能性もあると伝えられました。

この時点でも全摘出は強制ではなく、怪しい所見は右の卵巣だけだったので右側のみ摘出という方法もありました。しかし、前回手術をしたときは左の卵巣に腫瘍があったので、左を残すと再び腫瘍が出てくる可能性があります。

左右ともに摘出するか、左だけ残すか

小さい子どもを抱えながら何度も手術をするのは大変ですし、再発の不安もつきまといます。「子どもを1人授かれたのだから…」と全摘出をスパッと決断できればいいのですが、なかなかそうもいきません。

不妊治療中に既に、自分の体が妊娠しにくい体質であることがわかっていたので、2人目を望んではいません。しかし、子宮と卵巣を失うことには漠然とした不安がありました。

「生理がなくなるし良いかなぁ」とも思いますが、卵巣を取ると女性ホルモンが分泌されなくなります。それに伴い、感情の浮き沈みが激しくなる、のぼせ、ほてりなどの、更年期障害のような症状が出ると聞いていたので、それも怖い……。

通常の更年期障害であればホルモン補充療法で改善が見込めますが、境界悪性腫瘍は女性ホルモンがリスクを高めるため、ホルモン補充療法はできないと医師から言われていました。

また私の場合、前回も境界悪性だったので、今後本当に悪性になるのか?という疑問もありました。悪性ならすぐにでも全摘出しますが、悪性にならない人もいるという「境界悪性」という言葉に少しでも望みを掛けたくなるのです。

しかし、仮に左だけそのまま残しておいて悪性になったときに後悔するのは自分。

今振り返ると、再発のペースを考えても悪性になる可能性はありそうだから、早く全摘出に踏み切ればいいのに、と思います。でも、当時はなかなか決断できませんでした。

結局、医師から「どっちみち今見えてる腫瘍と右の卵巣は摘出するので、手術日は決めます。子宮と左の卵巣をどうするかは手術2日前まで悩めるのでそれまでに決めてください」と言われ、手術日が先に決まりました。

考えが変わった医師の言葉

入院は約2週間。子どもは1歳4カ月でした。入院中に子どもの面倒が見れないことを心配しましたが、2歳、3歳と色んなことがわかるようになってからの方が大変そう。今の方がまだ良いのかもしれないと思えて、少し前向きになれました。

子宮と卵巣についても、手術が決まってさまざまな診療科で説明を受けているうちに、やはり全摘出するべきだと考えが変わりました。

手術にあたって、主治医とは別の医師と話す機会があったのですが、その際に「卵巣を残しておくと、将来的にほかの部位に転移する可能性がある」ことを伝えられました。

具体的には、腹膜や大腸など。万が一、大腸に転移した場合には人工肛門になる可能性もあります。もちろん、その他の部位でも何かしらの影響が出てくるため「他の部位に転移してさらに色んなリスクを心配するなら、卵巣と子宮を取ったときのリスクだけに留めておきたい」と思うようになりました。

更年期障害のような症状は未知の世界なので怖いですが、症状やその重さは人それぞれ。自分がどうなるかは、いざ取ってみないとわかりません。

考え方を変えてみれば、のぼせたりほてったり、感情の浮き沈みが激しくなったりするだけ。同世代よりも早く更年期障害を経験することは受け入れ難かったのですが、それよりも大腸など日常生活に影響する部位に転移したときの方が、もっとしんどそうだと判断しました。

家族や知り合いに相談する中で、「命が1番大事だよ」と言われたのも大きかったです。子どものことも考えて悪性腫瘍になる可能性は減らしておきたいと思い、手術2日前を待たずに子宮と卵巣の全摘出をお願いすることにしました。

そこからはもう悩むことなく、入院の準備に取りかかりました。職場に数週間休むことを告げ、私が不在の間、子どもの世話をどうするか夫と相談し、万全の状態で手術に挑みます。

夫は普段から主体的に子育てに関わっているので、「子どもの夕飯の献立だけ考えてほしい」とは言われましたが、子どもに関する準備はそれくらいで大丈夫でした。

負担の大きさを実感した開腹手術

入院・手術をしたのは2022年1月で、新型コロナウイルスのオミクロン株が流行る直前。手術2日前から入院し、全身麻酔・開腹手術に備えて準備をしました。胃を空っぽにするために、下剤入りの水を2L飲むのがかなりしんどかったです。

手術も全身麻酔も3回目。経験があると同じことをするのにも恐怖心が生まれてきました。腹腔鏡手術をしたときは麻酔が切れた瞬間から傷口が痛かったので、開腹手術だとさらに痛いかも…と不安になりました。

また、手術前説明で「お腹を開けてみないとわからないこともある。手術中に腫瘍の性質を検査(迅速病理検査)して、悪性だったらリンパ節なども切除します」と言われていたので、悪性だった場合は入院期間は2週間から3週間に伸びます。

いろいろと不安でしたが、手術は無事に完了。

摘出した腫瘍は迅速病理の結果、境界悪性だったためリンパ節などの切除はせずに済みました。術後麻酔が切れて意識が戻ったときは傷口がやはり痛く、その日は痛み止めの副作用で意識がほぼありませんでした。

翌日から少しずつ歩き始めましたが、点滴がつながれているので歩きづらく、傷口にも響きます。また、術後1日半は飲食禁止のため水も飲めず、開腹手術はやはり負担が大きいと痛感しました。できるなら、もう二度としたくないですね。

術後の経過は順調で、傷口の痛みもどんどん引いていき、2日後には点滴が取れて飲食を再開。3日後にはだいぶ普通に歩けるようになり、予定より早く手術の8日後に退院できました。コロナ禍で誰にも面会できず、院内の売店に行くことさえ許されていなかったので、早く退院できて良かったです。

術後に感じた体の変化

更年期障害の症状は、退院直後は特になかったものの術後1カ月が経ってからほてりを少し感じるようになりました。

そこから2カ月が経過した現在は、暖房の効いた部屋でちょっと暑さを感じるとそのままほてった状態が続いて汗をかくことがあります。服装で体温調節をすれば治まる程度なので困るほどではなく、それ以外の症状も出ていません。

むしろ生理がなくなり、それに付随していたPMSによる気持ちの浮き沈み、むくみなどが消えて快適に過ごせています。

女性ホルモンが分泌されなくなることで骨粗鬆症の可能性も出てくるようで、医師からは対策として「日光を浴びて適度に運動してください」と言われました。そんなものでいいのかと思いつつも、言われたことは素直にやって、不安材料を少しでも減らそうと思っています。

また、術後1カ月が経って退院後初めての診察もありました。そこで医師から、「迅速病理ではなく時間を掛けて行う病理検査でも、腫瘍は境界悪性だった」「腫瘍は左右の卵巣にあったので全摘出で正解だった」「転移はなかったので、現状病変は完全に切除できている」と告げられました。

当初、右の卵巣だけを摘出するかどうか悩みましたが、すべて取って正解だったようです。MRI検査では左の卵巣の腫瘍しか写らなかったので、「開腹してみないとわからないことがある」という言葉の意味を身をもって実感しました。

かなり悩みながら決断しましたが、自分の選択が間違っていなかったことがわかって本当に良かったです。

更年期障害の症状はこれからどうなるかわかりませんが、このまま不自由が少ないまま過ごしていければと思います。

全3回にわたり、手術、不妊治療、妊娠、出産、そして子宮・卵巣の全摘出と、この3年の間に起きたことを書きました。婦人科検診の大切さをあらためてお伝えするとともに、私の経験が、誰かの参考になったら嬉しく思います。

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