【お悩み】
この4月に新卒で入社して約1カ月半ですが、転職することも検討しています。
業界の将来性に魅力を感じて、今の会社に入社しました。面接を通してお客様や社内のコミュニケーションを大切にした仕事ができそうだったこと、人事の方が好印象だったことも、入社の決め手になりました。
しかし実際に入社してみると、配属先ではデータ入力や資料整理などが主な業務内容で、自分にとっては物足りなく感じてしまい、思ったような業務内容とは違いました。
しかも、業務量も多いうえに、先輩や上司にも困りごとを相談しにくい雰囲気のため、なかなか終えることができません。
入社前に思い描いていた仕事内容や環境とギャップを感じているため、早いうちに転職も視野に入れて動いたほうがいいのかな?とも考えてしまいます。
しかし、「仕事が続かないやつ」と社会から思われてしまうのなら、まずは我慢してでも続けたほうがいいのかなとも思います。
どのように自分の仕事人生を考えて、歩き始めれば良いでしょうか。アドバイスをいただきたいです。
今は人生の土台を作る修行期間
こんにちは、露の団姫(つゆのまるこ)です。お便りをいただきありがとうございました。今は入社前のやる気と現実とのギャップに少し心が疲れている時期なのかもしれません。今回も一緒に考えていきましょう。
まず結論から言うと、今は仕事を続けたほうが良いと思います。
なぜなら、あなた自身も心配されているように、新卒で入社した会社を短期間で辞めてしまうと、今後の転職の際に面接で「辞めた理由」を説明しなければならないからです。
また、辞めた理由が自身の都合であっても会社側の都合であっても、プラスに働く可能性は残念ながら低いです。そもそも、書類選考の段階ではじかれてしまう可能性もありますし、その場合は説明すらできません。ですので、「まずは続けてみる」ということが大切でしょう。
そして、履歴書上のことはもちろんですが、私が「続けたほうが良い」と考える最大の理由は、今はあなたの人生の土台を作る「修行期間」だからです。
与えられた役割に全力で取り組んでいれば、必ず成長や学びを得る
ここでご紹介したいのが、天台宗の総本山・比叡山延暦寺で行われている修行です。
比叡山延暦寺には、7年間かけて行われる荒行「千日回峰行」のほかに、「十二年籠山行」という修行があります。
この修行は十二年間、比叡山の中にあるお堂に籠る大変過酷な修行です。最澄上人が「十二年間ひとつのことに一生懸命取り組めば、必ず一験(いちげん)を得る」と言われたことがはじまりだと言われています。
十二年間、というのはあくまでも仏道修行のうえで示された期間ですが、私たちは与えられた役割に全力で取り組んでいれば、必ず成長や学びを得ることができます。
石の上にも三年ともいいますが、今はあまり意味を感じないデータ入力や資料整理も、今後さまざまな場面で、「あ、あのときのデータはこういうことだったのか」「確か、以前社内でこういう課題があったような気がするな」と、あなたが仕事をするうえで必ず役に立ちます。
企業にとっても新人育成は修行期間
ところで、新人を採用し、研修や教育を行う企業側の事情を考えたことはありますか?
実は企業にとっては、新人ひとりひとりが会社にもたらす利益は、それぞれの給料分にすらなっていない場合も多いといいます。つまり会社としては、利益はさておき、社員を育てるために新人の未来に「投資」をしているのです。
正直なところ、企業側は即戦力が欲しければ、中途採用で優秀な人材をヘッドハンティングすれば済むことです。近年ではそのような採用方法を主流とする企業も多い中、今どき新人からしっかりと育て上げる会社は少なく、その観点で見ても良い会社だと思います。
あなたの場合、現在の仕事に物足りなさを感じているのはやる気に満ちている証拠です。
だからこそ、そのやる気を今後の仕事に活かせるよう、今は与えられた仕事に精一杯取り組みましょう。
会社があなたに期待し、投資していることを信じてみてください。会社にとっても新人育成は、焦らず、着実に育て上げる修行期間なのです。
下積みできる環境はありがたいこと
最近、ネットニュースを見ていると、各業界で活躍する若い世代の話題がよく取り上げられています。
そのような記事を見ると、つい才能溢れる新人が彗星のごとく現れたかのように感じてしまいますが、どの業界でも、輝いている人、輝き続けている人は人知れず努力を重ねてきたのです。
下積み時代は人生の大きな糧となりますが、その下積みをしたくても環境やタイミングに恵まれない人もいます。しかし、あなたは現在、会社から雇用されている―つまり、安定した生活の中で下積みをさせてもらえているのです。
これはとてもありがたいことですから、感謝して業務に取り組みましょう。
そしてなにより、今回のお悩みを読ませていただき感じたのは、あなたは会社という単位ではなく、業界という大きな単位に将来性を感じる視点の持ち主なので、もしかしたら「転職」よりも「起業」を目指したほうがうまくいくタイプかもしれないということです。
今の会社でしっかりと修行をして土台を築き、独り立ちするだけのパワーがあると思います。
環境にもやる気にも恵まれたあなたは、とても幸いな人です。きっと将来、大きな花を咲かせることができますよ。