(Photo by Gregory Pappas on Unsplash)

「生理前や生理中は眠い、眠気を感じる」という人は多いですが、一体なぜなのでしょうか?

眠りが浅かったり寝つきが悪くなる人もいますが、深部体温と呼ばれる「体の内部の体温」のリズムが原因と言われています。

生理の周期による女性ホルモンの分泌の変化が体温のリズムに変化を与え、睡眠にも影響を及ぼします。飲んでいる薬(低用量ピルを含む)の副作用が眠気を引き起こしている可能性もあります。

今回は生理前にやたらと眠い、眠りが浅くなる等の症状の原因とメカニズム、対処法や控えるべきことをお伝えしていきます。

生理前に眠くなる症状は体温の変化が原因

女性ホルモンは月経周期にともない大きく変動します。

眠気だけでなく不眠、イライラや集中力の低下、頭痛やむくみなどの「月経前症候群(PMS)」も女性ホルモンの変動が原因です。

正常な生理周期の範囲は「25日~38日」で1サイクルが基本です。

生理(月経期)が終わるとエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が徐々に多くなり(卵胞期)、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)(合わせてゴナドトロピンと呼びます)が一過性に放出され、成熟した卵子1個が卵巣から出ます(排卵)。

エストロゲンとは「女性らしい体」を作るホルモンで、生理周期に関わってくる他にも髪や肌にうるおいを与え骨を丈夫にするなどの働きがあります。

黄体形成ホルモン(LH)が放出されて前後2日間は妊娠する可能性が高い時期と言われています。

出典:厚生労働省

その後「黄体期」と呼ばれるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が多くなる時期を迎えます。プロゲステロンは体温を上昇させる働きがありますので、基礎体温が上がり深部体温(体の中心の温度)の振れ幅が小さくなります。

出典:厚生労働省

深部体温のリズムと眠気のリズムは密接な関係にあり、睡眠・覚醒に大きく影響します。

生理前に眠かったり、生理中に逆に眠りが浅かったりするのはこのような体温変化によるものです。

ピルや薬の副作用が原因のケースも

低用量ピル(OC)の副作用 でも眠気を感じることがあります。

アレルギー用の薬や一部のかぜ薬、解熱剤や酔い止め、腹痛の痛み止めや下痢止めなども眠気を感じる薬があります ので、服用している方は薬が原因の可能性があります。

眠気を感じる薬を服用しているときは、車の運転は避けましょう。あまりに日中の眠気が強く、つらいときには主治医に相談してみましょう。

仕事・勉強中にも襲ってくるつらい眠気の対処法

生理前には仕事中や勉強中でも眠気が襲ってくるものです。

人間にはサーカディアンリズム(概日リズム)という体内時計があり、約24時間で体温やホルモンの分泌の変化が自動的に起こります。

サーカディアンリズムや体内時計を利用して、眠気をおさえたり睡眠の質を高める方法をご紹介していきます。

1. 朝起きたら日の光を浴びる

日光に当たると体内時計がリセットされ、夜の睡眠の質を高める働きがあります。

朝起きたらカーテンを開け、日の光を浴びるようにしましょう。

スマホが発するブルーライトも強い光を放っており、覚醒させる働きがありますのでスマホのアラーム機能を使うとより効果的です。

2. 寝る前のスマホは厳禁

Photo by Photo AC

先にも書いた通り、スマホはブルーライトという強い光を放っているため寝る前にスマホを見ると、睡眠の質が低下したり、寝つきが悪くなったりします。寝つきが悪くなると体内時計がどんどん後ろにずれ日中に眠気を感じます。

就寝前はなるべくスマホを控えるようにしましょう。

3. 20分以内の昼寝

適切な仮眠は眠気を抑えるという研究結果があります。

20分を過ぎると深い眠りに移行してしまいますので、アラームをセットする等の方法でお昼休みに20分以内の昼寝をしてみましょう。

4. 寝る2時間前に入浴をする

深部体温と眠気は密接な関係がありますが、私たちが深部体温を上げることができる方法が入浴です。

深部体温が上がると体は覚醒し、下がると眠りに向かうとされていますが、入浴により深部体温が上がった後、血行が良くなり体の中の熱が放出され深部体温が下がりスムーズに眠る事ができます。

就寝の約2時間前に入浴したりシャワーを浴びる事で、寝つきがスムーズになり睡眠の質も高くなるという研究結果があります。

寝る約2時間前をの入浴を心がけましょう。

睡眠の質を高める事で日中の眠気がおさえられます。

生理前の眠気を防ぐために控えるべきこと

普段は体への影響が少なくても、生理前や生理中には控えるべきものは多量のアルコールとカフェインです。

生理前に眠いとついコーヒーで眠気覚ましをしたくなったり、寝つきが悪いとお酒を飲みたくなってしまうものですが生理前の体には悪影響となってしまいます。

具体的に見ていきましょう。

1. コーヒーなどカフェインの摂取を控える

コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインの作用は睡眠に悪影響を及ぼす事が分かっています。

寝つきが悪くなったり睡眠時間が短縮、睡眠が浅くなるなどの現象が起こります。

就寝前だけではなく1日の総摂取量で決まりますので、生理前はたくさんのカフェインの摂取は避けた方が無難です。

2. アルコールはほどほどに

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アルコールを摂取すると寝つきが良くなりリラックスするなどの効果が得られますが、適量を超えるとトイレが近くなったり、睡眠の質が低下することが分かっています。

女性は男性に比べてアルコールの分解速度が遅く、女性の方がアルコールの1日許容量は少なめとされています。自分がほろ酔いでいられる量を見極めてほどほどにお酒をたしなみましょう。

生理前に眠くなるのはPMS症状の1つ

生理前の眠さは体温や女性ホルモンが原因ですが、月経前症候群(PMS)の症状でもあります。日中眠くなるのは気持ちが緩んでいたり怠けているわけではなく、女性にとって大事な「生理」を迎える体の症状のひとつ。

生理前から生理中はストレスを溜めずリラックスして過ごすことが大事です。集中できなかったり眠くなったからといって自分を責めず、「今は自分に甘くても良い時期」と自分の心と体を労わってあげましょう。

監修者プロフィール

淀川キリスト教病院 産婦人科専門医

柴田綾子

2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。

https://twitter.com/ayako700

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